みなさん、詰め物が取れて行った歯医者さんで、「はい、歯が黒くなっています。削りましょう」と言われた経験ないでしょうか?「なんでこんなに黒くなるんだろう」「自分が虫歯になりやすい体質なのかな・・」と思ったことがあるあなた、原因を知りたくはありませんか? もしかしたらむし歯の治療材料に金属の詰め物を使ったからかもしれません。この記事では、金属の歯の詰め物の下が黒くなる原因と解決策を解説します。ぜひ読んで参考にしてください。
目次
1.歯の詰め物の下が黒くなる理由は金属を使用するからです。
今まで保険が適応のむし歯治療では、大きいむし歯に対しては金属で詰め物するしかありませんでした。金属の下が黒くなるからといって、むし歯だけで黒くなるとは限りません。どうして歯の詰め物の下が黒くなってしまうかというと、エナメル質と象牙質から構成される歯と、金属の性質が大きく違うため。歯を入れ墨のように染めてしまって黒くなってしまっていることがよくあります。
金属成分がしみ出して歯を黒く染めている状態
2.歯の詰め物の下を黒くさせる歯と金属の性質の違いとは?
詰め物の下を黒くさせてしまう原因である、歯と金属の性質の違いを詳しく解説します。
2-1.金属は電気を通す
金属や水が電気を通すことはご存知だと思いますが、お口の中には唾液や細菌が存在しているため金属のこの性質により様々な問題を起こします。
ガルバニー電流の問題
皆さんは金属で治療した歯で銀紙をかんだとき、いやな感じがしたことはありませんか?
それはガルバニー電流が原因です。パラジウムと金合金が噛み合っている場合、両方とも唾液に接しているので、電位差を生じ、電流が流れています。すると刺すような、銀紙をかんだような痛みが生じます。
歯科修復材に金属を用いる限り、ガルバニー電流をなくすことは不可能です。唯一できることは金属を使わない、ことになります。多くの場合には、ガルバニー電流による不快症状は数日以内になくなりますが、それは電流そのものが流れなくなったのではなく、歯の神経に防御層ができて感応しなくなっただけです。症状が消失しても、お口の中に電流が流れ続けているのは、患者さんにとってはいやなものですよね。
2-2.金属は腐食しやすい
腐食とは、化学的や生物的な作用により、金属の表面に化学変化が起きて強度が低下したり、見た目が悪くなったりすることです。
お口の中の唾液や細菌によって作られたプラークなどによって、金属表面間の酸素濃度が異なると、酸素濃度を均一にしようと酸化還元反応が生じます(酸素濃淡電池)。その結果、腐食が局所的に生じて金属表面が荒れて周りの歯や歯肉に染み出てしまいます。水道管のさびと同じ現象が口の中で起こっているのです。また腐食により金属的な味がすることがあり、それは痛みが消失しても続いてしまう場合があります。
2-3.歯より金属が硬い
歯はエナメル質と象牙質からできています。保険でよく使われている金属は金銀パラジウム合金という合金です。歯より金属の方が硬いので、硬いものをかんでしまったり歯ぎしりした時などに、歯が先にかけてしまいます。そうすると、歯と金属のすきまができて、むし歯になってしまいます。むし歯が金属の下にできて歯がかけるのではなく、歯の薄い部分がかけてしまって金属との間にすきまができてしまったから、むし歯になってしまうのです。また、硬い金属を歯の内部に使うことで歯を破折させるリスクがあります。
2-4.金属は変色しやすい
金属にAgが含まれていると、腐食によって変色しやすくなります。歯肉の中の細胞や白血球の中の含硫たんぱく質によって金属表面が腐食し、変色してしまいます。プラークによって腫れた歯肉に近いところに金属が存在すると、血液の中の成分の硫黄と結びついて金属の色が歯にタトゥーのように染み出てしまうだけでなく、硫化水素やメルカプタンなどが生成され口臭の原因になります。
3.詰め物の金属を黒くさせるお口の中の3つの要因とは
2章では詰め物の下を黒くさせる理由である金属と歯の性質の違いについて解説しました。3章ではお口の中という環境が、じつは金属を腐食させやすい環境であるということを解説します。
3-1 唾液によりぬれた環境になっている
お口の中を保湿している唾液には、むし歯を予防するために大切な酸緩衝機能があります(リンク)。食事をした後、一度酸性に傾いた環境を唾液は中性に戻す緩衝機能があるので、むし歯になりにくくなっています。この時間ごとにpHが変動する環境が、金属を腐食させやすくなります。
3-2 細菌がたくさんいる
お口の中にはたくさんの細菌がいるために金属表に細菌生成物のプラークが付着することで、金属表面が電池になって腐食をすすめてしまいます。
3-3 嚙む力がかかる
人の歯には、食事時に60kgの力がかかるといわれています。また歯ぎしりをする方はそれ以上の力が歯にはかかっています。その力が金属表にかかると、金属の腐食速度を一時的に加速させる場合があります。
4. 詰め物の金属が黒くなると歯や体はどうなるの?
