口腔内細菌による菌血症が重篤化させる恐れがある全身疾患

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みなさんは歯科医院での定期的メインテナンスを受けていますか?
先日、歯科衛生士を対象にした細菌感染やメインテナンスに関するテストがありました。(゚Д゚;)
メインテナンスを行う上で、まずは患者さん自身に歯周病は細菌によって起こる感染症であること、日々のセルフケアでのプラークコントロールが如何に大切かということを理解してもらうことが重要であると改めて痛感いたしました。
今回は、口腔内細菌(プラーク)が血管に入り込むことで起こる菌血症、それによって重篤化する恐れがある全身疾患、歯周病治療についてお話していきます。

1.菌血症とは

菌血症とは、本来無菌である血液中に細菌が入り込んだ状態をいいます。医療行為によって起こるものとして、カテーテルやチューブを膀胱や消化管等に挿入した場合や、歯科医院で考えられるのは抜歯等の外科処置やその他観血処置(出血を伴う処置)が行われた場合があげられます。カテーテルやチューブの挿入は無菌的な処置を用いたとしても、処置をする部位に細菌が存在している場合に起こる可能性があります。手術を受ける前に担当医から歯科受診をすすめられるのはこのような理由からです。

歯性菌血症の場合、抜歯等の処置をしなくても、口腔内環境が悪かったり歯周病が進行していたりすると、炎症からできた傷から血液中に細菌が侵入し菌血症を起こします。また強いブラッシングによる出血等でも菌血症を起こすことがあります。一般的に菌血症は一過性で症状はみられず、免疫系の働きにより血液中から細菌が速やかに排除されるため感染症にはつながりません。

 

傷口から細菌が血液中に侵入した状態が菌血症で、それが全身に波及し重篤化してしまう状態を敗血症といいます。敗血症は感染症の結果として起こるため、全身にわたり下記のような症状があらわれます。
• 悪寒とふるえ、発熱
• 身体の疼痛や不快感
• 冷たく湿潤した皮膚
• 意識低下(混乱や見当識障害)
• 息切れ、頻呼吸
• 頻脈

1-1 歯科処置後の歯肉の腫れ

歯科医院での多くは観血処置(出血を伴う処置)です。歯周病治療の一環として行われるメインテナンスでのプロービング検査や歯石除去等でも菌血症は起こります。稀にメインテナンス後に歯肉の腫れが出る患者さんもいます。


写真は久しぶりの歯科受診でメインテナンス希望にて来院された患者さんです。処置翌日から歯肉が腫れたとのことで再度来院され、腫脹部位の洗浄と抗生剤の投薬を行い、2週間後の来院時には症状がおさまっているのを確認しました。

 

2.菌血症が引き起こす恐れがある全身疾患

歯性菌血症は、患者さんの全身状態によってその他の疾患の原因となります。

2-1 動脈硬化症

動脈の血管が硬くなって弾力性が失われた状態で内腔にプラークがついたり血栓が生じたりして血管が詰まりやすくなります。動脈硬化症が起こる場所によって心筋梗塞や脳梗塞が引き起こされます。
歯周病は動脈硬化症の要因のひとつとしてあげられ、歯周病患者は、歯周病でない人に比べて心臓血管系疾患の発症リスクがかなり高いという報告があります。


2-2 虚血性心疾患

虚血性心疾患には、狭心症や心筋梗塞があり、どちらも動脈硬化症が関与している疾患です。
狭心症は動脈硬化などによって心臓の血管(冠動脈)が狭くなり、血液の流れが悪くなった状態です。



心筋梗塞は動脈硬化によって心臓の血管に血栓(血液の固まり)ができて血管が詰まり、血液が流れなくなって心筋の細胞が壊れてしまう病気です。




2-3 感染性心内膜炎

血液中に侵入した病原体が主に心臓の弁などの心臓の構造物に付着して、疣贅(ゆうぜい)と呼ばれるイボのような塊を形成します。心内膜炎は大動脈弁閉鎖不全症など弁膜症の原因となり、正常な心臓の機能を保つことができなくなります。また疣贅(ゆうぜい)は非常にもろいため、心臓の収縮・拡張運動によってはがれ落ちた一部が血管に詰まって脳梗塞の原因になることもあります。

3.歯周病治療で感染原因の細菌を除去する

歯周病は細菌によって起こる感染症です。
歯周ポケットから侵入した細菌が歯肉に炎症を引き起こし歯周組織を破壊し、歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしてグラグラにさせてしまう病気です。一度感染してしまった歯肉は炎症が治まることはあっても元の状態への完治はありません。歯周病を進行させないためには、原因となる細菌(プラーク)を除去することが大切です。

歯周病進行イラスト

3-1 セルフケアとプロフェッショナルケアの二人三脚で感染の原因を除去する

① 患者自身に病状を理解してもらう
口腔内写真やレントゲン撮影、歯周病検査等を行い、現在の状況を確認してもらう。感染の原因となっている細菌(プラーク)を放置すると歯周病が進行してやがては歯を失うことになるということを理解してもらう


② セルフケアの確認をし、苦手部位のケアを指導する
基本的に歯肉縁上(口腔内で見えている歯の部分)は患者自身のセルフケアでプラークコントロールを行ってもらう。
プラーク付着が確認された部分は患者自身のセルフケア苦手部位のため確認してもらい、どのように磨けばよいか指導を行う。使用する歯ブラシやその他歯間ブラシ等の補助的清掃具、口腔状態に合わせて必要な薬用成分が配合された歯磨剤等の処方をする。


③ セルフケアでは除去できない部分はプロフェッショナルケアを行う
深い歯周ポケット内のプラークや石灰化してしまった歯石はセルフケアで除去できないので歯科医師や歯科衛生士等の専門家がPMTC(プロフェッショナルメカニカルトゥースクリーニング:専門家による機械的歯面清掃)を行う。


④ 患者自身がセルフケアでメインテナンス後の口腔内を維持する
歯周病治療は感染の原因となる細菌の除去であるため、患者自身がセルフケア習慣が定着していなければ歯科医院で定期的にメインテナンスを受けたとしても、すぐに元の状態に戻ってしまう。そうならないためには指導されたセルフケアでメインテナンス後の口腔内をより長く維持することが必要となる。
  
画像:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネットより

⑤ 定期的にメインテナンスに来院してもらう
口腔内の状況に応じた適正なメインテナンス間隔で繰り返し来院してもらい、前回指導したセルフケアが定着しているかを確認する。口腔内の状況によってセルフケアグッズの見直し等を行う。

4.まとめ

口腔内の細菌が血液内に侵入することにより、様々な全身疾患を引き起こす原因となります。
歯周病は完治のない病気のため、歯周病治療に終わりはありません。定期的な歯科医院でのプロフェッショナルケアと患者自身が行うセルフケアで進行を防ぎます。まだまだコロナ渦で歯科受診から遠のいている方が少なくないと思われますが、痛みや詰め物が取れたなどの不具合がなくても、定期的な検診・メインテナンスを受けて、まずはご自身の口腔内の状態を知ることから始めましょう。

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