自分で歯石をとる方法とデメリットを歯科衛生士が解説【動画つき】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

鏡で下の歯の裏側を見ると、いつも気になる。
「これは歯石だよなあ。このくらいなら自分で取れそうだなあ。わざわざ歯医者に行くのも面倒だし…」


歯石がどんなもので、歯石が付いていることが歯にとって良くない。という事を知っている方は、誰もが一度は考えることだと思います。
わかります。良くわかります。実は自分も気になって時々取ることがあります。でも、自分で取れるのは頑張ってもごく一部分だけ。だからこそお伝えしたい!

「歯石を取るのは自分で思うよりもずっと難しく、危険なことです」


でも、どうしても自分で取りたいあなたに少しでも安全に歯石を取る為の気を付けるべきポイントをお話ししていきます。

1.歯石を自分でとるために必要なこと

歯磨きをしているのに付いてしまう歯石。磨き残したプラークが約48時間すると歯石になり始め、少しずつ歯の隙間を埋めていきます。歯にべったり歯石が付いている方。自分で全部きれいに取るのは不可能です。あきらめて歯科医院で取ってもらいましょう。ここでは歯と歯肉の間や歯と歯の間に少しだけ付いている歯石を取りたい方に解説していきます。

下の1枚めの写真のように、歯の付け根あたりの一部分についた少量の歯石であれば自分で取ることができます。しかし、2枚めのように歯の表面にびっしりとついている歯石は、プロの手と専用器具でなければ取りのぞくことはできません。

[自分で取れる歯石]
除去可能な歯石の口腔内写真

[自分では取れない歯石]
除去不可能な歯石の口腔内写真

1-1 用意する道具

①スケーラー
歯石を取るときに自分の歯と歯肉を守るためには、事前の準備が必要です。まず必ず必要なのがスケーラーと言われる歯石を取る為の器具です。ネットで検索すると様々な形のものがありますが、鎌形の小さめなスケーラーが使いやすいでしょう。

★実際にインターネットでスケーラーを買ってみた★

このスケーラーならば…と思うスケーラーをamazonで購入してみました(価格は¥1,430でした)。
選んだポイントは、①「鎌形」刃の両側が使えるので器具を歯石に当てやすく、慣れれば初心者でも使い勝手がよい②大きすぎずコンパクトなサイズ感で、実際に歯科医院で使用しているスケーラーに形が近い…という点です。

しかし、思ったより先端が鋭利で、『わ。怖いな。一般の人が使えるのかな。動かし方の注意事項は守っていただきたいな』という印象です。

スケーラーの商品写真1

スケーラーの商品写真2  スケーラーの商品写真3

 

②消毒用エタノール
歯科医院では器具を滅菌して使用しますが、家庭で自分で行う際には消毒用エタノールで器具を消毒することが大切です。消毒用エタノールはドラッグストアなどで購入することができます。
エタノールの商品写真1  
!注意!
消毒用エタノールは火気厳禁です

③鏡、手鏡
鏡、手鏡を見ながら歯石を取りますが、歯医者さんで使っているような小さいミラー(歯鏡、歯科用ミラー)は見えにくいところを見るために使用しますが、歯石の確認をする程度で、歯石を取るときには必要ないと思います。また、実際には術者は感染防止の為グローブ(ゴム手袋)を付けますが、自分で取る場合はこちらも必要ないでしょう。ただし、歯石とりを行う前と後には必ず手を石鹸でよく洗うようにしましょう。

1-2 歯石の付きやすい場所と取れる場所

どんな人でも歯石の付きやすい場所は、ほぼ同じです。下の歯の犬歯から犬歯までの裏側(舌側)6本と、上の歯の奥から2~3本の頬側です。理由は唾液の出る穴(唾液腺の開口部)がすぐ近くにあり、残ったプラークとからみついて歯石になっていくからです。

[歯石のつきやすい場所]
歯石がつきやすい部位のイラスト

そして、自分で取るのが可能な場所は経験上、下の歯の裏側の歯石です。奥歯の歯石は鏡をのぞきこんでもよく見えないので、手探りで取ることになり、非常に難しいし、危険なのでお勧めしません。

1-3 歯石を取る手順

歯石を取るのは一歩間違うと大変危険です。安全に進めるために細心の注意を払いながら、慎重に行いましょう。

基本動作を練習しよう

鋭く尖ったスケーラーをいきなり口の中に入れるのは、怖いものです。鏡を見ながらの作業は逆に映るので、慣れるまでは難しいです。スケーラーの持ち方、動かし方を練習し、注意点を守りましょう。

