普段左右どちらの歯を使って食事をすることが多いですか?
そう聞かれてパッと答えられる方は少ないと思います。
「歯を使って食べ物を噛む」という動作は毎日行っているものですが、実は「利き手・利き目」があるように、「利きアゴ」というものもあったりします。
たとえば固いものを噛むとき、なんの意識もなく噛んでいるつもりでも無意識に利きアゴのほうの歯を選んで噛んでいることがあるのです。
利きアゴがあること自体はとくに問題ありません。
しかし、極端に左右の歯で使う頻度が異なる場合は「偏咀嚼(へんそしゃく)」といって、長期にわたって続けていると歯や体の健康を損なう危険性があります。
そうなる前に自分の噛みグセを把握し、できるだけ左右の歯をバランスよく使って咀嚼できるような習慣をつけていきましょう。
目次
1.まずは利きアゴと「偏咀嚼」のセルフチェック
利きアゴの調べ方は簡単です。
固いものであったり、ナッツやガムのような小さいものを口に入れたとき、最初に噛む側があなたの利きアゴになります。
次に、利きアゴばかりを過剰に使いすぎていないか「偏咀嚼」のチェックをしてみましょう。
普段無意識に噛んでいる以上、利きアゴをどれほど使っているかは調べづらいと思います。
ここでは、偏咀嚼になっている方にでやすい歯や体の症状についてご紹介していきます。
当てはまるものがあるからといって必ず偏咀嚼をしているというように断定することはできませんが、偏咀嚼の方によく見られる特徴でもあります。
偏咀嚼セルフチェック
*左右のフェイスラインに大きく差がある
*アゴの位置が顔の中心線からズレている
*眉の位置が左右で大きく異なる
*左右のほうれい線の深さが大きく異なる
*笑ったときの口角の高さが左右で大きくズレている
これらは、利きアゴ側の口周辺筋肉が使われて発達する一方で、反対側の筋肉が使われず衰えることで生まれる左右の外見差です。
顔の左右のバランスは非対称であることが一般的であるため、多少の差であれば気にする必要はありません。
しかし、利きアゴばかり使っている自覚が強くあったり、顔の左右さが大きくて気になるという方は偏咀嚼の可能性をうたがってみましょう。
2.偏咀嚼の習慣が与える歯と体へのダメージ
顔の外見的なバランスの問題を生みだす偏咀嚼は、場合によっては歯や体に痛みをともなう症状を生みだす危険性もあります。
2-1 偏咀嚼が虫歯になるリスクをアップさせる
片側の歯ばかりを使って噛むことは、その「歯」自体にもダメージを与えることがあるのです。
ひとつには利きアゴの歯、つまり頻繁に使うほうの歯の寿命を縮めるという危険性です。
噛むときに歯にかかる圧を常に片側でばかり受けていることになりますから、あまり使わない歯に比べて負担も大きくなります。
噛む動作によってくりかえし強い圧を受けつづけた歯は、歯の表面の歯質がはがれてしまうことで知覚過敏や虫歯を引き起こしやすくなります。
もうひとつに、実は利きアゴと逆側の歯、あまり使わないほうの歯にも虫歯のリスクが生まれやすくなるということがあります!
これは、使う頻度の少ない側の歯のほうに食べカスが残りやすくなるためです。
利きアゴのほうでは、歯がつぶした食べ物のかたまりを舌の動きと唾液によって自然に飲みこんでいきます。
一方、あまり使わないほうの歯にはいつまでも食べカスが残ってしまうのです。
すぐに歯磨きをすれば問題はありませんが、そのまま放置していると残った食べカスは虫歯菌のエサになってしまいます。
利きアゴのほうの歯だけでなく、あまり使わない歯のほうにまでダメージを与えてしまうというのは困ってしまいますね。
2-2 偏咀嚼は頭痛や肩こりなどの体の不調も
偏咀嚼によって生まれた口周辺筋肉の左右差は、頭蓋骨の歪みをも引き起こします。
この歪みにあわせて、首・肩・背中・腰の筋肉の使い方にもズレが生まれ、少しづつ本来の正常な状態からゆがんだ姿勢が生まれてしまいます。
体の中心軸がズレると、どちらか片側にばかり負担がかかることになるため、コリや痛みが生じやすくなります。
たとえば、利きアゴ側のほうだけ頭痛がする、肩こりや腰痛、疲れ目や耳鳴りを引き起こおこすといったことがあります。
また、偏咀嚼は「顎関節症(がくかんせつしょう)」といわれる病の原因になることもあります。
顎関節症とは、主に①アゴが痛む②口が開かない③アゴを動かすと音がする…という3つの症状を総称した病名です。
