歯医者さんに行って、虫歯治療の詰め物で銀歯になった経験はありませんか?
日本では銀歯がある人は多いと思いますが、アメリカやヨーロッパなどの先進諸国では歯は白いのが当たり前なので、金属を用いて治療することはありませんスリーエムヘルスケア社の調査によると、日本人の銀歯の保有率は20~60代で70%以上、というデータがあります。この記事ではむし歯の治療に金属を使うことによるリスクと、銀歯の治療法を解説します。生まれつき歯が銀歯の人はいません。この記事を読んでお口の中に金属を使わない治療を受けるようにしましょう。
目次
1.虫歯治療に銀歯を使わない方が良い3つの理由とは?
1-1 歯より金属が硬いので、歯を破折させてしまう
歯はエナメル質と象牙質からできています。保険でよく使われている銀歯は金銀パラジウム合金という合金です。歯より金属の方が硬いので、硬いものをかんでしまったり歯ぎしりした時などに、歯が先にかけてしまいます。そうすると、歯と金属のすきまができて、むし歯になってしまいます。むし歯が金属の下にできて歯がかけるのではなく、歯の薄い部分がかけてしまって金属との間にすきまができてしまったから、むし歯になってしまうのです。また、硬い金属を歯の内部に使うことで歯を破折させるリスクがあります。
1-2 銀歯は電気を通すので不快症状が起こる場合がある
皆さんは金属で治療した歯で銀紙をかんだとき、いやな感じがしたことはありませんか?
それはガルバニー電流が原因です。パラジウムと金合金が噛み合っている場合、両方とも唾液に接しているので、電位差を生じ、電流が流れています。すると刺すような、銀紙をかんだような痛みが生じます。歯科修復材に金属を用いる限り、ガルバニー電流をなくすことは不可能です。唯一できることは金属を使わない、ことになります。多くの場合には、ガルバニー電流による不快症状は数日以内になくなりますが、それは電流そのものが流れなくなったのではなく、歯の神経に防御層ができて感応しなくなっただけです。症状が消失しても、お口の中に電流が流れ続けているのは、患者さんにとってはいやなものですよね。
1-3 銀歯は腐食しやすいので金属アレルギーや歯や歯肉に変色を及ぼす場合がある。
腐食とは、化学的や生物的な作用により、金属の表面に化学変化が起きて強度が低下したり、見た目が悪くなったりすることです。歯科で使われている金属は合金のため金や銀のほか銅やパラジウム、亜鉛などさまざまな金属が配合されています。そのため口の中で腐食し溶け出すことで金属アレルギーや歯や歯ぐきを変色させる場合があります。
金属アレルギー
お口の中の唾液や細菌によって作られたプラークなどによって、金属表面間の酸素濃度が異なると、酸素濃度を均一にしようと酸化還元反応が生じます(酸素濃淡電池)。その結果、腐食が局所的に生じて金属表面が荒れて周りの歯や歯肉に染み出てしまいます。水道管のさびと同じ現象が口の中で起こっているのです。また腐食により金属的な味がすることがあり、それは痛みが消失しても続いてしまう場合があります。
歯や歯ぐきの変色
銀歯にアマルガムという金属が含まれていると、腐食によって変色しやすくなります。歯肉の中の細胞や白血球の中の含硫たんぱく質によって金属表面が腐食し、変色してしまいます。プラークによって腫れた歯肉に近いところに金属が存在すると、血液の中の成分の硫黄と結びついて金属の色が歯にタトゥーのように染み出てしまうだけでなく、硫化水素やメルカプタンなどが生成され口臭の原因になります。
詳しくはこちら 差し歯のところの歯ぐきが黒いあなたへ~原因と治療法教えます~
2.銀歯を劣化させるお口の中の3つの原因とは?
ここで解説する原因は金属の腐食を促進させる因子になります。お口の中という環境が、とても金属を腐食させやすい環境であるということを解説します。
2-1 唾液により濡れた環境になっている
不幸にしてお口の中は腐食を引き起こしやすい環境になっています。お口の中を保湿している唾液によって、銀歯は水道管のように常に濡れた状態になっています。さらに唾液には、食事をした後、一度酸性に傾いた環境を唾液は中性に戻す緩衝機能があるので、むし歯になりにくくなっています。この時間ごとにpHが変動する環境が、金属を腐食させやすくなります。
詳しくはこちら 知っていますか?唾液が虫歯予防にパワーを発揮する理由
2-2 細菌がたくさんいる
お口の中にはたくさんの細菌がいるために金属表に細菌生成物のプラークが付着することで、金属表面が電池になって腐食をすすめてしまいます。食物の咀嚼中には食物残渣が強固に金属修復物に付着することで腐食反応が非常に起こりやすい状態を局部的に生じさせます。
2-3 嚙む力がかかる
人の歯には、食事時に60kgの力がかかるといわれています。また歯ぎしりをする方はそれ以上の力が歯にはかかっています。その力が金属表にかかると、金属の変色を一時的に加速させる場合があります。
3. お口の中で銀歯が劣化することで生じる3つの病気とは?
