あなたを守る、器材使い回しをしていない歯科医院の見分け方

歯科 器具使いまわし
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歯を削る器材が半数近くの歯科医院で交換せずに使い回しされている・・・と言う記事が出ました。みなさんは自分が通っている歯医者さんがどうなのか、不安になりませんでしたか?

歯科は、内科などの他科と比べると、出血を伴う観血処置が大半です。定期検診で行う歯石除去も、歯肉に炎症があれば出血します。血液や唾液に直接触れる以外にもウイルスへの感染経路はあります。ここでは、みなさんが安心して歯科治療を受けられるように、予防対策を行っている環境を見極めるポイントをお話ししたいと思います。

1.感染を防ぐためには感染経路を断つのが基本

    感染・発症の要因には感染源、宿主の免疫、感染経路の3つが上げられます。病原体と宿主の免疫をコントロールすることは難しいため、感染を防ぐためには感染経路を遮断することが基本になります。

1-1 歯科医院における3つの感染経路

接触感染

・血液、唾液などの体液と直接接触する(直接接触感染)

・歯科器具やその他汚染物と間接的に接触する(間接接触感染)

飛沫感染

感染者の咳やくしゃみ、会話などで放出された飛沫が鼻腔や口腔粘膜、結膜と接触する

空気感染

空気感染性の微生物を吸引する

 

“インフルエンザ感染予防にうがい・手洗いが有効な理由”

インフルエンザが蔓延する季節には、うがいと手洗いが重要です。でも飛沫感染なのに何で手洗い??と思われた方も多いかでしょう。それは咳をする瞬間などに口を押さえ、手のひらに粘液が付着し、その手で無意識に様々な場所に触れることにより触れた個所が汚染されます。自宅なら限られた人のみですが、公共施設では不特定多数の人が利用します。ドアノブやら階段の手すりやらその都度消毒するわけにもいかず、そんなことを気にしていたら外出できませんよね。よって、最も的確な対策としてうがいと共に手を洗うという行為が感染予防対策として有効とされるわけです。

1-2 歯科医院で感染するのは医療従事者か、医療機器を介してかの2通りだけ

歯科医院の処置においての接触感染とは、治療で汚染されたグローブ等で他の箇所を触る、またはそのまま他の患者に触るなど医療従事者を介した交差感染と、汚染された器材、または消毒・滅菌が不十分の器材を使用するなどの医療器具を介した交差感染が考えられます。このような交差感染を防ぐために歯科医院で行われている感染予防策について、次の項目で詳しく説明していきます。

2.感染対策している歯科医院を見分ける5つのポイント

感染予防は治療を受ける患者さんを感染から守るのは勿論のこと、治療をする側も感染から守るために大切なことなのです。ここでは院内感染対策として実際にどのようなこと行っているのか説明していきます。安心して治療を受けて頂くために、感染対策を行っている環境をチェックする参考にしてください。

2-1 既往歴や現病歴などをきちんと問診してくれる

歯科医院を受診する際、問診票で既往歴(現在罹っている、または過去に罹ったことのある病気)を記入してもらいます。これは行ってはいけない処置や使用・処方できない薬品や薬剤、感染症の有無を確認するためです。しかしながら受診するすべての人が正しい記載をしているとは限りません。過去に申告して不快な思いをした経験がある場合など、正直に記入したくないという患者さんも少なくないのが現状です。また、自分がその病気に罹っていることすら気づいていなければ勿論申告などできません。よって患者が保有する可能性のある病原体は未同定(不明・確認できないもの)として、すべての目視できる湿性の血液・体液・排泄物等は感染の可能性があるものとして取り扱うことを標準予防策(スタンダードプレコーション)としています

2-2 手洗いと手指消毒をしている

手洗いは感染を予防する最も重要な手段と言えます。手洗いは医療従事者の手指を介しての患者への感染(交差感染)の予防と病原体から医療従事者を守ることを目的としています。医療現場での手洗いは衛生的手洗い方法で行います。その後、消毒用エタノールを配合した薬剤を用いて速乾性擦り込み式手指消毒を行います。

