奥歯に白い被せ物ができないと思っていたけど「金属アレルギー」の人は保険で白いものに変えられると聞いたかた、いらっしゃいませんか?
- 気になっているけど歯医者に詳細を聞くのが面倒
- やってみたいけど何が必要なのか分からない
- どういう特徴があるのか知りたい
そんなかたに、保険内で白い被せ物をする方法や被せ物の特徴を説明していきたいと思います
1. 保険でできる白い被せ物は2種類ある
金属アレルギーの人は、保険診療内で奥歯の被せ物を白くすることができます。
奥歯というのは上図でいうと、犬歯の後ろの歯のことを言います
補足
金属アレルギーじゃない人は
- 第1小臼歯
- 第2小臼歯
のみ、保険で白い被せ物にすることができます
数年前は硬質レジンジャケット冠という1種類の材料しか使えなかったのですが、現在は従来のものよりも硬い素材が使用できるようになりました。それをハイブリッドセラミックレジン冠(CAD/CAM冠)といいます。
これはCAD/CAM(きゃどきゃむ)システムという歯科の3Dプリンターを使い、ハイブリッドセラミックのブロックから被せ物を削り出して作ります
CAD/CAMシステム
白いブロック(左図)をCAD/CAMドリル(右図)で削り出します
1-1.硬質レジンジャケット冠
これは従来の材料で、白いプラスチックだけで作られた被せ物です。
すべてプラスチックなので割れやすい、つまり、予後が悪いといった弱点があります
1-2.ハイブリットセラミックレジン冠
こちらは2014年に保険適応されたものになります
プラスチックとセラミックを混ぜた素材で、従来の硬質レジンジャケット冠より強度がある材料です
2. 治療する前に気を付けてほしい2つのポイント
歯科アレルギーの人なら、いきなり歯医者に行って白い歯にしてもらえる…という訳ではありません。
「せっかく行ったのに治療が始められなかった!」
ということにならないように、さっそく確認してみましょう
2-1.大臼歯を白くする時は金属アレルギーの証明が必要
大臼歯を白い被せ物にするときは、医師から「金属アレルギー」であるという証明が必要になります。それがないと保険診療内で大臼歯に白い被せ物をすることができません
お手数ですが、皮膚科に行って診療情報提供をしてもらってきてくださいね
大臼歯は上図で言うと、前から6~8番目にある、大きな臼歯のことを言います
2-2.白い被せ物を実地している歯科医院を探す
数年前に保険対象になったCAD/CAM冠は、すべての歯科医院で行っていません。厚生労働省が設定した施設基準を満たし、届け出を出している歯科医院ではなくてはできません
筆者のバイト先の内2つの医院はCAD/CAM冠はやっていませんでした
前もって電話などで問い合わせたほうが安心ですね
3. 保険で歯を白くする前に知っておきたい7つの注意点
歯が白くなるメリットとして、第一に審美の回復があげられます。笑ったときにギラリを金属の色が見えないのは助かりますよね
またアレルギー対策の他に、歯ぐきに金属イオンが溶けだして黒くなることを避けることもできます
↑被せ物の金属が溶けだして歯ぐきが黒ずんでいる
しかし、保険内の白い被せ物はいくつかデメリットもあるので、そちらも頭に入れておいてから治療に臨んだほうが安全です
それでは、気を付けたほうが良い7つの注意点を説明していきます
3-1.銀歯より虫歯になりやすい
同じ保険内でも、銀歯は技工士という国家資格を持っている人が手作業で作っていきます。一方CAD/CAM冠は機械で作っていきます
人が作るより機械のほうが正確なのでは…と思う方がいるかもしれませんが、実はこれは逆で、技工士が1つ1つ作ったもののほうがピッタリとした被せ物になります
(将来的に機械の性能が向上し、精度があがれば話は違いますが)
ピッタリとしていない被せ物、つまり、適合が悪い被せ物は段差に汚れがたまるので将来的に虫歯になりやすくなります
また、プラスチックは柔らかいので硬い歯ブラシなどで傷がつきやすく、汚れが溜まりやすくなります。被せ物の周りに汚れが溜まりやすいということは、やはり虫歯になりやすいといったリスクが上がります
↑プラークには細菌がたくさん!ヌメヌメしていて段差に溜まりやすい