①  スケーラーは鉛筆を持つように3本の指で持ちます。
スケーラーの持ち方


②  薬指を歯石を取りたい歯の出来るだけ近くに置き、固定します。(歯に限らず頬でもよいので固定する)
指の固定


③  スケーラーは出来るだけ立てた状態でサイドの面の先端1,2mmを歯石に当てます。(イラストの赤い部分です)
スケーラーの先端のイラスト


④  上下に1mmほど、小さく、ゆっくり動かします。必ず「引く」動きで動かします。


⑤  裏側も同じように動かして歯石を取ります。

!絶対に守るべき注意点!
・薬指の固定をおくのはなぜか…固定を置くことでスケーラーの動きが安定し、力をコントロールすることができます。唾液で滑ることがあるのでしっかり固定しましょう。


・スケーラーの尖った先端を歯に直角に歯に当てない…歯の表面が削れてしまいます。知覚過敏をおこしたり、虫歯になりやすくなります。


・歯に白い詰め物(コンポジットレジン)がしてあるかもしれない…虫歯の治療で詰め物があるとスケーラーに引っかかることがあります。無理に力を入れて動かすと取れてしまうことがあります。


・スケーラーの取り扱い…非常に鋭く尖った刃物です。歯肉を切ったり、誤って指に刺したりしないように慎重に扱いましょう。また、他の人と共有して使用することは衛生的によくありません。


・たばこのヤニや食品によるステイン(着色)が気になる方も多いと思いますが、歯の表面を削り取るようなことは歯にとって、もってのほかです。傷が付き更に汚れが深く入り込むようになります。絶対にやめましょう。

実際に歯石を取ってみる

基本動作を練習して、準備を整えたら始めましょう。あわてずゆっくり進めます。

①  器具を消毒用アルコールで汚れをよく拭き取り、消毒します。
スケーラーの準備


②  歯にライトや太陽光があたり、歯石がよく見えるところに鏡を置きます。
歯石取り1


③  スケーラーは鉛筆を持つように持ち、歯石を取りたい歯の近くに薬指をしっかり固定させます。怪我をしないために指を固定させることが何より大切です。
歯石取り2


④  歯石はスケーラーのサイドの面を使って取っていきます。スケーラーの先端を歯石にあて、1mm程度上下にゆっくりと動かし歯石を少しずつ取り除きます。
歯石取り3


⑤  スケーラーの向きは、歯石を取りたい歯に対して、利き手から遠い方の側、近い方の側で向きを変えます。イラストの歯の赤い部分の歯石を取りたいときは、スケーラーの先端を左にむけて当てます。
スケーラーの向き

★『知覚過敏』は思った以上にツライ!★

    私は歯科衛生士で毎日患者様の歯石を取ることを仕事にしています。そして、間違ったスケーリング(歯石を取ること)がもたらす結末を知っているので、歯石を自分で取る時は当然ながら慎重に行います。 でも…知覚過敏は突然やってきました。冷たい物がズキン!としみるやつです。冷たい水やアイスは前歯で噛めません。中でも、温めていないのり弁のちくわの天ぷら! 冷たい天ぷらがあんなにしみるなんて。痛みを誘発する食材は無数にあるのです。 症状が良くなるのに2・3か月かかったでしょうか。油断の出来ない状態は今も同じです。自分で歯石を取ることはこんな危険と隣り合わせなのです。

 

2.なぜ歯石は歯科医院で取ってもらうほうがいいの?

歯石を取る本来の目的のひとつは歯周病の治療です。歯石を取り口腔環境を改善することで歯周病の進行を防ぎます。前歯に付いた歯石を取っても改善にはなりません。1章で歯石の取り方についてお話しましたが、自分で取るのは限界があり、「おすすめしたくない」が、本音です。歯科衛生士の友達は全員が「やめたほうがいい」と口をそろえます。なぜでしょう。

2-1 専門家でない人が器具を正しく歯石に当てるのは難しい

鏡の中の歯石は自分からは逆に映ります。スケーラーの先端を正確に歯石に当てるのは至難の業で、固定の薬指の力をコントロールしながら、スケーラーを細かく動かすのはとても難しいのです。

《プロはこうする》
歯石の量や部位によって機械(超音波スケーラー)や、何種類もある手用スケーラーを使い分けます。刃先は鋭いので細心の注意をしながら、歯石を取り除きます。


