自覚症状がないのに口の中のレントゲン撮影をされた・・。なぜレントゲン撮影が必要かの説明がなければ不安になるものですよね。ここでは皆さんが歯科医院で不安な思いをしないよう、なぜ虫歯の検査にレントゲン撮影が必要なのか?歯医者さんがレントゲンを見るポイントなどをわかりやすく説明していきます。
目次
1.虫歯の検査にレントゲン検査が必要な2つの理由とは
一般的に検査とは、目で見えないものの状態を把握するために用います。エナメル質と象牙質とその疾患である虫歯がレントゲンでは違って見えてくるために虫歯検査にレントゲンが必要になります。
レントゲンを虫歯の検査に用いる目的は虫歯があるかどうかを検査する、と虫歯の大きさとそれによる組織の損傷程度を確認する、という2つの目的があります。
1-1.穴の開いていない小さな虫歯があるかどうかをレントゲンで検査するため
レントゲン検査(バイトウィング法)で穴の開いていない小さな虫歯があることをあると判断できる検査能力(感度といいます)は0.45といわれています。また、虫歯がないのを虫歯でないと判断できる検査能力(特異度といいます)は0.83です。虫歯が疑われる場合には、レントゲン画像からだけでなく視診やレーザー検査などを併用しながら、食生活や周りの歯の状況などと照らし合わせて虫歯があるかどうかを診断する必要があります。一方で治療の必要がない診断にレントゲン検査を用いることは0.83の特異度ですから、視診と併用すればより診断の正確性が高くなります。
1-2.虫歯の大きさとそれによる組織の損傷程度を確認するため
この場合は自覚症状がある場合、ない場合ともに有効です。自覚症状がある場合、多くの場合は中程度から歯髄神経に近づいてきています。また、神経の治療を前にした場合、自覚症状がなく虫歯が進行していることがあります。穴が開けば患者さんも自覚できるのですが、やっかいなのは金属の下などの虫歯です。このようにどちらの場合もその後の治療法を決定するために、レントゲン撮影は必要になります。
~補足 レントゲン検査の安全性について~
昨今のメディアの情報などで、レントゲンの被ばくを心配されている方もいらっしゃることでしょう。
参考例に全国歯科大学・歯学部附属病院診療放射線技師連絡協議会による自然放射線と診断用X線との比較図を引用します。図より歯科用レントゲン1枚につき2日分の自然放射線量の同等の被ばく量と示されています。ただ放射線被ばくの問題は、患者さんにより考え方が大きく異なり、それでも安心できない、と思う方がいるかもしれません。
その場合にはレントゲン検査で虫歯を早期発見したことによるメリットと、もし検査をしないで虫歯を見逃した場合のデメリットを歯科医師と相談しながら、患者さん自身が判断することが大切になってくるでしょう。
2.歯医者が教えるレントゲンを見るときのポイントとは
レントゲン検査は一般的に硬い部分が白または灰色に、穴が開いていたり軟らかい部分が黒く見えてきます。
なぜ虫歯の検査にレントゲン検査がよく用いられるのでしょうか?それは歯の構造が関係しています。
2-1.健康な歯のレントゲン写真の見え方とは?
歯は外側をエナメル質、中間を象牙質、内部を歯髄といった3構造を有しています。エナメル質と象牙質は小学校で習ったように、とても硬い性質を有し、歯髄は軟らかい性質を有しています。エナメル質と象牙質はレントゲンでは灰色に、歯髄は黒く見えます。ちなみに歯よりも硬い金属は白く見えます。
2-2.虫歯のレントゲン写真の見え方とは?
では虫歯は?というと虫歯菌が出す酸で歯を軟らかく溶かすのが虫歯ですから、レントゲンでは黒く見えてきます。小さい虫歯は小さく、大きな虫歯は大きく黒い像として見えてきます(これをレントゲン透過像といいます)。歯科医師は通常灰色の部分が黒くなってくると虫歯と診断できるためにレントゲン検査を用いているのです。
虫歯の進行イラスト
3.レントゲン検査以外の虫歯の主な検査方法
研究室レベルではまだたくさんの虫歯の検査方法がありますが、臨床で用いられている主な検査は4つになります。
3-1.視診
明るい照明とミラーを用いて視診にて虫歯を検査する方法。この方法では前歯の虫歯は診断できるが、奥歯では白くなったり、グレーがかって見えるために、レントゲンや以下に述べる他の検査方法と併用して虫歯を検査する必要がある。
3-2.探針
細い針を用いて、歯や金属との境目の微妙な感触で虫歯かどうかを判断する検査方法。探針による虫歯の検査は、歯質を医原性に破壊してしまうことが懸念されている。また、視診で健全に見えるがレントゲン検査でははっきりわかる歯の内部に存在する虫歯に関しては、正確に診断することはできない。
3-3.マイクロルーペや手術用顕微鏡による拡大視野での視診
虫歯の検査を正確に行うために、マイクロルーペや手術用顕微鏡を用いて拡大視野にて虫歯を検査する方法。
マイクロルーペでは2.5~10倍、手術用顕微鏡では8~24倍の大きさで虫歯を観察できるので、従来の視診で判断できなかった虫歯初期の歯の表面の破壊や欠損を早期に発見できる。またその状態を録画して患者さんに説明することができるので、治療時に患者さんの理解を得やすい利点があります。
3-4.レーザー蛍光法
健全な歯質と虫歯の半導体レーザーによる蛍光強度の差を測定して、虫歯を診断する方法です。数値で継時的に検査できることから、患者さんにもわかりやすく、定期健診ごとに虫歯が進行しているかどうか、治療が必要かどうかを客観的に決定できます。またレーザー光を照射するだけですから痛みはありません。
4.レントゲンとそれ以外の検査の費用
4-1.レントゲン検査の費用
レントゲン検査は多くの場合保険適応です。小さいレントゲン1枚では120~180円、大きいレントゲンでは1200円前後です。注意事項としてはインプラントの撮影などでは保険外になる場合があります。
4-2.レントゲン検査以外の検査費用
視診や探針などの従来からの検査では保険診療が可能で、いわゆる初診料や再診料に含まれます。その場合は初診料は21000~1500円、再診料では500~700円程度になります。一方、マイクロルーペや手術用顕微鏡の検査では、検査単体もしくは処置費用が保険外になる歯科医院が多く、事前に確認しておく必要があります。また、レーザー蛍光法による検査の場合はサービスで検査している歯科医院も多くあるようですが、こちらも事前に問い合わせしておいた方が安心でしょう。
5.まとめ
虫歯検査におけるレントゲン検査の目的がおわかりになっていただけたでしょうか?
レントゲン撮影を見せながら、あなたが虫歯の大きさや現状をきちんと説明してもらえたのなら、レントゲン検査は有効に生かされていると考えていいでしょう。
だからといって不安な状態でレントゲン検査を行うのは患者さん、歯科医院どちらにも有益ではありません。気軽に相談できる歯科医師やスタッフがいる歯科医院に通院することがおすすめです。