すき間が虫歯になると、また歯を削ることになり歯が欠けたり折れたりといったことに繋がります
なので、二次的な虫歯にならないためにも、被せたところは丁寧に歯ブラシとフロスをし、定期健診などでメインテナンスをしたほうが安心です
↑虫歯の再治療を繰り返すと、自分の歯が少なくなって強度が落ち、歯の破折に繋がる。割れた歯は抜くしかない
3-2.歯をたくさん削ることになる
プラスチックは柔らかいので被せ物に厚みが必要になります。そのため、銀歯よりもたくさん歯を削らなくてはなりません。
3-3.神経をとる可能性がある
3-2.に関連しているのですが、被せ物の厚みを確保するために歯をたくさん削らないといけないので、神経がある歯を治療するときは冷たいものにしみるといった症状がでる可能性があります。
特に若い人は歯の神経が豊富なのでしみやすくなります
治療の途中でしみる症状が強くでたり、温かいものでしみてきたら、神経をとる場合もあります
↑神経をとる治療は時間がかかる
3-4.被せ物は時間が経つと変色してくる
プラスチックは水を吸収する性質があるので、時間とともに色がかわってしまいます
コーヒーやワインなどをよく飲む人は、着色しやすくなります
3-5.金属より破損するリスクがある
従来のもの(硬質レジンジャケット冠)はやわらかいので割れた患者さんが経験上多かったです
一方CAD/CAM冠はセラミックが配合されマシかと思われますが、プラスチックも含んでいるので、やはり金属に比べれば柔らかいです。
そのため、金属に比べると穴が開いたり欠けたり割れたりといった破損のリスクがあります
特に歯ぎしりが強い人や、治療する歯に力がかかる噛み合わせの人は注意が必要です
被せ物を長持ちさせるために、歯ぎしりのコントロールやマウスピースの着用をすすめられることもあります
↑左図はハードタイプ、右図はソフトタイプのナイトガード
参考記事
「歯だけじゃない!体にも悪影響を与える「歯ぎしり」の正体とは」
「【Dr監修】知って得する歯ぎしり予防ナイトガードの使い方」
3-6.2年以内に作り直すときお金がかかる
通常、保険診療でブリッジやクラウンといった被せ物をするときは、補管(クラウン・ブリッジ維持管理料)がかかります
この補管というものは治療に対して「2年間保証をする」といったものです。つまり「銀の被せ物を2年以内に作り直す時は、“銀歯に関わる”料金が一切かからない」といった、治療に対する補償のようなものです
(注!初・再診料や医学管理料は支払うことになります)↓
しかし、金属アレルギーで白い被せ物を被せるときは補管は適応されないという国からのお達しがあります(平成30年9月現在)
そのため、2年以内に被せ物が割れたりして作り直すときは、銀歯と違ってお金がかかります
3-7.自費の被せ物と比べると物性が劣る
現在、保険で使用できる白い被せ物の材料は、自費診療で使える材料に比べると、強度、適合、審美性といったすべてが劣ります
例えば、オールセラミックは被せ物すべてばセラミックで出来ているので、経年的に変色をせず審美的に美しく、また表面がつるつるしているので汚れも溜まりにくいです。また、裏打ちが金属であるメタルボンドと比べると、強度、適合、色調などで劣ります
保険の銀歯と比べると見た目の面では白くできて良いのですが、自費の材料に比べると物性が劣ることをご理解ください
3-8.予後が良いか分からない
CAD/CAM冠は2014年に保険適応されたのでどれくらい持ちが良いのか分からないところがあります。
筆者もCAD/CAM冠を入れた患者さんは片手で数えるほどしかおらず、予後がどうなのかが分かりません…
他の歯科医院が提供している情報サイトでは、銀歯に比べるととれやすいといった記載がありました
新しい技術なので、実地した患者さんの絶対数が少なく、長い目で見た時に予後が良いのかどうなのか、誰も分からないといった不透明ところがあります
4. まとめ
いかがでしたか?
金属アレルギーの人が臼歯すべてを保険内でできるようになったのは朗報ですね
しかし、材料の性質上、限界があるのも事実です
人によってお口の状況が違うので、担当医と相談をして治療をしていきましょう