初期の歯周病でやっておいてほしい5つのケア 

歯周病初期
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歯周病の健康番組やCMを、1日のうちでいったいどのくらい目にするでしょうか? 自分は大丈夫?と心配になる方や、自分は虫歯もなく歯の治療もする必要がないから全く心配ないし、歯周病なんて関係ない。と、自信を持っている方もいらっしゃるでしょう。本当に大丈夫でしょうか?もしも気が付かない間に歯周病が始まっていたら…。今回は歯周病の初期を詳しく紹介し、正しい知識を持っていただくことで歯周病とは縁のない健康な生活を送っていただけるようお話していきます。ぜひ参考にしてください。

 

1.歯周病とは?

歯周病とは歯と歯肉のすきま(歯周ポケット)から侵入した細菌により、歯肉に炎症が起こり、さらには歯を支える骨が溶けて歯がグラグラになってしまう病気です。歯周病はとても身近な存在です。日本人の35歳以上の成人の8割以上、小学生でも約4割が歯周病であると平成23年歯科疾患実態調査を行った厚生労働省が発表しています。5人中4人が歯周病。驚く数字ですね。

1-1 歯周病には歯肉炎と歯周炎があります

歯周病は大きく分けると『歯肉炎』と『歯周炎』から成っています。歯肉炎とは炎症が歯肉にとどまった状態で赤くなっています。歯周炎とは炎症が顎の骨まで進んでいる状態で、「軽度歯周炎」「中度歯周炎」「重度歯周炎」に分けられます。ではどう見分けるのでしょう。炎症の進行度合いが一つの基準になりますが、正しい診断は『ポケット検査』という検査が重要です。ポケットとは歯と歯肉の間にある溝のことで、誰にでももともとある隙間です。このポケットの深さを計測します。

歯周ポケット

ポケットの深さ

歯肉炎 ・・・3mm以下

軽度歯周炎・・3mm以下(ポケットは歯肉炎と同じでもあご顎の骨は溶け始めています)

中度歯周炎・・4~6mm

重度歯周炎・・6mm以上

 

1-2 歯周病の初期段階で起こる症状

歯周病は別名『サイレントキラー(静かな殺し屋)』と言われ、気が付かない間に進行していることがあります。初期の段階でしっかり対策をすれば歯周病の改善と進行を抑えることが出来ます。

歯肉が赤くなっている

歯肉が赤い

初期の歯肉炎でよく見られます。プラーク(歯垢)が歯と歯肉の間に残ったままになっているとその中の細菌により歯肉が赤く炎症を起こします。正式には発赤(ほっせき)と言いう状態です。

歯肉が腫れている

歯肉が腫れた

歯と歯の間の歯肉が丸く盛り上がっています。痛みがないこともありますが見た目には腫れているのがわかりますよね。軟らかい歯ブラシでやさしく磨くようにします。

歯磨きの時に出血する

歯みがき時の出血

発赤や腫れた状態で歯ブラシを当てると歯肉から出血するようになります。「磨くと血が出る」となると歯磨きがおろそかになりがちですが、実際にはそれでもしっかりブラシを当て、歯肉が痛くない程度の力で良く磨く必要があります。マッサージをするように磨きます。

2.初期の段階で出来るセルフケア

歯周病かな?と、気になった時にそれまでの自分の歯磨きを思い返してみると、「虫歯を防ぐための歯磨き」をしてきていませんか。その歯磨きを歯周病ケアを目的として、意識を変えていくことがとても大切です。継続して続けていくのは簡単なようでとても難しいものです。

2-1 正しい『道具』を選ぶ

今までの磨き方で良く磨けずプラークが残ってしまい腫れや出血などがあるなら、歯磨きを見直しましょう。歯並びは人によって様々です。磨けない陰になる場所があったり、長年の磨き方の癖で歯ブラシが当たらない所があったりします。歯ブラシ以外の道具を加えていく必要があります。

歯ブラシを選ぶ

ドラッグストアでたくさん並んでいる歯ブラシの中から自分にあった歯ブラシを選ぶのはとても難しいです。ブラシの形、大きさ、硬さ、毛先の太さ、材質など様々です。歯ブラシは歯の1~2本分の大きさでヘッドの小さいものの方が奥歯まで良く入ります。硬さは歯肉が痛くなくマッサージが出来る軟らかいものが適しています。歯科医院の窓口で販売している歯ブラシは歯科医、歯科衛生士が実際に使用しているものが多く、安心して使うことが出来ます。ぜひ歯科医院で相談してみてください。

ここでは歯周病の初期におすすめな歯ブラシを2種類紹介します

詳しくは

現役歯科衛生士が選ぶパートナーに使ってほしい歯ブラシ11選!

