安心なインプラント治療のメンテナンスとは?

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 インプラント治療を考えている患者さんの多くは「インプラントってどのくらいもつのか?」気になりますよね。
実はインプラントの寿命を左右しているのがインプラント治療のメンテナンスです。インプラント手術がうまくいっても、メンテナンスしなければせっかくのインプラントもダメになってしまいます。
ここでは、インプラントの延命に必要不可欠な安心なインプラントのメンテナンスについてご紹介します。

1-1.インプラントのメンテナンスの術式とは?


インプラントのメンテナンスは次の5~6つのステップで行われます

1-1-1.問診


まずは患者さんから最近変わりなかったか、食生活の変化や社会環境の変化などを問診します。服用薬が増えた、糖尿病や骨粗しょう症など新しい病気にかかっていないか、などをヒアリングしていきます。


1-1-2.お口の中の検診・チェック


インプラントおよび天然歯の清掃状況などの視診を行い、インプラントの周囲歯肉に炎症などがないかチェックしします。また、インプラントのかぶせ物に破損などがないかも確認します。

インプラント視診


1-1-3.レントゲン検査


定期的なメンテナンスの目的の一つに、インプラント周囲の骨の状態を経時的にモニタリングすることがあります。一般的にインプラントの成功基準はかぶせ物が装着されてから1年で0.2mm以内の吸収量であることとされています。

インプラントのレントゲン


1-1-4.かみ合わせの確認


インプラントはオッセオインテグレーションと呼ばれる、インプラントと骨の硬い結合によりどんなものでも噛むことができるのです。その一方、硬く結合しすぎてしまうので、天然歯にみられる生体の遊びがありません。その誤差を補償するために、メンテナンス時にかみ合わせの調整を行うことでかぶせ物やインプラント周囲の骨が破壊されるのを防ぎます。

インプラントかみ合わせ


1-1-5.インプラント特有の検査~ペリオテストとオステル~


以上の検査で、インプラントやインプラントのかぶせ物に異常が認められた場合、インプラントに特有の検査を行います。医院によってはペリオテストという横から衝撃を加えることでインプラントの動揺度を計測したり、特殊な磁気パルスで安定性を検知するオステルという測定機器を用いて、インプラントと骨との結合に問題がないかチェックします。この検査は必要に応じて行う追加検査になります。


1-1-6.歯科医師、歯科衛生士によるブラッシング指導&PMTC


インプラント周囲についている汚れを確認し、ブラッシング指導を行います。その際、ふつうの歯ブラシだけでなくデンタルフロスや特殊なプラウトブラシなどの補助清掃用具を用いたブラッシング指導を行います(補足→もう一つのメンテナンス~セルフメンテナンスとは~も参考にしてください)。ブラッシングだけでは落としきれない汚れはプラスチックやゴム製の清掃用具でインプラントや他の歯をきれいにクリーニングします。この歯科医師と歯科衛生士によるクリーニングがPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaninng)です。

インプラント歯ブラシ

 

以上が歯科医院で行うインプラントのメンテナンスの流れです。

 

“補足.もう一つのメンテナンス~セルフメンテナンスとは~”

      セルフメンテナンスとは、自宅で行うホームケアのことです。歯科医院でブラッシング方法を習って正しいブラッシングを毎日行うことで、インプラントを自分の歯のように使うことができます。セルフメンテナンスとPMTCの両輪でメンテナンスすることでインプラントの寿命を延ばすことが可能になります。

1-2.インプラントのメンテナンスの費用


インプラントのメンテナンス費用は、おおよそ7000~10000円前後になっています。インプラントのメンテナンスは、単独で行う場合保険外診療で行うため、歯科医院で異なる場合があります。手術前にインプラントのメンテナンスについて確認しておくことがおすすめです。

1-3.インプラントのメンテナンスの頻度


インプラントのメンテナンスの頻度は一般的に手術後1年までは3~4か月ごと、その後は患者さんの個々の状態に合わせて6か月から1年まで期間を決めていきます。かみ合わせが強い、歯ぎしりをする、全身疾患があるなどがメンテナンス期間を決定する要素です。

1-4.インプラントの寿命と保証期間の関係


インプラントは人工歯根と呼ばれています。人工物ですから本来なら寿命というよりは耐用年数ととらえた方がいいでしょう。インプラントの耐用年数は日本口腔インプラント学会でも20年を超えた長期経過症例が数多く報告されています。その報告のほとんどすべてでメンテナンスが必須であると結論づけられています。
また保証期間はインプラント(人工歯根部分)は10年、かぶせ物は5年保証になっています。多くの医院ではメンテナンスを続けることで保証が有効となっていますから、この点も手術前に確認が必要です。

 

2.なぜインプラントにメンテナンスが必要なのか?


