歯科衛生士６ THE JOURNAL OF DENTAL HYGIENIST
入れ歯を使用しているみなさんは、洗浄剤をどこで購入していますか？
義歯洗浄剤は、スーパーやドラッグストアなどの量販店、歯科医院、さまざまな場所で入手ができます。以前は歯科医院でしか購入できなかった「歯科専用」タイプも、インターネットで簡単に購入できるようになってきています。「歯科専用」の多くは、歯科医院で販売されることを前提として、使用するにあたり、歯科医師・歯科衛生士の義歯清掃指導のもとに行われることを想定しています。市販用義歯洗浄剤と比べて、有効成分が強いもの、特殊成分が配合されているもの、入れ歯の材料によって使用を制限されたものもあります。
ここでは、「歯科専用」洗浄剤について、汚れのタイプ別おススメ商品と、お手入れのポイントについてお話していきたいと思います。
目次
１．除去すべき汚れは主に３つ
入れ歯の清掃で、除去すべきものは主に３つあります。お口の中と同様に取り外した入れ歯には、
①デンチャープラーク、②歯石様沈着物、③色素（着色）が付着しています。
デンチャープラークとは、1gあたりに1011～1012の微生物を含むバイオフィルムで、そのデンチャープラークが落とされず石灰化が進むと歯石様沈着物となります。色素は入れ歯の表面だけの付着ではなく、デンチャープラークや歯石様沈着物の上に外因性色素（ワイン・コーヒー・お茶・タバコのヤニ等）が付着したものを指します。
１－１ まず先にブラシで洗浄
入れ歯の清掃は、義歯用ブラシで行う機械的清掃と義歯洗浄剤を使用する化学的清掃の両方で成立します。基本はまず先に行う義歯用ブラシによる機械的清掃です。義歯洗浄剤の化学的清掃は、義歯用ブラシによる機械的清掃を補うものとして行います。義歯洗浄剤を使用すれば、義歯用ブラシで清掃しなくても良いわけではありません。義歯洗浄剤を使用する前には必ず、義歯用ブラシで取り除けるものを除去し、ブラシでの清掃で取り除けないものを義歯洗浄剤で除去していくのが義歯洗浄の基本です。
サンスター義歯用歯ブラシ
画像：サンスターHPより
白いブラシで義歯の人工歯や床部分を清掃し、黒い硬めのブラシで部分義歯のクラスプ（金属）部分を清掃します。
義歯用ブラシの機械的清掃時に使用することで、ニオイもスッキリ!!爽快感が得られます。
ポリデントⓇフレッシュクレンズ
１－２ セルフケアでの義歯洗浄には限界がある
お口の中のお手入れ同様に、入れ歯にもセルフケアとプロフェショナルケアがあります。セルフケアは、先にお話しした義歯用ブラシによる機械的清掃と義歯洗浄剤による化学的清掃です。セルフケアでは、デンチャープラークは容易に落とすことができますが、その他の歯石様沈着物や色素は、軽度なものであれば義歯洗浄剤を使用することにより除去できますが、強固な歯石や色素（着色）は、歯科医院でプロフェショナルケア用の義歯洗浄剤を使用して除去してもらう必要があります。義歯洗浄剤は必ずしも何でも落とせる万能選手ではありません。セルフケアで落とせない強固な汚れにならないように、食事毎のセルフケアで入れ歯の汚れを取り除きましょう。
２．付着した汚れごとに有効なおススメ義歯洗浄剤
付着している、落としたい汚れによって義歯洗浄剤を使い分けましょう。
２－１ 毎日のお手入れにおススメ義歯洗浄剤
まずは日常遣いにおススメの義歯洗浄剤を紹介します。こちらは総義歯に適しています。
カンジダ菌を溶かして除去する「ロートピカ」
画像：ロート ピカ HPより
入れ歯の清掃不良によっておこる口腔カンジダからお口を守ります。2種類の洗浄剤が入っていて、週6日は青いピカを使用。デンチャープラーク、ニオイ、義歯性口内炎の原因となるカンジダ菌を溶菌除去します。
画像：ロート ピカ HPより