命にかかわる病ではなく、軽度であれば自宅でのセルフケア、強い痛みをともなうなど重度の症状の場合は歯医者さんで治療をして治すことができるものです。
顎関節症の原因には、偏咀嚼以外にも頬杖や足組みのクセなど日常生活で無意識に行っている動作がかかわっていることがあります。
3つの代表的な顎関節症の症状に心あたりのある方は、ぜひ『顎関節症の原因は何気ないクセにあった!原因とセルフケア法を知ろう』をご覧ください。
3.偏咀嚼を治すために原因を知ろう
偏咀嚼を改善するためには、なぜ片側でばかりものを噛んでしまうのかその原因を知って根本的に解決をする必要があります。
偏咀嚼をしてしまう原因として主なものを対処法とあわせてご紹介していきます。
3-1 なんとなく片側でばかり噛むクセがついてしまっている
とくに理由はないけれど、なんとなく噛みやすい力が入れやすいという理由で片側の歯ばかり使っているというケースが一番多いかもしれません。
まずは、偏咀嚼になってしまっているという自覚を持つこと、続いて食事の際に両方の歯をバランスよく使うことを意識することが改善法になります。
食べ物を噛むときには、右側で10回噛んだら今度は左側で10回…というようなやり方で意識的に左右両方の歯を使うようにしましょう。
“使わないほうのアゴの筋肉を鍛える方法”
- 両側の歯をバランスよく使うことで、これ以上左右の口周辺筋肉の発達の差がでないように気をつけられるようになりました。
そうしたら次に、今まであまり使ってこなかった側のアゴの筋肉を鍛える簡単なトレーニングを日常の中に取り入れるようにしましょう。
といってもやり方はとても簡単です。
食後などにキシリトールガム(できればパッケージに「歯科専用」とあるもの)を、普段あまり使わないほうの歯で10分ほど噛むことです。
これはアゴの筋肉を鍛える効果があるだけではなく、虫歯予防の効果もあるためとってもオススメです!
ちなみに、普通の甘いガムなどは甘味料がふくまれているためあまりオススメできません。
選ぶなら、虫歯菌の活動を抑制するパワーをもつ「キシリトール」入りのガムにしましょう。
オーラルケア「歯科専用キシリトールガム」
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ガムを噛むことによる虫歯予防効果について、くわしくは『ガムを噛んで虫歯予防!キシリトールガムで大切な歯を守る』をご覧ください。
3-2 うまく噛めない歯があるため反対側ばかり使っている
虫歯になっていて噛むと痛い、親知らずが生えてきて痛いという歯をかばって、反対側の歯ばかりで噛んでいるというケースがあります。
痛みがある以上、無理に両側を使って噛むのはよくありません。
しかし、そのままにしていても痛みがなくならないどころか悪化する場合もあります。
早めに歯医者さんで診てもらい、虫歯の場合は治療を、親知らずの場合は抜歯するかどうかの相談をしましょう。
また、歯が一部欠けている・抜けた歯をそのままにしているなどの原因で上手く噛めないというケースも、欠けた部分を白いプラスチックで自然な見た目に治せたり、被せ物(ブリッジ)や入れ歯、インプラントなどで失われてしまった歯を補うこともできます。
ぜひ歯医者さんで一度相談してみましょう。
3-3 被せ物や入れ歯が合っていなくて上手く噛めない
金属や白い被せ物・詰め物が歯に合っておらず上手く噛めないということや、入れ歯が合っておらず浮いてきてしまって上手く噛めないということがあります。
被せ物・詰め物が合っていない原因としては、セメントの劣化や金属の下に虫歯ができていることで被せ物がとれかけており、それによって噛み合わせに異常が生じている可能性があります。
歯医者さんではレントゲン撮影などで虫歯の有無をチェックをして治療をしてくれます。
虫歯ができていなければ金属をお口の中で少しだけ削って噛み合わせを調整することもありますし、虫歯ができてしまっているときは、一度金属をはずして歯自体の虫歯治療を開始することがあります。
入れ歯の不具合も、削って調整するか今のお口に合った新しい入れ歯を作り直すなどしてうまく両側の歯で噛めるように対処することができます。
4.まとめ
お口の中の小さなズレが、少しづつ体全体のバランスを崩すことがあります。
何気ないクセが頭痛や肩こりを引き起こしてしまったらイヤですよね。
外見だけでなく、意外にも体全体に強い影響を及ぼすことがわかった「偏咀嚼」という悪習慣。
ぜひ今日から食事の際に自分の噛みグセを意識してみてくださいね。