[超音波スケーラー]
超音波スケーラー1の写真 

[手用スケーラー]
歯科スケーラー

2-2 鏡で見ても良く見えない

そもそも歯と歯石を正確に見分ける事が難しい事です。歯並びが重なっていたりすれば、更に困難です。
自分で歯石を取っても、取り残した歯石にプラークが付着しやすくなり、すぐに歯石になってしまいます。

  《プロはこうする》

歯にライトを当て、舌や頬をミラーで抑えながら視野を確保します。立つ位置を様々な方向に移動しながら、確実に自分の「目」で見ることで安全に歯石を取ります。

2-3 取れるのは前歯に歯石のほんの一部程度

慣れてくれば自分の目で見える範囲の歯石を取るのは、可能なことですが、奥歯や歯肉の中にある歯石を手探りでむやみに取ろうとするのは、とても危険なことです。

  《プロはこうする》

取らないといけない歯石は歯肉の中や、奥歯にあります。前歯の見えるところだけ取っても、お口の中の環境改善にはなりません。レントゲンを撮ったり、検査の際に歯石のある場所を把握することで、確実に歯石を除去します。

衛生士による歯石取り

2-4 知覚過敏を起こす可能性が大きい

スケーラーの当て方や動かし方を間違えると、歯に大きなダメージを与えてしまいます。知覚過敏といって、冷たい物や熱い物がしみたり、何もしなくてもジンジンと鈍い痛みが続いたりします。時間が経てば治まることが多いですが、痛みの程度も個人差があり注意が必要です。

  《プロはこうする》

歯石の付いている部位や量、硬さは個人差があり、力任せに行うことはしません。除去後の歯に知覚過敏が起きないように、安全を心がけながら行います。歯石を取ることが出来るのは国家資格を持つ歯科医師、歯科衛生士に限られています。

2-5 歯石の取り残しがある

歯石を取り残してそのままになっていると、でこぼこしたところにプラークが付きやすくなります。それが時間とともに、また歯石になってしまいます。歯の表面はつるつるにしておく必要があります。

  《プロはこうする》

歯石除去によって歯の表面にできた細かな傷を専用のジェルとブラシを使って研磨をして滑沢にします。残った歯石、プラークも取り除くので、歯の表面をツルツルにすることは大切なことです。

スケーリング用品

3.歯石を取った後にするべきこと

痛い思いをしてせっかく歯石を取っても、そのあとの歯磨きがうまく出来ないと、歯石はまた付いてしまいます。一度取れば終わりではなく、歯石を取った後のつるつるした歯を維持していくスタートだと考えましょう

3-1 定期検診に行くようにする

歯石の付き方、量の多さ、歯周病の進行度合いによって差はありますが、年に1,2度は定期検診をして、歯石を取り、虫歯の有無を確認することが大切です。歯石は少しずつ重なるように増えていきます。

3-2 正しい歯磨きを覚える

歯石を取ることについていろいろお話しましたが、なによりも一番大切なのは、実は歯石を付けないようにきちんと歯磨きをすることです。デンタルフロスや歯間ブラシ、タフトブラシなど自分の歯磨きに必要なケア用品を歯ブラシと併用して正しい歯磨きを身につけましょう。くわしくは、『その磨き方で大丈夫?正しい虫歯の歯磨き方法教えましょう』をご覧ください。

4.まとめ

今回は歯石を自分で取る為のお話でした。口の中に関心を持ち、自分の歯を鏡で観察し、歯石が気になるのはとても良い事です。自分で取る時は注意点を守り、怪我をしないように気を付けて、自分の歯を大切に扱うことが大切です。

間違った歯石除去はその後の歯の健康に影響します。何度も言いましたが自分で取ることが出来るのは一部であり、きちんときれいに取るのには歯科医院での除去が必要です。私としましては、歯石を取ることはプロに任せていただきたいなと思います。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

「歯の悩み相談」してみませんか?

歯の治療というのは担当する歯科医によって治療方針が変わります。

歯ッピースマイルを運営する東歯科、ほんまる歯科の2医院では「削らない虫歯治療」「できるだけ歯を残す治療」を心がけています。

通常の虫歯治療以外にも様々な歯の悩み相談と治療を
受け付けておりますので、ぜひ一度当院までいらしてください。

ご予約はこちらから

SNSで最新情報をチェック

コメントはこちらからどうぞ

コメントを残す