ある日突然歯に痛みを感じたり、小さな穴が開いていることに気がついたり。きちんと磨いているのにどうして!?とショックを受ける事ってありますよね。でもそれはきちんと磨けていたのでしょうか?
今までの磨き方を見直し、正しい磨き方をしっかり覚えて、今日からの歯磨きにお役立てください。
目次
1.歯磨きで治せるのは虫歯初期の段階だけです
虫歯が自力で治せたら。こんな夢のような話を聞いたことがありますか?実は本当です。しかしそれは顕微鏡で確認するような極めて初期の段階の虫歯に限っての話で、ほとんどの虫歯は治療が必要です。ただし歯の表面のエナメル質に虫歯が限定される場合は歯磨き次第で虫歯の進行を抑えることが可能です。初期の虫歯がどのような状態かみてみましょう。
1-1 虫歯の進行虫歯の進行度はレベルによって大きく5段階です
CO ・・虫歯になりかけた状態で歯の表面が白くなり、溝が黒くなったりします。痛みが無い段階でフッ素の入った歯磨き粉を使用することで進行を防ぎます。
C1 ・・歯に小さく穴が開いた状態です。穴はエナメル質の部分にだけあるので痛みはありませんが、冷たい物がしみる可能性はあります。治療が必要です。
C2 ・・虫歯が象牙質に進行しています。象牙質まで進んでしまうと冷たい物、温かい物、甘い物を食べた時にしみてきます。
C3 ・・虫歯が神経まで進んだ状態で、ズキズキした強い痛みを伴います。神経を取る治療が必要です。この状態になってしまうと治療の回数が多く負担も大きくなります。虫歯の治療はC2までの状態で済ませるのがよいですね。
C4 ・・歯がほとんど無くなった状態。多くの場合抜歯の対象です。残すことが出来ません。
1-2 初期の虫歯とは?
ズバリ!『CO』の状態を言います。「初期」は最初の歯の表面が白くなった状態(脱灰)や溝が黒く色が付いている状態を言います。フッ素が含まれている歯磨き粉を積極的に使うことで進行を防ぎ『自然治癒』が可能です。ただし経過観察が必要で油断はできません。正しい歯磨きを毎食後きちんと続けることが大切です。C1以上の虫歯は出来るだけ早く治療し再度虫歯にならないための正しい歯磨きが必要です。
2.自分の歯磨きを見直してみましょう
虫歯に気が付いた時、きちんと磨いていたはずなのに虫歯になったとしたら、「残念ながら磨けていなかった」、という事になります。磨き始めから磨き終わりまで正しい磨き方を続けることはとても難しいことです。
歯並びは個人個人様々で、磨きやすさに大きく関わります。長年の習慣から自分の磨き方を誰もが持っているものです。正しい磨き方が身につくまで繰り返し意識しながら磨きましょう。
2-1 正しい磨き方をマスターしよう
自分にあった『道具』が選べたらプラークを全部取り除くための正しい磨き方をしっかり身につけましょう。良い『道具』を生かすも殺すもあなたの磨き方次第です。
汚れに毛先が当たってないと意味がない
<虫歯の三大好発部位>
せっかく磨いても汚れが取れていない状態では磨いたことになりません。歯ブラシの当て方、角度、力加減、磨く回数、歯並び、自分の磨くときの癖など、ちょっとした見直しでずいぶん変わってくるものです。まずは鏡を見ながら歯ブラシが良く当たっているかどうか見てみましょう。虫歯になりやすいのは、歯と歯の間、歯と歯肉の間、噛みあわせの面の溝。それらに毛先をきちんと当てます。虫歯予防効果の高い磨き方を紹介しましょう。
スクラッビング法
<特徴>
・歯と歯肉の境目、歯と歯の間、噛みあわせの面の溝の汚れが取れる。
・操作が簡単
<使用する歯ブラシ>
・柔らかめ
<磨き方>
・歯ブラシの毛先を歯面に90°に当てる。歯の根元は少し下から斜め上に当てて小刻みに動かす
・奥歯は歯ブラシを斜めに入れて1本ずつ磨く
・前歯の裏側はブラシを縦に当てて、ブラシのかかと(後ろの角の部分)を当て1本ずつ磨く
<注意点>
・ペングリップでブラシを持つことで力の入れすぎを防ぐ
・ブラシを大きく動かすと毛先が歯に当たらないのでプラークが残ってしまう
・2~3mm位の小さな動かし幅で1本につき20~30回磨く
磨くタイミングは食後すぐ?30分後?