2-1.天然歯とインプラントの違い


インプラントにメンテナンスが必要な理由を理解するために、インプラントと天然歯の違いに注目してみましょう。
天然歯は骨と歯根の間に歯根膜という毛細血管が豊富なクッション構造があります。インプラントでは骨とインプラントが直接結合するオッセオインテグレーション(foreign body reaction)という結合をしています。

インプラントと天然歯の違い


2-2.インプラントが天然の歯と決定的に違う2つのポイントとは?


インプラントには天然歯の歯根膜が持つ機能がないことが、メンテナンスが必要になる理由です。その機能とは免疫機能と緩衝機能です。歯根膜や歯肉の毛細血管から浸出液や白血球などを出し、天然歯周囲の細菌や汚れに対して免疫しています。また緩衝作用を有することで、歯に過度な力(オーバーロード)がかかることを防いでいます。これがインプラントに汚れとかみ合わせのメンテナンスが必要になる理由です。

 

2-3.メンテナンスをしなかった場合にインプラントに生じるトラブルとは?


汚れのメンテナンスをしない場合、インプラントには免疫機能がないために、天然歯よりも急速にインプラント周囲骨の炎症・破壊が進行します。この状態をインプラント周囲炎と呼びます。この状態だと、インプラントの周りの歯茎が腫れたり、押すと膿が出たりします。また、かみ合わせのメンテナンスをしないでインプラントに過度な力(オーバーロード)がかかると、かぶせ物が破損したり脱落したりしてきます。

インプラントのメンテナンス

 

3. こんな場合どうする?トラブル発生時の対応法とは?


3-1.インプラントがぐらぐらしてきた


インプラント術後のトラブルの多くはインプラントがぐらぐらしてくることです。視診やレントゲン検査で、インプラントの歯根からぐらぐらしているのか、かぶせ物がぐらぐらしているのかを確認します。


3-1-1.かぶせ物がぐらぐらしてきた


かぶせ物がぐらぐらしている場合にはインプラント歯根部とかぶせ物を止めているスクリューが破折していることがほとんどで、スクリューだけの交換で対応できます。メンテナンスをきちんと受けている場合、ここで対応できるトラブルがほとんどです。

インプラントスクリュー


3-1-2.インプラントの歯根部から揺れてきている


インプラント歯根部がぐらぐらしてきている場合にはインプラント周囲炎が疑われ、この場合にはインプラント周囲の歯肉に発赤や腫れが認められます。またインプラント周囲から臭うこともあります。インプラント周囲炎の対応法は次で説明します。


3-2.インプラントの周りの歯茎が赤い、腫れている


インプラント周囲炎とはインプラント周囲に付着した細菌性プラークが周囲組織を破壊することで発症します。
早期に発見できれば歯茎が赤い、腫れているなどの粘膜までの症状で食い止めることができます。
ここでもメンテナンスをきちんと受けていれば、組織が破壊される前に汚れや細菌を除去し、治癒させるすることが可能です。
メンテナンスを受けていなかった場合で周囲骨まで破壊されてしまった場合、インプラントがぐらぐらしてきます。
この場合には再手術で感染した組織を外科的に除去したり、レーザー手術で汚れを除去し殺菌するなどの対応があります。しかしながらインプラントは特殊な構造をしているため、全ての症例で奏功するとは限りません。

インプラント周囲炎

 


3-3.インプラントのかぶせ物が取れた、かけてしまった


インプラントのかぶせ物が取れた、かけてしまった場合には、部品の交換が必要になります。患者さんにとってはショックが大きいですが、実は良い側面もあります。生体の遊びがない人工物のインプラントでは、ここをブレーカーとして壊させることでインプラント歯根部を守り、インプラントの耐用年数を延長させていると考えることもできます。この説明は患者さん個人で大きく異なるために、術前に担当医からよく説明を受けておくことが大切です。

インプラントかけた


3-4.その他ー引っ越ししてインプラント治療をした医院でメンテナンスできなくなった


インプラント治療後に、患者さんが引っ越しすることもあると思います。その場合メンテナンスはどうしたらいいかお悩みになるかもしれません。日本口腔インプラント学会入会の歯科医院ではインプラントカードという、いつ、どのメーカのインプラントを使用したのかが把握できるカードを配布しています。それ以外にもメーカー独自のカードを用いている歯科医院もあります。また、手術前に全世界で長期間用いられているインプラントを希望することで、引っ越しや海外勤務などでもインプラントのメンテナンスが受けられるように担当医を相談しておくことも大切です。

インプラントカード

 

4. まとめ


メンテナンスの重要性を理解しないでインプラント治療をしてしまったら、どうなるかおわかりいただけたでしょう。インプラントは正しく機能すれば自分の歯と同じようになんでも噛めるようになります。ただ自分の歯と同じではありません。むしろ自分の歯よりもっと繊細なケアが必要になるのです。インプラントを長持ちさせたい皆さんは、信頼できる歯科医院で継続的にメンテナンスを受けるようにしましょう。

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