を参考にしてください

コスパ最高!『オーラルケア タフト24』

ストレートハンドルでコンパクトなヘッドで奥の歯も磨きやすく、耐久性とコシがあります。硬さは、歯周病予防に最適な軟らかさのESS,SS,一般成人用S,MS,M,MHの6種類があります。受付の窓口で販売している歯科医院も多く、インターネットでも購入可能です。1本120円前後なので交換しやすいですね。

 

オーラルケア タフト24

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毛先が軟らかい!『シュミテクト やさしく歯周病ケア歯ブラシ』

市販の歯ブラシで選ぶならこちら。毛先が細く軟らかいので歯肉にとってもやさしいです。歯周病の初期の赤みや腫れのある敏感な歯肉をマッサージするのに最適です。ネットで1本150円程度です。

 

シュミテクト やさしく歯周病ケア歯ブラシ

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歯間ブラシを選ぶ

歯と歯の間やブリッジの金属の下は汚れが多く残っていますが、食べかすやプラークを歯ブラシだけできれいに取り除くことはできません。歯間ブラシを使用することで95%の汚れを取ることが出来ます。また歯ブラシでは触ることのできない歯間の歯肉をマッサージすることで出血を防ぎます。歯間ブラシには、SSSS SSSSSSMLLLのサイズ(メーカーのよって若干違いがあります)があり、形状もI型とL型があり、はじめは細めでL型の歯間ブラシを選んで歯の側面、左右をくまなく当てるようにすると良いでしょう。ゴムタイプは?と、よく質問されますが、ゴムタイプも軟らかいので痛みが少ないのが特徴で初心者には適しています。ただ、プラークをしっかり除去できるのは圧倒的にブラシタイプです。

歯間ブラシ使い方

歯間ブラシの使い方動画はこちらから

DENTEX 歯間ブラシ4本入り』がおすすめ

SSSSS)はかなり細めなので歯と歯の間の隙間があまりない歯周病初期の方におすすめです。歯の丸みに合わせて隙間全体にブラシを当てます。表側からだけでなく裏側からも入れるのが大切です。食後使用するのが基本ですが無理なら1日に1回以上使用しましょう。

 

Dent EX 歯間ブラシ

 

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タフトブラシを使用する

歯と歯肉の間や歯並びの悪い所、奥歯の奥の歯ブラシが届かないところを磨くのに最適です。ブラシの毛先が三角にとがっているので狭い隙間にピタッと入ります。やさしい力でクルクル回すように動かすとプラークをきれいに取り除くことが出来ます。タフトブラシで確実にプラークを取り、歯ブラシでマッサージするのは歯周病の予防には欠かせません。

オーラルケア『プラウト』がおすすめ

耐久性にすぐれておりPBT毛材(ポリブチレンテレフタレート)はナイロンと比べ吸水性が約15分の1と小さく水はけが良いので、毎日使用しても雑菌の繁殖を防ぎます。清潔に使用できるのはうれしいですね。

 

プラウト

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デンタルフロスを使用する

フロスは歯と歯の間に食べ物が挟まった時に使用することが多いですが、歯間ブラシと同様に歯と歯の間の清掃に使用します。間にフロスを入れたら歯肉の隙間から(歯肉の中から)、歯の丸みにしっかり添わせてフロスを上下に動かしプラークをからめとるのが正しい使用方法です。

 

デンタルフロス使い方

デンタルフロスの使用方法はこちらから

 『リーチ デンタルフロス ワックス 50m』がおすすめ

このフロスは指に巻きつけて使うタイプです。最初は奥歯に入れるのが難しいと思いますが慣れれば簡単です。ポルダータイプより圧倒的に経済的です。毛束がしっかりしているワックス付きが良いでしょう。

 

リーチ デンタルフロス ワックス

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2-2 磨くポイントは歯と歯、歯と歯肉の間を丁寧に

虫歯の好発部位(こうはつぶい:できやすい部分)は ①小窩裂溝(しょうかれっこう:噛みあわせの面の溝) ②歯間隣接部(しかんりんせつぶ:歯と歯の間) ③歯頸部(しけいぶ:歯と歯肉の間)ですが、虫歯の原因になるプラークをきちんと除去できないと、そのプラークが歯周病の原因になります。好発部位を良くみがくことで虫歯と歯周病を同時に予防することができます。

 