いろいろな説がありどちらが良いのか迷いますよね。結論から言うと「食後すぐ磨く」です。食後はプラークの中の細菌が食べかすを餌にして酸を出し、歯を溶かします(脱灰)。ですが、唾液の働きで歯の表面は元に戻ります(再石灰化)。この繰り返しが常に行われていますが、食後30分そのままにするのは脱灰の状態が続くことで細菌が活発になってしまうのです。出来るだけ早く磨いた方が良いでしょう。
一番大切なのは就寝前のブラッシング
食後に丁寧に歯磨きをするのが大切とわかっていても難しい場合があると思います。3回の歯磨きが不十分で雑なものになってしまうなら、就寝前のブラッシングをしっかり磨くことがおすすめです。人は日中話をすることで口の中の温度が低いですが、就寝時は口を閉じるので細菌の繁殖しやすい状態になります。また、唾液の流れも減るので菌も流れません。寝る前の歯磨きで菌を減らすのが大切。もし1日に1回しか磨けないなら絶対就寝前の歯磨きです。
歯磨き粉はつけすぎない
歯磨き粉のつけすぎは良くありません。歯磨き粉に含まれる発泡剤で泡だらけになり、爽快感もあるので、磨けてなくても磨いた気になってしまいます。また、歯の表面のエナメル質が傷ついてしまうと虫歯になりやすくなったり、知覚過敏を起こしやすくなったりします。歯ブラシの毛先3分の1程の量で十分です。
2-2 あなたが選ぶべきデンタルグッズ5選
歯磨きの基本は歯ブラシですが、磨き残しの多い部位、歯並び、歯に入っている金属の種類によって正しい『道具』をプラスする必要があります。歯ブラシだけでは十分な清掃は出来ません。
歯ブラシ
歯ブラシは目的によっても違いますが、虫歯の予防として選ぶならいくつかの注意点があります。
- 毛先は均等に力の入れやすい『フラットカット』。山切りではないもの。
- 毛の硬さは『やわらかい』。歯肉を傷つけやすい『かため』はやめましょう。
- 毛の材質は『ナイロン』や『PBT毛材』などの化学繊維。動物毛は乾きが悪く不衛生です。
- ブラシのヘッドは『小さめ』奥歯まで届きます。
- 毛先は『細すぎない』プラークは思った以上に歯にしっかりこびりついています。
- ブラシの柄は力がコントロールしやすい『ストレート』おすすめの歯ブラシ
コスパ最高! タフト24(オーラルケア)
歯科医院の多くで販売されている歯ブラシ。ストレートのハンドル、コンパクトなヘッドはオーソドックス。毛先はポリブチレンテレフタレート(PBT毛材)でナイロンより4.2倍長持ちします。コシの強さと耐久性にすぐれ乾きも早いので衛生的です。高品質でありながら価格は110円前後と非常にお得な歯ブラシです。
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現役歯科衛生士が選ぶパートナーに使ってほしいおすすめ歯ブラシ11選!
デンタルフロス
フロスは歯と歯の接点(コンタクト)に挟まってしまった食べかすを取るほかに、歯の側面(隣接)のプラークや汚れを取る清掃器具です。歯ブラシだけでは歯と歯の間(歯間)のプラークや汚れは残ってしまいます。歯ブラシのみの使用でプラークは約60%の除去率が、フロスと併用することで約80%に上がります。歯が隣の歯と重なっていたり、隙間があまりない若い方におすすめです。ホルダータイプと糸巻タイプがあります。糸巻タイプは多少難しいですが、慣れてしまえばどの部位にも簡単に入れることが出来ますので練習しましょう。
デンタルフロス オーラルケア フッ素付きフロス フロアフロス
汚れをとりながら効率よくフッ素が塗布できます。歯肉に優しく、384本の繊維が歯肉を傷つけずに痛くなくプラークを除去できます。水分を含むと繊維がふわっと膨らみ、プラークを一度にすみずみまでからめとります。ネット購入で700円程度です。
歯間ブラシ
歯ブラシとフロスを使うことでプラークの除去率が80%とお話ししましたが、歯ブラシと歯間ブラシを併用すると除去率は95%にあがります。歯肉が下がってきて歯間部に隙間があるなら是非歯間ブラシの使用をおすすめします。ゴムタイプ、ブラシタイプ、形状はI型、L型がありますが、プラークをより多く取るのはブラシタイプ、L型が使いやすいでしょう。