衛生的手洗い

 (ヨシダ製薬より引用) 

実際の手洗い動画はこちら

2-3 グローブを患者ごとに交換している

病原体が確認されているかいないかにかかわらず、湿性の血液・体液・排泄物に触れる可能性があるときはグローブを着用します。医療従事者は治療を介助するアシスタントも含め、治療の際にはグローブを着用し、それを患者ごとに交換します。処置中に他のユニットへ移動する際にも、グローブは必ず患者ごとに交換しています。

2-4 器材は患者ごとに滅菌パックを開けて使用している

口腔内で使用する歯科器材などは、感染リスクに応じた消毒・滅菌作業を行っています。個々に使用する者ですから、患者さんをユニットに誘導してからチェアサイドで開封して使用します。ミラーやピンセットなどの基本セットだけでなく、最近話題になっている歯を削るハンドピース類もきちんと滅菌されて交換されているかが重要です。

滅菌パック

切削器具滅菌パック

2-5 待合室や診療室に歯科外来環境施設基準の掲示している

「歯科外来診療環境体制加算」の届出を行っている歯科医院は、待合室や診療室内に施設基準の届出や医療安全対策に対する取り組み等の掲示しています。もし掲示が確認できず、直接主治医やスタッフに聞くのがためらわれるのであれば、少し手間はかかりますが、管轄の厚生局のホームページにて、各医院の届出されている施設基準が検索閲覧できます。モヤモヤとした不安を抱えながら通院するより、少しの手間を惜しまず検索してみてはいかがでしょう。

これから通院を始めようとしている方も安心して通院できる環境を探す手掛かりにしてみて下さい。

歯科外来環境施設基準

“歯科外来診療環境体制とは?”

院内の感染予防対策に取り組んでいる医院は、管轄の厚生局に「歯科外来診療環境体制加算」という施設基準の届出をしています。この施設基準をクリアするには下記が必要となります。

  • 医療安全対策に関する所定の研修を修了した常勤歯科医師が1名以上いること。
  • 口腔内で使用する器材等を患者ごとに交換し、専用の機器を用いた洗浄・滅菌処理を徹底するなど、十分な感染症対策を行っていること
  • 歯科衛生士が1名以上いること。
  • 緊急時の初期対応が可能な医療機器が設置されていること。
  • (AED、酸素ボンベ及び酸素マスク、血圧計、救急蘇生セット、パルスオキシメーター

パルスオキシメーター:脈拍や血中酸素飽和度を測定する機器

パルスオキシメーター

  • 診療における緊急時に円滑な対応ができる保険医療機関との連携体制が確保できている
  • 感染症患者に対する歯科診療について、ユニット(診療台)の確保等を含めた診療体制を確保していること

3.歯科医療における滅菌・消毒・洗浄の実際

感染リスクの程度及び対象物に応じて、滅菌・消毒・洗浄処理を行います。滅菌・消毒・洗浄それぞれの定義は下記の通りです。

滅菌・・・すべての微生物を物理的・化学的手段を用いて殺減させるか、完全に除去し無菌状態をつくること

消毒・・・人体に有害な微生物の感染を物理的・化学的手段を用いてなくすか菌量を少なくすること洗浄・・・流水と洗剤等を用いて目視可能な汚染を洗い除くこと

3-1 洗浄・すすぎ→熱水消毒→乾燥まで行うウォッシャーディスインフェクター

耐熱性のあるほぼすべての金属類、ゴム製品の大部分、ガラス器具、プラスチック製品が使用可能な医療用の食器洗い乾燥機です。たんぱく質が熱変性を起こさない程度の微温湯を強力水流で噴射して洗浄し、さらに高温ですすぐことで微生物を除去します。一般的に臨床現場で行われる一次洗浄(ブラシなどを使用した水洗い)と比べ、洗浄効果が高く、医療従事者が洗浄時に器材で手指を傷つける等による感染リスクも回避できます。

