最近アゴを開けるたびに「カクッ」と音がしたり、痛みがでることがある…。
たまに口を大きく開けられないことがある。
こうした症状に心あたりのある方、もしかしたら「顎関節症」かもしれません。
実は、顎関節症は日々の生活の中の何気ないクセが原因となって引きおこされることがあります。
こうしている間も頬づえをついたり、足を組んで座りながらこの画面を見てはいませんか?
そのクセ早めに治す必要があります。
この記事では、顎関節症の主な原因とセルフケア方法についてご紹介しています。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
1.まずは「顎関節症」かどうかセルフチェック
顎関節症とは、口の開け閉めが困難になったり、アゴを動かすと音が鳴ったり、アゴやこめかみの辺りに痛みや違和感を感じるようになる疾患をいいます。症状は主にアゴの周りの関節や筋肉にあらわれますが、全身のさまざまなところに痛みや不具合をともなってあらわれることもあります。
《顎関節症セルフチェック》
それぞれの項目の回答番号を足したとき、9点以上になると顎関節症の疑いがあります。また質問②で「5.いつもある」と回答した方も顎関節症の可能性があります。
質問① 口を大きく開いたとき、人差し指から薬指を並べた3本指を縦にして入りますか?
1.すっと入る 2.ほぼ問題ない 3.どちらともいえない 4.やや困難 5.全く入らない
質問② 口を大きく開け閉めした時、あごの痛みがありますか?
1.全くない 2.たまにある 3.どちらともいえない 4.しばしばある 5.いつもある
質問③ 口を大きく開いたとき、まっすぐに開きますか?
1.いつもまっすぐ 2.たまに曲がる 3.どちらともいえない 4.しばしば曲がる 5.いつも曲がる
質問④ 干し肉、するめ、タコなど硬いものを食べるとあごや顔が痛みますか?
1.痛まない 2.たまに痛む 3.どちらともいえない 4.しばしば痛む 5.いつも痛む
(「顎関節症疫学調査に用いる質問項目の選択とその妥当性検討『日本顎関節学会雑誌』2007,杉崎正志ら)
2.顎関節症の原因はコレだった!
顎関節症の主な原因には大きくわけて、
①歯やアゴに負担をかける動きやクセ
②精神的ストレスによる筋肉の緊張
③外傷等による顎関節の損傷
の3種類があげられます。
2-1 アゴに負担をかける「歯ぎしり」のクセ
上下の歯を左右にこすりつける、歯を強くくいしばる、上下の歯を縦にカチカチあわせる…これらはすべて「歯ぎしり」に分類される動きです。歯ぎしりをすると咀しゃく筋といわれる部分に疲れが蓄積し、顎関節に負担を与えて顎関節症を引き起こします。
日中重いものを持つときや集中しているとき、夜寝ている間に歯ぎしりをしている心あたりはありませんか?
歯ぎしりは顎関節症の原因になるだけではなく、虫歯や歯周病のリスクを高めることもあります。
くわしくは、『歯だけじゃない!体にも悪影響を与える「歯ぎしり」の正体とは』をご覧ください。
2-2 片方の歯ばかりでものを噛むクセ
片方の歯ばかりを使ってものを噛んでいると、噛むときの力が片方にばかりかかってしまいそちら側の筋肉に負担をかけることになります。片側だけ使って噛むのは、無意識のクセによるものもあれば反対側の歯になんらかの異常があるためにそちら側の歯を使うことをさけていることもあります。
例えば、以前つめた金属やプラスチックがとれかけていたり、治療中の歯で噛むのをさけている、抜歯をしたきりブリッジや入れ歯をいれておらず歯がなく噛めないといったことがあります。
2-3 アゴ周辺に負担をかけるしぐさ・クセ
日常的に何気なく行っている動作が実はアゴに負担をかけていることがあります。心あたりがあるクセはありませんか?