お口の中で歯の詰め物の銀歯が黒くなったことで、歯や生体に悪影響を及ぼすことがあります。
ここでは、銀歯にするとどのような病気になりやすいか解説します。
3-1 金属アレルギーを引き起こす恐れがある
合金成分が溶け出すことで金属アレルギーを引き起こすことがあります。とくにアマルガム修復物は、水銀(Hg)の血中濃度が高くなると報告されています。現在の歯科治療では禁忌になっているアマルガム修復はなるべく早く歯科医院で除去してもらいましょう。見分けるコツは歯に小さな銀の詰め物がしてあれば、それがアマルガム修復です。
3-2 二次カリエス(再発むし歯)が起きやすい
詰め物の金属が腐食され黒くなることで、劣化し、表面があれてきます。また、金属は歯より硬いので歯質もかけやすくなります。そうすると歯と金属の境目の幅が広くなってしまいます。金属は歯とセメントでくっついていますが、セメントは物性が弱いので、簡単にはがされて、歯と金属の境目にくぼみができてしまいます。そこにプラークが付着すると二次カリエス(再発むし歯)が発症します。
3-3 歯の根が破折してしまう
差し歯などで、金属を歯の根の補強に使用する場合があります。すると金属が黒くなることで劣化し、歯と金属の適合が悪くなって写真のようにてこ効果が働いて歯の根を破折させることがあります。
4.むし歯治療に金属を使わないおすすめ代替治療法
対策として一番シンプルな対策法は、金属を使わずに虫歯を治す方法です。
4-1 神経の治療をしていない場合
神経の治療をしていない場合には小さい虫歯にはプラスチック(コンポジットレジン)、大きな虫歯にはセラミック治療がおススメです。セラミックの利点はプラスチックと比較して、きれい、硬い、歯と同じ強度を有することがあげられます。セラミックは以前は物性が弱かったのですが、今はプレス加工や、削りだすこともできるようになったため、以前より物性が強くなってきました。エナメル質と同等か、それ以上の硬さや強度があります。プラスチックは保険が適応されるため安価で治療できますが、物性が弱いために着色したり、破折したりしてしまいます。
詳しくはこちら あなたにあった虫歯の詰め物を選ぶポイントとは?
4-2 神経の治療をしている場合
神経治療後は歯の内部は空洞になっているため、神経治療後に土台を作る必要があります。以前は土台には金属しか使えませんでしたが、現在ではファイバー+コンポジットレジンでできたファイバーコアを使うことが可能です。
ファイバーコアの構造
芯棒にファイバーと言われるしなやかな繊維を用いてコンポジットレジンで土台をつくるのがファイバーコアです。たとえるならば鉄筋コンクリートの鉄筋がファイバーで、コンクリートがコンポジットレジンです。
ファイバーコアの利点
ファイバーコアのおかげで、歯に過度な力がかかったとしても歯を割らず、むしろ逆に歯を守るために土台が壊れてくれます。また、金属を使っていないので金属色が被せものに透ける心配がありません。金属イオンにより歯ぐきが黒ずむ心配もありません。最近では強度に不安がありますが保険診療でも使用可能になってきています。保険治療ではファイバーの本数に制限がかかるので強度に不安がありますが、保険適応外ならファイバーを何本でも使って補強することが可能です。 皆さん、土台にファイバー+コンポジットレジンを選択しましょう。
詳しくはこちら 差し歯って結局なんなの?その疑問、答えます
5.まとめ
いかがでしたでしょうか?むし歯治療に金属を使うのは歯にとっても適していないことがお分かりいただけましたでしょうか?欧米人と比較して日本人がむし歯治療に金属を使用する割合が大きのは、健康保険制度で金属使用が適応になっていたからです。しかしながら、最近では金属以外のむし歯治療も認可されるようになってきています。ぜひかかりつけの歯科医院で相談してあなたの歯にどのような材料を使うのか相談してみてください。
参考文献
口腔内における歯科用合金の腐食とその生体に対する影響
遠藤 一彦, 松田 浩一, 大野 弘機
Zairyo-to-Kankyo 42,734-741,1993