プラークのたまる場所

2-3 磨き方をマスターしよう

ブラッシング方法

LION クリニカHPより

歯ブラシは毛先を歯と歯肉の間に向け、歯に対して45°の角度に当てます。鉛筆を持つように歯ブラシを持ち(ペングリップ)、力を入れずやさしく小刻みに1~2本ずつ磨くように動かします。一度に多くの歯を磨こうとすると横磨きになってしまうので注意しましょう。磨き始めから終わりまで同じように正しく磨いていくことが大切ですが、途中から雑な磨き方になってしまいがちです。しっかり習慣が出来るまでは意識を集中して丁寧に磨くようにしましょう。歯磨き粉はあくまで補助的なものです。少なめに使うことをお勧めします。

2-4 一番大事なのは寝る前に磨く歯磨きです

食後の歯磨きが大切なのは皆さんご存知と思いますが、食後3回毎回丁寧な歯磨きの時間をする余裕のある方ばかりではありません。また、丁寧に磨こうとしても結果的に3回とも雑な歯磨きになってしまい磨き残しがたくさんあったら、磨いた意味がありませんよね。ならば11回、ゆっくり時間をかけて丁寧に磨きましょう。どの時間帯?それはズバリ、寝る前の歯磨きです。なぜなら寝ている間は唾液の分泌が減り、汚れが落ちることが少なくなります。口を閉じたままになることで口の中の温度が一定になり歯周病菌が増えてしまいます。寝る前の歯磨きで口の中を出来るだけ清潔にするのはとても大切です。

2-5 唾液の分泌を増やす

ドライマウスで唾液の分泌が少ないと歯周病になりやすくなることは良く知られている話です。唾液には細菌の増加を抑えたり、粘膜を保護したり、歯の表面を再石灰化したりなど様々な作用があります。唾液の分泌を増やすことはとても大切です。次の事柄を実行しましょう。

  1. よく噛む:しっかり噛むことで唾液の分泌は増加します。硬い物や甘くないキシリトールガムなどを食べるとよいでしょう。
  2. 口呼吸をしない:口の中を乾燥させてしまうと唾液が減ってしまいます。
  3. 口を閉じてよく舌を動かす:舌の根の部分を良く動かすと唾液は分泌されます。根元から上下、左右に動かしてみましょう。

        

    3.歯科医院で行う検査と処置

    セルフケアが上手く出来なかったり、鏡を見て歯に歯石が付いていたら早めに歯科医院を受診することをお勧めします。自覚症状や歯科の受診状況、生活習慣についてなど問診してレントゲンの撮影で顎の骨の状態を確認します。その後歯科医、歯科衛生士による検査と処置を行います。

    3-1 ポケット検査をします

    ポケット検査GC友の会より        

歯と歯肉の間(歯周ポケット)に「プローブ」という目盛のついた器具を入れ深さを測る検査です。ポケットは誰にでも元々ありますが、歯周病が進行していると骨(歯槽骨)が溶けてなくなりポケットは深くなります。数字が大きければ大きいほど歯周病が進行していることになります。

3-2 歯石除去を行う

歯石除去

初期の歯周病では歯の根元にプラークやプラークが硬くなって出来た歯石が付いていることが多くみられます。手用で用いる「スケーラー」や水を当てながら機械的に歯石を除去する「超音波スケーラー」で歯石を取り除きます。歯肉の上の見えるところやポケットの中の比較的浅いところの歯石をとる場合、痛みは少ないことが多いですが、痛みを強く感じるなら麻酔の注射をしてもらいましょう。歯石を取ることで歯肉の腫れや発赤がよくなり、改善につながります。

3-3 歯磨き(プラークコントロール)の指導を受ける

せっかく大変な思いをして歯石を取っても歯磨きが上手く出来ないとまたプラークが残って、歯石になってしまいます。プラークはお口の中で48時間後には歯石に変わり始めます。あっという間ですね。正しい磨き方と適切な道具を加えて使用することで健康な歯肉を維持できるのです。大切なのは日々のブラッシングなのです

3-4 定期検診を続けていく

歯周病の進行度によって期間は違いますが、初期であれば、6ヶ月~1年での定期健診を行っていきましょう。きちんと磨いているつもりでも、気が付かない間に歯石は付いているものです。ポケット検査を受けて記録を残すことで、お口の中の健康を守っていきましょう。

 

4.歯周病になりやすい人と対策

 頑張って磨いているし定期健診もしているのになかなか改善しない・・・。そんな場合には他の原因があるのかもしれません。当てはまるものがありますか?