歯間ブラシDENT.EX デントイーエックス 歯間ブラシ
高い耐久性と操作性、7サイズの豊富なラインナップの歯間ブラシです。超合金SAワイヤー採用で折れにくく、110°アングルと85mmホルダーが高い操作性を確保、確実なプラークコントロールを実現します。4SからLLまで7サイズの豊富なラインナップであらゆる歯間に対応します。ネット購入で500円程度です。
ワンタフトブラシ
プラークの残りやすい歯と歯肉の堺、歯と歯の間、歯ブラシが届かない奥歯の奥や、歯並びの悪くてうまく磨けない場所、矯正装置の周り、ブリッジの下、インプラントの周りなど、自分が磨きにくいな、と思う場所があったらぜひ取り入れていたがきたいのがワンタフトブラシです。最初にタフトブラシで2分、歯ブラシで1分、合計3分の歯磨きをスウェーデン式ブラッシングと言いプラーク除去率が上がります。
おすすめワンタフトブラシ オーラルケア プラウト
歯みがき粉
むし歯予防の歯みがきをはフッ素配合歯みがき粉を選ぶのがおススメです。できれば、成人なら900ppm、小児なら500ppm程度フッ素が配合されているものを選びましょう。加えて、歯の成分であるカルシウムやリン酸イオンが配合されている歯みがき粉ならばなおさら良いでしょう。また、発泡剤や研磨剤は無配合か、もしくは低発泡・低研磨性のものを選んでください。
より詳しくしりたい方はこちらも参照してください
いろいろな年齢に合わせて使える、研磨剤無配合のライオンチェックアップジェル
フッ素濃度はバナナ味が500ppm、それ以外の4種類(ピーチ、グレープ、レモンティー、ミント)が950ppmと、いろいろな年齢にあわせて使い分けられる歯みがき剤です。歯科医院でも非常に人気の高い歯みがき剤です。ジェル剤のためフッ素滞留性が高く、同時にお口の隅々まで広がりフッ素の効果を期待できます。ネット通販で60gで600円程度です。
3.今後お口の健康を守るために出来る事
虫歯の痛みや治療のわずらわしさは経験したくないものです。いつまでも自分の歯で美味しい物を食べることが出来るようにするために、今日から出来る事があります。
3-1 正しい歯磨きを続けていく
簡単なようで実はとても難しいことです。ブラッシング指導を受けた後は誰もが教わった通りに磨くでしょう。でも1か月後に同じように正しく磨いている方は残念ですが少なくなってしまいます。長年磨いてきた自分の磨きやすい磨き方を修正するのは、なかなか出来ないのです。意識をして磨くようにすることが大切です。
3-2 食生活を見直す
バランスのとれた食生活は糖分を減らしますし、色の濃い緑黄色野菜はよく噛んで食べるものが多く唾液の分泌が良くなり虫歯の予防に役立ちます。またカルシウムの多い野菜は歯質を強くします。サプリメントでビタミンCやビタミンDを摂取するとさらに良いです。逆にコーヒー、炭酸飲料、アルコールの取りすぎは歯の表面を脱灰させ、歯の健康に必要なリンやカルシウムを減少させるので注意が必要です。
3-3 水分を十分取る
唾液の分泌が少なくなり、口の中が乾燥してしまう状態をドライマウスと言いますが、唾液が少ないと、プラークが洗い流されなかったり、口臭の原因になります。こまめに水分を取ることで口の中の環境を保ちます。
3-4 歯科医院で定期検診を受ける習慣をつける
歯科医院は虫歯が出来てから行くところ。という概念は捨てましょう。定期検診では虫歯の有無を調べ、歯石を取るなどのクリーニングを行いながら歯磨きのチェックを行います。その人にあったブラッシング指導を受けることで日ごろの歯磨きを確認できます。お口の中の状態に合わせ6か月~1年ごとに定期検診を受けることが望ましいでしょう。
4.まとめ
虫歯に気が付いた時「もう次は虫歯にならないようにしっかり磨くぞ」と誰もが思う事でしょう。出来ているようで簡単ではない歯磨き。普段何気なく磨いている歯磨きを見直し改善するチャンスです。歯科医院のスタッフはそのお手伝いをいたします。ぜひご相談ください。虫歯のない健康なお口で過ごしましょう。