歯医者に行って大きな写真をとったときや、歯の健診をしたときに、歯が少ないかもしれないと言われたかたはいませんか?
歯が生まれつき無い「先天欠如」というものがあり、ここ60年で増えていると言われています。
歯が少なくなってしまうのは何故か、少ないのなら治療法は何があるのか、説明していきたいと思います
目次
1.歯の数が少ない子供は10人に1人いる
歯のもととなるのは「歯胚(しはい)」というもので、これができるのはお母さんのおなかの中にいる時になります。胎生7週には歯胚形成が始まり、徐々に石灰化をします。
歯が生まれつきない先天欠如は、この歯胚というものが何らかの理由でできなかったときにおこります。
原因は、栄養障害、炎症、外傷、大脳の進化増大における顔面頭蓋の相対的な収縮がおこり歯・顎に退化傾向が発生したという進化の過程によるもの、遺伝的な突然変異など考えられるといわれています。
2.無くなりやすい歯の種類
前から5番目(第二小臼歯)の歯と前から2番目(側切歯)の歯がなくなる確率が高く
- 下顎第二小臼歯
- 下顎側切歯
- 上顎第二小臼歯
- 上顎側切歯
の順番で欠損しやすくなります
患者さんを診ていると大体この2番目と5番目の歯が無い人が多いのですが、まれに一番奥の歯(前から7番目の歯)や犬歯がない人も見受けられます。
3.歯の先天欠如における4つのトラブル
それでは、歯がないと一体どういった困ったことが起こるのでしょうか
主に4つあり、順に説明していきます
3-1.かみ合わせがおかしくなる
適切な処置がされないと、隣の歯が倒れてきたり反対側の歯が出てきてしまい、かみ合わせがおかしくなります
3-2.虫歯や歯周病の原因になる
適切な処置がされないと歯の並びがおかしくなって口を磨くのが難しくなり、虫歯や歯周病のリスクになります
3-3.顎の成長に悪影響が及ぶ
歯の先天欠如は顎骨の成長にも影響があり、上の歯がない人は下の顎が出るしゃくれの状態になることが多く、そして下の歯がない人は上の顎がでる出っ歯の状態になることが多いという報告があります
3-4.将来的に治療が必要になる
乳歯が残っているばあいは良いのですが、乳歯がぬけてしまったときは治療をすることになります。治療法は保険内ならブリッジ、保険外なら矯正・インプラントがあげられます。
いずれにしても、治療の手間と金銭的負担がかかります
※6歯異常の先天欠如のある人は、指定期間にて矯正治療が保険適応されています
また、顎の成長が未発達なときに焦ってブリッジやインプラントなどをしてしまうと、顎の成長を妨げてしまうことに繋がるので、かかりつけ医で先天欠如のあるところをきちんと管理し、計画的に治療をする必要があります
4.先天欠如の4つの治療法
4-1.ブリッジ
ブリッジとは、抜いた歯の両隣の歯を削って作った、連結した被せもののことを言います。無くなった歯の本数や場所によって、支えとなる歯の数が変わります
ブリッジのメリット
違和感があまり無い
ブリッジは歯にくっつけてしまうので、ほとんど違和感がありません。そのため、発声や噛み心地において治療前と差はほとんどありません
歯にくっついているので扱いが楽
入れ歯と違って取り外し式ではないので、寝る前にいちいち取らないといけないといった煩わしさがありません
場所によっては金属の色が見えない
(保険の)入れ歯だと金具が見えてしまうのですが、前歯だけのブリッジでしたら保険内で白くすることができます
ブリッジのデメリット
歯の削る量が多い
ブリッジは、支えとなる歯をけずって作ります。これは支台となる歯が「虫歯のない健康な歯」だとしても、歯のまわりをぐるりと削らないといけないということになります
治療のためとはいえ、健康な歯を削らないといけないのは勿体ないですよね
↑土台となる歯を図のように細く削らなくてはならない
土台の歯の神経の治療をすることがある
歯の生えている方向や位置によっては、ブリッジの治療をする前に神経の治療をしなければならないことがあります。
また、削ったあとに歯がしみて神経が死んでしまうこともあり、そういったときも神経を取らなければなりません
土台の歯の状態に左右される
ブリッジは無くなった歯の分を補わないといけないので、土台となる歯はガッチリとしていなければなりません。
そのため土台の歯がひどい虫歯や歯周病だったりすると、ブリッジを作ることができません。弱っている歯だったら前もって抜歯をするか、土台の歯を増やしてブリッジの設計の変更をする必要があります
毎日の歯磨きでブリッジを歯間ブラシで掃除しないといけない
ブリッジは構造的に汚れがたまりやすいので、虫歯にならないために丁寧なケアが必要となり、少し面倒かもしれませんね。
下の図で言うと、青い〇の部分に歯間ブラシを入れて汚れをとります
4-2.インプラント
インプラントとは、歯が無くなってしまった部分に人工的な根っこ(インプラント体)を埋め込み、その上から被せものをする治療法になります
インプラントのメリット
歯を削らなくて良い
ブリッジ、義歯は、抜いた歯の隣の歯を削らなくてはなりません。しかしインプラントはそういったことをしなくて済みます
↑隣の歯を削ることなくインプラントが入っている
骨が吸収しにくい
歯が抜けたままでいると、骨が痩せていってしまいます。しかし、インプラントをすると骨吸収の度合いを減らすことができます
よく噛める
骨に埋め込んでいるので、義歯に比べるとよく噛むことができます
インプラントのデメリット
費用が高価
保険適用ではないので治療費が高額になります
骨の状態に左右される
インプラントを埋め込む場所の骨が痩せていたり、神経に近かったり、上顎洞という空洞に近いと、インプラントをすることができないときがあります。また、インプラントをするまえに骨を増やす手術をしなければならないときがあります
治療期間が長い
インプラントを埋め込んだら、インプラントと骨がちゃんとくっつくまで時間がかかり、待たなければなりません。治療する場所や個人差もありますが、半年くらいかかることがあります。
治療後にメンテナンスに行かなければならない
インプラントは術後のケアが必要となります。毎日のお手入れにくわえ、数か月に1回歯科医院でメンテナンスをしなければなりません。
歯を磨くのがめんどうくさい、定期健診も行きたくない、あとタバコもやめられない、といった人は、インプラントはあまりお勧めできません
4-3.矯正
矯正は歯にブラケットという金属の金具をつけて、ワイヤーの力を使って歯を徐々に動かしていきます
矯正のメリット
自分の歯を削らなくてすみ、顎の成長に合わせて歯並びをきれいにすることができます
矯正のデメリット
矯正歯自費診療なので、費用が高くなります
(6歯以上の欠損なら指定期間で保険適応可能)
そして治療が長期間かかります
5.まとめ
永久歯の先天欠如は10人に1人におこっているのですが、気が付かないまま放置をしてしまうとかみ合わせに異常が起きたり虫歯になってしまったりします。わかった時点で丁寧なケアをして、将来的にどう治療していくか考えておきましょう