[顎関節症を引きおこす日常のクセ]
頬杖・猫背・うつぶせ寝・足組み・アゴと肩の間に受話器をはさんで話す・テレビを観ながら食事するなど、顔を横に向けたままものを噛む…など
ついやってしまいがちな頬杖は、アゴを下から圧迫する力がかかるためアゴの片側にばかり負担を与えます。
うつぶせ寝は頭の重みがそのまま顎関節にかかってしまうためよくありません。今日から気をつけられるクセは意識して直していきましょう。
2-4 精神的ストレスによる筋肉の緊張
過度の精神的ストレスは口周りの筋肉を緊張させ疲れを蓄積させるだけではなく、歯ぎしりの原因にもなりえます。また、顎関節症はうつ病との密接な関係があります。これは顎関節のゆがみが頭蓋骨にまで及び、アゴの骨を変形させ、場合によっては自律神経に悪影響を与えることがあるためです。
2-5 外傷による関節の損傷など
アゴや頭を強くぶつけたために顎関節や靭帯を傷つけてしまい、それが原因で顎関節症になることがあります。また、歯医者さんの治療で長時間アゴを開けていたり、カラオケや楽器演奏などで口周りの筋肉に負担をかけたりすることで顎関節症になることがあります。
2-6 被せ物の噛み合わせの高さがあっていない
現在お口の中に入っている金属やセラミックの被せものや、小さな虫歯を治したときに入れた白いプラスチック(レジン)部分の噛みあわせがあっておらず、必要以上に一部の上下の歯が強く噛みあってしまうことがあります。噛んだときの圧力はその部分に集中しますので、歯にかかった負担が蓄積してアゴがだるくなったり痛みがでたりすることがあります。
こうした噛み合わせの異常を感じているときは歯医者さんに行き、どの部分が当たってしまっているのかチェックをしてもらい、被せ物の一部を削ってもらうことで解決できます。
3.自宅でできる顎関節症セルフケア
顎関節症による症状を緩和し、悪化させないために自宅でできるケア方法があります。初期段階の顎関節症(音が鳴るだけなど)であれば生活習慣の改善やセルフマッサージで症状を軽減することができます。歯医者さんでも初期段階の顎関節症患者さんには同様の指導がおこなわれます。
3-1 上下の歯をあたらないようにして口を閉じる
口を閉じているときに上下の歯があたっている人がいます。これは正常な状態ではありません。本来安静にしているときのお口の中は、上下の歯の間に少しすきまが開いています。無意識に歯をくっつけているなと思ったら、「唇と閉じ、上下の歯を離し、顔の筋肉の力を抜く」(TMDマントラ:顎関節症呪文)と頭の中で唱え、このようにしましょう。
3-2 口を大きく開けすぎない・硬いものはさける
口を大きく開けると顎関節症の症状が悪化することがあります。あくびや会話の最中もできるだけ口は大きく開けすぎないように意識しましょう。また、するめやタコなどの硬いものを食べるのもよくありません。できるだけやわらかいものを食べるようにしましょう。さらに、食べ物を小さく切って口に運ぶことで口を大きく開ける必要がなくなります。
3-3 アゴに負担をかける習慣を治す
猫背や足組みなどのクセはアゴだけでなく、姿勢にも悪影響を与えます。これらは自覚なく行っていることが多々ありますので、目につくところにメモなどを貼って意識するようにするのもよいかもしれません。自分だけで治すのが難しそうであれば、整体などでプロの指導を受けるのもよいでしょう。
3-4 アゴのマッサージで血行をよくする
アゴ周辺の筋肉のマッサージをすることで血行をよくし、筋肉のこわばりをとることができます。これにより、痛みをやわらげることができます。強すぎる力でおこなうマッサージはかえって顎関節や周辺の筋肉への負担となるので、できるだけやさしい力でおこなうようにしましょう。また、非常に強い痛みを感じている間はマッサージはさけましょう。
マッサージの方法は、下のイラストのようにこめかみのうしろの辺りから咬筋(耳の前の頬、歯をくいしばったときにふくらむ場所)にかけて痛みがないくらいの強さで人差し指・中指の指先で揉みます。入浴中など毎日5分くらいを目安に行いましょう。温かいタオルなどで筋肉をあらかじめ当てておいてからおこなうのも効果的です。
画像:小林馨 編著『顎関節症のみかた』
4.まとめ
何気ないクセも日常的に続けていると顎関節症になる可能性があります。深刻な症状を引き起こす前に改善できるよう意識してクセを治すようにしましょう。アゴのマッサージなどは今日からできるものですので、ぜひ実践してみてください。