4-1 歯磨きを正しく出来ない人

自分ではきちんと磨いているつもりでも、歯ブラシの当て方、角度がうまく出来なくてプラークに当たってないなんてありませんか?プラークはバイオフィルムという膜でおおわれています。しっかり毛先が当たらないと汚れはとれません。動かし方はどうでしょう。昔からなじんだ磨き方に戻っていませんか?手はそう簡単に慣れてくれません。時間をかけていますか?サッサッと磨いただけではダメです。プラークはしぶといのです。

4-2 糖尿病の人

 

歯周病と糖尿病の関係

糖尿病があると細菌に対しての抵抗力が弱いために歯周病が進行しやすくなります。歯周病の人は血糖値も悪いと言われています。歯周病も糖尿病はどちらも生活習慣病です。丁寧に歯磨きを続けながら、バランスの良い食生活、適度な運動を心がけるようにしましょう。

4-3 たばこを吸う人

 

タバコと歯周病の関係

たばこの煙には数千もの多くの化学物質が含まれています。そのうちのニコチンや発がん物質などの有害物質は200とも300とも言われています。たばこの煙に含まれる「一酸化炭素」は組織への酸素の供給を妨げ、「ニコチン」は血管を収縮させることで体が酸欠、栄養不足になります。その影響で歯肉の腫れや出血が抑えられ歯周病に気が付きにくいことがあります。歯肉の治り方も良くありません。まさに百害あって一利なしです。

4-4 妊娠中の人

 全体的に炎症が起こり、妊娠初期に多くみられます。原因はつわりで歯を良く磨けなかったり、口の中が酸性に傾いたり、ホルモンバランスがくずれ、歯周病菌の増殖しやすい環境と作ることで歯周病が起こります。これらを妊娠性歯周炎と呼びます。また妊娠性エプーリスと言われる妊娠時期特有の歯肉炎は全体の0.51.2%にみられます。歯周病が進行すると低体重児出産や早産の原因にもなり注意が必要です。小さめの歯ブラシを使用するなどして出来るだけよく磨き悪化しないよう気を付けます。

 

妊娠性エプーリスの口腔内写真

公益社団法人 南部地区歯科医師会HPより

 

  1. 5.歯周病を放置するとどうなるの?

  2. 症状と処置いろいろな原因が重なったり、初期の段階で改善出来なかった場合どのように歯周病は進行していくのでしょうか。初期で食い止めないとこんな恐ろしい結果につながります。  
  3. ポケットが4~6mmの状態で歯周組織の破壊が進んできます。症状は歯肉の腫れ、出血があり触ると歯が動きます。歯肉が下がってくるので歯が長くなったように見えてしみることがあります。口臭が強くなって浮いた感じがしてきます。治療法は初期の基本の治療に加えSRP(スケーリングルートプレーニング)と呼ばれる、麻酔をしてポケットの深いところの歯石やプラークを掻き出す治療や、歯肉ポケット掻把術と呼ばれる外科治療が必要になります。
  4. 5-1 歯周病中等度

    ポケットが4~6mmの状態で歯周組織の破壊が進んできます。症状は歯肉の腫れ、出血があり触ると歯が動きます。歯肉が下がってくるので歯が長くなったように見えてしみることがあります。口臭が強くなって浮いた感じがしてきます。治療法は初期の基本の治療に加えSRP(スケーリングルートプレーニング)と呼ばれる、麻酔をしてポケットの深いところの歯石やプラークを掻き出す治療や、歯肉ポケット掻把術と呼ばれる外科治療が必要になります。

  5.  

SRP写真

5-2 歯周病重度

ポケットは6mm以上で改善が出来ない状態です。歯の根の周りに骨が無いので歯がグラグラです。痛みも出てくるので食事も思うように取れなくなります。出血も多く、歯肉の中から膿も出てくるので口臭がかなりきつくなります。外科処置は「フラップ手術」と呼ばれる治療を行いますが、場合によっては抜歯をするのが一般的です。歯を抜いた後は歯肉の回復を待って、他の歯や口の中の状態により、ブリッジ治療や入れ歯を作製したり、条件を満たせばインプラントの手術をして食べることの機能を回復させます。

 

歯周外科

 

.まとめ

自分でも気が付かない間に進行する歯周病。歯が無くなってしまったら・・。考えると怖いですね。どんなに有名な先生の治療を受けても、どんなに高額な治療費をかけても、自分の歯に勝るものはないのです。歯周病初期の段階なら健康な状態に回復させることは十分可能です。虫歯にならないための磨き方を歯周病にならないための磨き方に変えて、今日からしっかり磨きましょう。80歳になったとき自分の歯で食事をするためには

今からの歯磨きが大切なのです。

 

 

 

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