冷たい飲み物やアイスクリーム、冬場の歯磨き後のうがいなどでキーンとしみるあの不快な症状。
CMや広告でよく目にする知覚過敏。正式には「象牙質知覚過敏症」といいます。
では知覚過敏とは、どういうときに起きる症状なのでしょうか?
通常、歯の表面はエナメル質という生体でもっとも硬い組織で覆われていますが、そのエナメル質が削れたり歯肉が下がったりすることにより象牙質が剥き出しになり、あのしみる症状が発生します。
エナメル質には痛覚がないので痛みなどの感覚はありませんが、その中にある象牙質は痛覚があるので、覆っているエナメル質が欠損している部分や、元々エナメル質のない歯根部(歯肉下にある歯の部分)が露わになることで症状がでます。
ここではいやな知覚過敏の症状を緩和させることができる歯磨き粉をご紹介します。
目次
1. 選ぶポイントは症状を緩和する有効成分
知覚過敏のしみる症状を緩和させるには下記が必要です。
- 剥き出しになった象牙質の中にある歯髄(歯の神経)に、温度や機械的な刺激などが伝わるのを防ぐ
- 神経の興奮を鎮めて痛みの伝わりを抑える
- 欠損してしまったエナメル質部分を修復、コーティングする
このような作用のある有効成分とは、歯磨き粉の成分表表示でどんなものなのかご紹介します。
1-1乳酸アルミニウム
乳酸アルミニウムは、痛みの伝達経路である象牙質内の象牙細管(無数の穴)を封鎖する持続性のある成分です。
1-2硝酸カリウム
硝酸カリウムは、歯髄(歯の神経)の興奮を鎮めてしみる痛みの伝達を抑制する即効性のある成分です。
1-3フッ化ナトリウム
フッ化ナトリウム(フッ素)はエナメル質を修復し歯質を強化してくれる成分です。虫歯の原因菌の働きを抑制する効果もあり、知覚過敏用に限らず、ほとんどの薬用歯磨き粉に配合されていています。
~補足:薬用成分を長く効かせるためのワンポイント~
知覚過敏に有効な薬用成分が入っているのは勿論のこと、その成分を効果的に働かせるためには、より長くお口の中に有効成分を留めておくことが大切です。全体を磨き切らないうちにお口の中が泡だらけにならないように低発砲で、なおかつ剥き出しの象牙質を更に削って刺激にならないよう低研磨のものを選んで下さい。
2.知覚過敏におすすめの歯磨き粉
2-1.システマセンシティブ
即効性の硝酸カリウムと持続性の乳酸アルミニウムの2つの薬用成分でしみる痛みをダブルブロックします。
またトラネキサム酸歯配合で知覚過敏の一因でもある歯周病を予防し、歯ぐき下がりを防ぎます。これにより歯の根元が露出することよっておこるしみの痛みを防ぎます。
低研磨・低発砲のソフトペーストタイプでゆっくりじっくりブラッシングが行えます。
歯科医院専用ですが、インターネットでの購入も可能です。
2-2.シュミテクト
硝酸カリウム、フッ化ナトリウム配合。知覚過敏によるしみを防ぐ歯磨き粉ですが、歯周病ケアや
虫歯予防、知覚過敏が進行した酸蝕歯に着目したものなど、知覚過敏と同時にケアしたい内容によって選べるシリーズです。ドラッグストアなどで購入できます。
シュミテクト®コンプリートワンEX
歯がしみるのを防ぐ他に、虫歯・歯周病・口臭予防、歯を白くするなど7つの働きがひとつになったマルチな歯磨き粉です。
シュミテクト®歯周病ケア
知覚過敏と歯周病を予防する歯磨き粉。
歯周病予防としてグリチルリチン酸モノアンモニウムが歯ぐきの炎症を抑えて健康に保ちます。
フッ化ナトリウムが歯質を強化して虫歯の発生や進行を防ぎます。
シュミテクト®デイリーケア+
歯がしみるのと虫歯の発生・進行を予防し、爽やかな息にしてくれる歯磨き粉。
シュミテクト®からは、合わせて知覚過敏専用の歯ブラシもでています。
毛先が細くやわらかいシルキー毛で、ふつう・やわらかめ・超やわらかめの3タイプがあります。
2-3.チェックアップルートケア
歯肉が下がって歯の根元が露出してしまったしみの痛みには、新配合のピロリドンカルボン酸が、露出した象牙質表面のコラーゲンをコーティングして、さらにフッ素を長く留めます。象牙質にやさしい研磨剤無配合のジェルタイプの歯磨き粉です。