1週間に1回赤ピカを使用。活性酸素の顆粒で、コーヒー・お茶・タバコのヤニ等の目に見える汚れや義歯特有のニオイを除去します。
画像：ロート ピカ HPより
クラスプ（金属）が付いている部分義歯にはこちらがおススメ
フィジオクリーン キラリ
画像：ニッシン フィジオクリーンキラリHPより
安全性の高い二酸化チタンを配合。ヤニや茶渋などの着色汚れやカンジダ菌を洗浄・除菌します。義歯を痛めない中性タイプとなっているため、金属床義歯やチタン・パラジウム合金・リテーナーにも安心して使用できます。
≪使用方法≫
① 流水化でブラシなどを用い、おおまかな汚れを落とします。
② 義歯洗浄容器に40℃程度のぬるま湯150ml、キラリを１錠入れます。
③ つづけて義歯を容器に静かに入れます。
④ 30分以上漬け置き洗浄します。
⑤ 洗浄後、よく水洗してから使用しましょう。
２－２ 歯石様沈着物が付着した場合におススメの洗浄剤
デンチャープラークが歯石になってしまったら、専用の洗浄剤がおススメです。
フィジオクリーン 歯石くりん
画像：ニッシン フィジオクリーン歯石くりん HPより
義歯についた歯石をご家庭で除去できる義歯洗浄剤です。pH2.5の酸性でゆるやかに歯石を溶かし除去します。また、義歯性口内炎の原因となるカンジダ菌やその他細菌の除菌、義歯表面のヌメリやヤニ汚れなどにも優れた効果を発揮します。無香料。錠剤タイプ。
歯石くりん 歯石溶解映像
３．義歯に付着する汚れの分類
汚れには、水に溶ける「水溶性汚れ」、有機溶解剤に溶ける「油性汚れ」、水にも有機溶解剤にも溶けない「固体汚れ」に分類できます。付着している汚れによって洗浄方法が変わってきます。いずれの汚れも、付着してから時間が経過するごとに取り除くのが困難になります。よって、入れ歯は毎日こまめにお手入れすることが大切なのです。
４．義歯洗浄剤の効果を最大限に発揮させる5つのポイント
入れ歯の洗浄は、義歯用ブラシによる機械的清掃と、義歯洗浄剤による化学的清掃と合わせて1セットです。
義歯用ブラシで落とせる付着物を除去した後、効果的に洗浄剤が働くよう、使用のポイントを説明していきます。
４－１ 洗浄剤を使用する前に取れる汚れはしっかり落とす
義歯洗浄剤に漬ける前に、義歯表面に付着している汚れを、義歯用歯ブラシで前もって除去しておきましょう。
４－２ 洗浄剤をぬるま湯に溶かす
水温が高めの方が洗浄成分がはたらき、汚れも洗浄液中に溶けやすくなります。冷水ではなくぬるま湯（40℃前後）に溶かすのが効果的です。ただし、温度が高すぎると（約50℃）義歯材料の変形等の不具合が生じる可能性があるため、ぬるま湯（40℃前後）を守って使用してください。
４－３ 水量を守る
義歯洗浄剤の効果を発揮させるためには、成分の濃度が適切であることも大切です。濃度が変わらないように、義歯洗浄剤を溶かす水量は使用方法どおりに守りましょう。
４－４ 洗浄時間を守る
洗浄力を発揮するためには一定の時間がかかるため、短すぎると汚れは取り除けません。逆に長時間浸漬し続けると、義歯の材料への負担が大きくなります。義歯洗浄剤の浸漬時間は、使用方法どおりに守りましょう。
４－５ 洗浄後はしっかりすすぐ
義歯洗浄剤から取り出した後、丁寧にすすぐことで義歯表面の汚れを確実に除去することができます。すすぎが不十分だと、義歯材料への負担や汚れが付着しやすくなるので、浸漬後はしっかり水洗いしましょう。
５．まとめ
入れ歯の清掃は、義歯用ブラシによる機械的清掃と、義歯洗浄剤による化学的清掃がセットです。どちらがかけてもきちんとした清掃は行えません。洗浄効果を最大限発揮できるように、義歯洗浄剤の使用方法をしっかり守り、大切な入れ歯を清潔に保ち、お口の中の健康を維持できるようにしましょう。
