ペースメーカー装着患者さんへの超音波スケーラー使用の可否と、安心してメインテナンスを受けていただける使用器材について

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こんにちは 歯科衛生士Sです。
歯科医院には健康な人だけではなく、毎日様々な持病をかかえた患者さんが来院されます。
歯科衛生士である私の仕事は、定期検診に来院された患者さんのメインテナンス業務(口腔内のチェックやクリーニング)中心なのですが、来院される患者さんの既往歴(過去にかかった病気)や現病歴(今かかっている病気)や生活背景等を踏まえたうえでの対応が求められます。
今回は、ペースメーカーを装着している患者さんのメインテナンスの対応についてお話ししていきます。

1.ペースメーカーとは

ペースメーカーは、徐脈性不整脈(脈が遅くなるタイプの不整脈)の治療に使用される装置で、心臓の電気信号を24時間監視し続け、心臓のリズムを整える必要がある場合に電気刺激を送って治療をする装置のことです。

画像:フクダ電子HPより

ペースメーカーは、日常の生活圏に飛び交う様々な電磁波による電磁干渉の影響を受けて動作に異常をきたす恐れがある装置です。
日常生活で患者さんが注意しなければならないこととして下記のようなことがあげられます。

① IH調理器等の製品をペースメーカー本体に近づけない

② 磁気治療器や医療用電気治療器など、体に通電したり、強い電磁波を発生する機器を使用しない


③ 通信機器(携帯電話・PHSなど)はペースメーカー植込み部位から15㎝以上離して携行する

④ 磁石または磁石を使用したものをペースメーカー植込み部位に置いたり、胸ポケットに入れない

⑤ 店舗などに設置の電子商品監視機器(盗難防止装置など)には近づきすぎないよう立ち止まらずに速やかに通過する


画像:フクダ電子 HPより

2.歯科治療で注意すべき使用器材

ペースメーカーを装着している患者さんも、健康な人と同様に必要に応じた歯科治療を行います。
歯科で使用するレーザーや、超音波スケーラーなどは器材取説注意書きにはペースメーカー患者さんへの使用は禁忌となっています。学校の講義でも歯石除去等で使用する超音波スケーラーは使用禁忌と教えられました。
実際の医療現場ではどうなっているのでしょうか?


ペースメーカー使用患者における歯科用電気機器の厳密なガイドラインはないそうです。
超音波スケーラー等は、動作時に漏洩電磁界測定値にペースメーカーの動作に障害を発生させる可能性が考えられる値が検出されましたが、実際の診療に使用する距離で測定すると、ペースメーカーの動作に影響を与えない程度に減弱することが確認されたことより、電子機器と心臓ペースメーカーの距離が重要であるとが日本磁気歯科学会雑誌で発表されています。
昨年末に島根県歯科医師会で開催されている救命救急研修会の質疑応答でも、一般的には使用禁忌となっていますが、使用する口腔内とペースメーカー本体との距離があるため、臨床上の影響はないと記載があります。
実際にペースメーカー患者の歯石除去に超音波スケーラーを用いていますが、電磁波を発生しないエアスケーラーを使用する方が望ましいかもしれない、とも記載がありました。

3.ペースメーカー患者さんに安心して受けていただけるメインテナンス器材

臨床上問題はないとされてはいますが、安心して口腔内の健康管理を任せていただくために、ペースメーカー患者さんに使用が問題ない、メインテナンス器材を紹介していきます。

3-1 エアースケーラー

エアースケーラーは、超音波スケーラー同様に、音波による振動を利用してバイオフィルムや歯石を除去する器材です。手用スケーラーと比べて、短時間で効率よく歯石等を取り除くことができます。硬く強固な歯石を除去するには、超音波スケーラーの方が優れていますが、電磁波を発生しない面から、ペースメーカを装着している患者さんには、このエアースケーラーの使用が適していると言えます。

画像:カボデンタルシステムズ株式会社HPより

3-2 軟組織・硬組織にも侵襲が少ないエアフロー

エアフローは、水とエアーと微細な粉末を使用してバイオフィルムや着色、早期歯石を除去する器材です。
歯肉などの軟組織や歯面への侵襲を抑えて患者さんの負担も少なく口腔内を清掃することができます。
詳しくは 定期検診から遠のいている方にぜひ体験していただきたい~エアフロー快適メインテナンス~をご覧ください。

画像:EMS Japan 株式会社 HPより

3-3 注水あり・なし対応ブラシ専用ハンドピース「ユリー」

ユリ―は、注水下で水流と振動の音波効果(サブソニック振動)によって起きる泡により、バイオフィルムの破壊や洗い流し作用を生かしたプラーク除去が行えます。直角に近いヘッド角度によって、通常器具が届きにくい奥歯の裏側など、様々な箇所にアクセスしやすい仕様になっています。注水せずにポリッシングペーストを使用した着色除去等にも使用できます。

画像:YOSHIDA HPより

4.まとめ

歯科医院には色々な既往・現病歴をお持ちの患者さんが来院します。私たちはこれからも患者さんに安心して通院していただけるように「安全で確実な歯科診療」を提供して参ります。
お口の中でお困りのことがありましたらぜひご相談ください。

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