お口の中で歯の詰め物の金属が黒くなったことで、歯や生体に悪影響を及ぼすことがあります。
ここでは、どのような害があるのかを解説していきます。
4-1 金属アレルギーを引き起こす恐れがある
合金成分が溶け出すことで金属アレルギーを引き起こすことがあります。とくにアマルガム修復物は、水銀(Hg)の血中濃度が高くなると報告されています。現在の歯科治療では禁忌になっているアマルガム修復はなるべく早く歯科医院で除去してもらいましょう。見分けるコツは歯に小さな銀の詰め物がしてあれば、それがアマルガム修復です。
4-2二次カリエス(再発むし歯)が起きやすい
詰め物の金属が腐食され黒くなることで、劣化し、表面があれてきます。また、金属は歯より硬いので歯質もかけやすくなります。そうすると歯と金属の境目の幅が広くなってしまいます。金属は歯とセメントでくっついていますが、セメントは物性が弱いので、簡単にはがされて、歯と金属の境目にくぼみができてしまいます。そこにプラークが付着すると二次カリエス(再発むし歯)が発症します。
4-3 歯の根が破折してしまう
差し歯などで、金属を歯の根の補強に使用する場合があります。すると金属が黒くなることで劣化し、歯と金属の適合が悪くなって写真のようにてこ効果が働いて歯の根を破折させることがあります。
5.詰め物の下を黒くさせないための安全策3つ
ここでは、歯が黒くなりにくい歯科治療の方法と材料を解説します。
5-1 歯の詰め物にメタルを使わない。セラミックを使う
対策として一番シンプルな対策法は、金属を使わずに虫歯を治す方法です。代表的な材料にセラミックとプラスチック(コンポジットレジン)があります。セラミックの利点はプラスチックと比較して、きれい、硬い、歯と同じ強度を有することがあげられます。セラミックは以前は物性が弱かったのですが、今はプレス加工や、削りだすこともできるようになったため、以前より物性が強くなってきました。エナメル質と同等か、それ以上の硬さや強度があります。プラスチックは保険が適応されるため安価で治療できますが、物性が弱いために着色したり、破折したりしてしまいます。
5-2 歯の土台に金属を使わない。ファイバー+コンポジットレジンを使う
芯棒にファイバーと言われるしなやかな繊維を用いてコンポジットレジンで土台をつくるのがファイバーコアです。たとえるならば鉄筋コンクリートの鉄筋がファイバーで、コンクリートがコンポジットレジンです。 ファイバーのおかげで、歯に過度な力がかかったとしても歯を割らず、むしろ逆に歯を守るために土台が壊れてくれます。また、金属を使っていないので金属色が被せものに透ける心配がありません。金属イオンにより歯ぐきが黒ずむ心配もありません。最近では強度に不安がありますが保険診療でも使用可能になってきています。皆さん、土台にファイバー+コンポジットレジンを選択しましょう。
詳しくは「美しい前歯を手にに入れるために~最適な差し歯教えます~」
5-3 どうしても金属を使う場合には、異種金属を使用しない
お口の中で2種類以上の異種金属が接触している場合があります。例えば隣同士の歯もしくは咬みあう歯が接触する場合などがありますこれらの場合には異種金属の間で電池ができるので電解腐食をする可能性があります。お口の中では同じ金属を使用したほうがいいでしょう。
いろいろな金属を使用しているために起きる金属の黒ずみ
6.まとめ
いかがでしたでしょうか?歯の詰め物が黒くしないシンプルな方法は、金属を使わないことです。一番きれいに治療できるのは保険適応外のセラミックですが、ここ最近では保険治療で金属を使用しなくても可能なケースが増えてきています。今までの保険治療の流れだと患者さんが強く希望しない場合には金属を用いられることがほとんどでした。
あなたの治療で金属を使わなくてすむかどうか、歯科医院でよく相談してから治療を受けるようにしましょう。