ウオッシャーディスインフェクター

ウオッシャーディスインフェクター

3-2 高圧蒸気滅菌法(オートクレーブ クラスB&N)

耐熱性のあるほぼすべての金属類、ゴム製品の大部分、布製品、ガラス器具、一部のプラスチック製品が対象物です。オートクレーブには事前真空サイクル式と重力置換式とがあり、後者は蒸気圧を利用して滅菌を行う一般的なタイプ。前者がオートクレーブ クラスBで、滅菌前にチャンバー内(滅菌器の中)で真空と蒸気の注入を交互に繰り返すことで、筒状の内腔物内部や多孔性(細かい穴のあいた構造)材料の残留空気を取り除き、蒸気を細部まで行きわたらせることができます。滅菌パックに包装されたハンドピース(歯を削る時などに使用する器材)や長いチューブ、細かい器材など、様々な種類や形状のものを効率よく滅菌することが可能です。

オートクレーブ滅菌器

3-3 使用後の器材は洗浄滅菌工程を経て次の患者さんに使用します

器材をどのように処理して次の患者さんに使用していくのか、器材の滅菌処理工程を説明します。

①処置後の使用器材分別

紙コップなどの廃棄するものと消毒・滅菌して使用するものに分別します。

②薬液での浸漬消毒

乾燥すると血液やその他の付着物は落ちにくくなるため、薬液に浸けておきます。

③超音波洗浄

たんぱく質・血液を除去します。

④ウォッシャー消毒洗浄

物理的作用により、器材に付着した汚染物を除去します。

⑤滅菌パックに包装

器材を滅菌パックで個包装します。ほとんどの処置に使用するミラーやピンセットなどは基本セットとしてまとめてパックに包装します。

⑥高圧蒸気滅菌器(オートクレーブBクラス)

滅菌パックに包装した器材をオートクレーブにて滅菌処理します。

⑦滅菌処理後はそのまま保管

患者さんに使用する際にチェアサイドにて開封します。

3-4 設置器材は薬液で清拭消毒

ユニット(診療台)などの取り外しができない大型の器材などは使用した部分等を薬液により清拭消毒します。消毒箇所としては、先生やアシスタントが使用した(触れた)ユニットテーブルやライト、患者さんがうがいをするスピットン部などです。赤く染められた部分が診療中に医療従事者が触る可能性がある箇所です。処置中は汚染されたグローブで色々な場所に接触しないよう注意して診療にあたります。

歯科医院の汚染範囲

3-5 ユニット給水系内の消毒システムで細菌が増えるのを防ぐ

治療で歯を削ったり歯石を取ったりする際には、ユニット給水系から口腔内に注水しながら処置が行われます。処置の前後にうがいをする水もユニット給水系からのものです。もともとは水道水からの給水ですが、歯科用ユニットの構造上、給水系の長いチューブ内に水が停滞することにより細菌が繁殖しやすい環境になります。その予防策としてユニット消毒を行うことで、水の中の細菌の増殖を防ぎます。

歯科ユニット給水消毒システム

株式会社モリタHPより 詳しくはこちら

水道水は衛星を保つために遊離塩素濃度が維持されていますが、送水や長時間の滞留によってその濃度が低下します。ユニット給水消毒システムは遊離塩素濃度を高めることにより、ユニット給水内の細菌繁殖を防ぎます。

ユニット給水系消毒システム

4.まとめ

院内感染対策(インフェクションコントロール)とは、患者さん、医療従事者の両方を守る大切な対策です。またグローブの着用・患者ごとの交換、手洗い・手指消毒の徹底、感染リスクに応じた消毒・滅菌作業等をすることで使用器具や医療従事者を介した交差感染を防止しています。このような医療安全対策を行っている医院は管轄の厚生局に施設基準の届出を行い、院内にもその旨の掲示を行い患者さんに周知を図っています。新たに歯科医院に通院予定の方は、安心して通院できる環境を見つける参考にしてみて下さい。

 

 

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