3. 歯科医院で行う知覚過敏改善処置
通院する時間が取れれば、歯科医院で以下の処置を行うことで、より迅速に症状を緩和させることができます。
3-1薬剤塗布
しみる痛みのある部分に症状を抑える薬剤を塗布します。この処置は数回行わないと改善が見られないケースもあります。また一度症状が治まっても、薬でコーティングされた部分が毎日のブラッシング等ではがれることにより再び症状が出る場合もあります。薬剤の塗布と並行して、自宅のホームケアでエナメル質の強化や歯の再石灰化を促進する歯磨き粉等を使用することで、コーティング剤がはがれても症状が出なくなることもあります。
3-2マウスピースの作製
知覚過敏の最も大きな要因の「歯ぎしり※」を防ぐためにマウスピースの作成をすることもあります。
※歯ぎしりで必要以上の負荷がかかることにより、エナメル質の結晶が崩れ、その部分に強いブラッシングが加わると歯頚部(歯と歯茎の境目)に楔(くさび)状のえぐれができ、温度やその他外部からの刺激を受けしみの痛みとなります。
3-3露出象牙質部分を樹脂でうめる
歯ぎしりでお話しした楔状欠損は、削れてしまった部分を樹脂で埋めることにより、しみる痛みを改善できます。虫歯と違い、歯を削ることなく、えぐれてしまっている欠損部分に樹脂を詰めるだけで終わります。
~補足:毎日のブラッシングを見直しましょう~
マウスピースの作製でもお話ししましたが、強いブラッシング圧は症状を悪化させる原因になります。通常歯の表面は硬いエナメル質で覆われていて、そのエナメル質は歯ブラシで削れるようなことはありません。しかし、必要以上の負荷(歯ぎしりやくいしばり)が加わることでエナメル質が破損し、その部分を強い力で磨くことによって結果としてエナメル質が削られてしまいます。歯科医院ではあなたのお口の中の状態にあったブラッシング方法を指導してもらえます。正しいブラッシングは、お口の中を健康に保つために大切です。ぜひ、定期的に歯科検診を受けるよう心がけてください。
4. 知覚過敏以外に考えられるしみの原因
しみる痛みの原因を知覚過敏だと思い、ホームケアだけで何とかしようと粘ってみても、改善が見られない場合は、知覚過敏以外に原因がある場合があります。
4-1歯周病による歯ぐきの痛み及び露出象牙質のしみ
進行したし歯周病により歯を支えている骨が溶けて歯ぐきが下がることにより、歯の根元が露出してしみる症状が起こります。歯周病は進行すると元に戻ることはありません。放置をするとどんどん骨が溶けて、やがて歯が抜け落ちてしまいます。しみの痛み以外に歯ぐきの腫れや出血等があれば早めに歯科医院を受診してください。
4-2虫歯によるしみや痛み
虫歯はエナメル質に限局したものだと痛覚がありませんので痛みを感じません。初期の虫歯はフッ素塗布や適切なホームケアで改善する可能性があります。(虫歯を自力で治すに誘導)虫歯がエナメル質の下にある象牙質まで及んでくると冷たいものや甘いものでしみや痛みを感じてきます。ここまで進行した虫歯は削って治療しなければなりません。放置すれば削る範囲がどんどん大きくなる上に、虫歯が歯髄(歯の神経)に及んだ場合、歯の神経を取らなくてはならなくなります。歯は削って治療すると、そこから虫歯が再発する可能性が高まり、神経を取ることによって栄養が供給されなくなるため歯がもろくなり、歯の寿命が短くなります。しみる痛みが虫歯によるものであれば、症状がでていることで既に初期虫歯でないことが分かります。痛みが出始めた虫歯はホームケアでの回復は見込めませんので、早めに歯科医院を受診してください。
5. まとめ
しみの痛みがある場合には、本来、歯科受診がおススメですが、すぐには通院できない、かつ緊急性のない程度の症状の場合には、知覚過敏専用の歯磨き粉で症状の緩和が期待できます。
しばらく使用を続けても改善が見られない場合は、その症状が知覚過敏以外の場合も考えられますので、早めに歯科医院を受診してください。大切な歯を失わないためにも、自己判断で長期的に放置することは避けましょう。