普段はあまり意識することのない「親知らず」の歯。
周りに親知らずを歯医者さんで抜歯したっていう人もいるけれど、親知らずって絶対に抜かなくちゃいけないの?…と気になったことのある方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、親知らずの基本的なことについて気になるギモンにお答えします。
目次
1.「親知らず」ってどんな歯?
「親知らず」とよばれる歯は、左右上下のそれぞれ中心の前歯から数えて8番目に生えてくる歯です。
一番奥に生えてくる歯のため、鏡ではその姿をしっかりとは見にくいのですが、正式名称が「第三大臼歯」ともよばれており、その1個手前の7番目と同じように大きめサイズの歯です。
智歯(ちし)という名称でよばれることもあります。
親知らずは左右上下のそれぞれに1本ずつ、最大で計4本生えてきます。
乳歯(子どもの歯)ではなく永久歯(大人の歯)であり、親に知られることなく生えてくる歯だと言えることから「親知らず」と言われています。
2.親知らずに関するギモン
抜歯する人も多いみたいだけど、大切な歯なのになぜ抜歯しちゃっても大丈夫なの?と気になる方もいらっしゃると思います。
他の歯とは違って少し特殊な感じのする親知らず、基本的な情報についてお教えします。
2-1 なぜ生えてくるの?
「抜いても問題ないような歯なのに、どうして生えてくるの?」と感じてしまいますよね。
親知らずが生えてくる理由には、大昔の人の食生活が関係していると考えられています。
大昔は食べ物が硬い木の実や果物、動物の肉などが主でした。
そういったものを噛みきって歯でよくすり潰す食生活であったために、当時の人間の歯とアゴの骨は頑丈に発達したといわれています。
よく噛むことで口周りの組織が発達し、アゴもしっかりしていたために8番目の歯(親知らず)が生えてくる口の中のスペースもしっかりと確保されていました。
当時は「抜いてもかまわない歯」ではなく、咀嚼のために「必要な歯」だったのですね。
しかし、その後弥生時代あたりから人々は柔らかい食べ物を摂るようになり、硬いものをあまり食べなくなったアゴは発達が悪くなり、骨も退化したことでアゴが細くなっていき、まっすぐ生えるスペースを失った親知らずは斜めに生えてきたり、少しだけ頭を出して生えるようになりました。
2-2 みんな必ず生えてくるの?
実は、これには個人差があります。
4本すべてが生えてくる人もいれば、たとえば右上の親知らずだけが生えてきていてその他の3本の親知らずは歯ぐきの中に埋まったままの人います。
また、そもそも親知らずがない人(歯ぐきの中にも埋まっていない)もいます。
自分は親知らずがないタイプの人だ、と思っていても歯医者さんであるときレントゲンを撮ってみたら、歯ぐきの中に埋まっていたという人もいるでしょう。
また、一番奥で鏡では見づらく、舌の届きにくい位置のために「実は小さく頭を出して生えているけれども気づいていない」という人もいるかもしれません。
生えてきているからよくない、生えてこないから不安…ということはなく、それぞれの体質として心配しなくて大丈夫です。
2-3 生えてくるとしたらいつ頃?
親が知らぬ間に生えてくる歯、ということで幼少期ではなくもっと成長してから生えてきます。
主に10代後半から20代前半に生えてくることが多いのですが、まれに30~40代で生えてくるケースもあります。
2-4 生えてきたら放っておいて大丈夫?
親知らずは生えてくること自体には害はないのですが、一番奥に生えていて目も歯ブラシの毛先も届きにくい場所ということがあり、「歯磨きがしっかりできていないことが多い」という注意点があります。
まっすぐと正常な向きに生えていて、反対側(右上なら右下)の親知らずときちんと噛み合っている場合や、多少斜めに生えてきていても痛みや腫れがなかったり、手前の歯や周囲の組織に悪影響を与えている様子がない場合は無理に抜歯しなくてもかまいません。
しかし、のちのちの痛みや腫れのトラブルを回避するために先に抜いておきたいと思う方はかかりつけの歯医者さんで抜歯の相談をするといいでしょう。
親知らずの抜歯は、個人差や親知らず自体の生え方にもよりますが、抜歯後に腫れたりすることがあります。
イベントごとや出産などに影響を及ぼさないように、生活の中で抜歯するタイミングを事前に考えておくことが大切です。
2-5 歯ぐきの中に親知らずが埋まったままで大丈夫?
埋まったままであること自体には害はありませんが、埋まった状態で隣の歯を歯ぐきの中で圧迫していたり、親知らずが埋まっているところの歯ぐきに出来物ができたりなど、何かしらのトラブルがある際には対処が必要になることがあります。
2-6 親知らずがたまに痛む。なぜ?抜歯すべき?
詳しい原因は歯医者さんでレントゲンを撮ったり、検査をする必要がありますが、主な理由には「しっかり歯磨きができていないから」というものがあります。
歯ブラシの毛先が届きにくいと先ほど言いましたが、一般的な形状の歯ブラシだとどうしても一番奥のせまいところに毛先を届かせるのは難しく、また親知らずが斜めだったり頭だけが生えている場合には、手前の歯よりも低い位置にあるため、さらに歯磨きの難易度が高まります。
▲まっすぐ生えている親知らず
▲斜めに生えている親知らず
▲真横に生えている親知らず
画像:ライオン歯科衛生研究所
そうしてしっかりと歯磨きができていないと、溜まってしまった汚れによって歯ぐきが腫れて痛んでしまったり、もっと進行して虫歯になってしまっているために痛みが出てしまうことがあります。
抜歯すべきかどうかは検査の結果にもよりますが、歯医者さんの専用の器具で親知らず周辺の歯ぐきを洗って薬を処方することで収まるようであれば、その後も経過を見守ることとし、抜歯はしないこともあります。
しかし、親知らずが虫歯になってしまった場合は、たとえば神経の治療まで必要になるレベルまで虫歯が進行してしまっていると、治療器具を口の奥のほうまで入れることが困難であったりもします。
神経までは到達していない虫歯であったとして、治療をしてもやはり歯磨きのしづらさは変わらないため、しばらくしたらまた虫歯が再発してしまうケースもあります。
また、親知らずの虫歯がその手前の歯にまで悪影響を与えてしまうこともあります。
いずれにせよ、痛みや腫れを感じた初期段階で早めに歯医者さんを受診し、抜歯について相談したり、抜歯しないと決まった場合はしっかり磨ける歯磨き方法を教えてもらう必要があります。
定期的なスケーリングに通うことも大切ですね。
2-7 親知らずはどうやって磨けばいい?
●歯ブラシの選び方
口の奥まで入れても動かしやすく、苦しくなりにくいのは歯ブラシのヘッド部分が薄いものです。
極薄ヘッドの「クリニカアドバンテージ ハブラシ」
画像:クリニカ
●歯ブラシを使った磨き方
口をあけたら横にイ~と広げ、歯ブラシを斜めから口の中に入れます。
並んでいる歯に対して、垂直に入れるようなイメージです。
感覚だけではうまく磨けているかわからないため、口の奥が見える明るいところで手鏡を見ながら磨くようにしましょう。
画像:ライオン歯科衛生研究所
●その他にあると便利な歯磨きグッズ①:タフトブラシ
毛が長細く生えている歯ブラシです。
手前の歯よりも一段低くなっている親知らずはもちろん、たとえ普通にまっすぐ生えている歯であっても奥側(喉のほうの面)は普通の歯ブラシでは到底届かないため、こういった形状の歯ブラシが必要になります。
画像:ライオン歯科衛生研究所
▲奥側の面をうまく磨くことができるタフトブラシ
▲頭だけが低く生えている歯にもしっかり毛先が届く
▲親知らずに限らず、ズレて生えている歯など普通の歯ブラシでは届かないところも、小回りが効く歯ブラシなので、1本持っておいて損はありません。
画像:㈱オーラルケア amazon
●その他にあると便利な歯磨きグッズ②:Y字フロス
手前の歯とあいだに入ってしまった食べカスなどを取りたい場合は、フロスの出番です。
フロスには30cmほどに切った糸を両ひとさし指に巻きつけて使用する糸タイプのフロスもあるのですが、指や握ったこぶしが親知らずのところまでは狭くて入らないため、親知らずをお掃除するためにはY字の持ち手があるタイプのフロスがオススメです。
画像:クリニカ
3.まとめ
普段は意識することのない親知らずですが、歯磨きなどをついおろそかにしてしまうと、思いがけないトラブルの種になることがあります。
自分では現在の自分の親知らずの状況を正確に判断することは難しいため、気になった方は歯医者さんに行ってみましょう。
痛みや腫れがなくとも、検診のために定期的に歯医者さんに行くことがお口の健康を保つ秘訣のひとつです。