初めての抜歯が「親知らずの抜歯だった」という方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?
みなさんが持つ抜歯のイメージは、「痛い」、「怖い」、「腫れる」、「何時間もかかる」など たくさんの嫌な言葉ばかりが浮かんできますね。
今回は親知らずの抜歯の、「痛み」について考えてその期間と改善方法を具体的に紹介していきます。
目次
1.親知らず抜歯後の痛みのピークは2~4日目まで
上の親知らずの抜歯はそれほど痛みが出ないことが多いのですが、下の親知らずの痛みの多くは平均して2日~4日で起こります。腫れも同時にやってきます。
ズキズキとした痛みが続きます。痛みどめを上手に服用しながら、乗り越えましょう。
“補足”
親知らずの抜歯は上の歯と下の歯で、抜き方も、難しさも、痛み方も違います。どちらが大変かというと、下の親知らずの抜歯のケースが多いです。なぜなら、下の親知らずは上の親知らずに比べて、横を向いていることが多く、顎の骨も下の骨(下顎骨)のが硬く密度も緻密なので、麻酔の量も多めに使うことがあります。時間がかかることが多く、そのため抜歯のマイナスイメージは下の親知らずの抜歯が多いのです。
2.抜歯直後から3日目くらいまでの傷口の状態と痛みを止める方法
抜歯の前に麻酔をしっかりと注射するので、抜いている最中はあまり痛みを感じません。抜歯後の痛みを軽くするためにはいくつかの注意点があります。きちんと守ることで痛みも治り方も違ってきます。
ジンジンとうずくような痛みです。
2-1.抜歯直後は大きな穴があいている
歯を抜いた直後は、思ったより大きな穴があいています。出血もあり、歯の向きによって切開が必要な場合は傷口を縫合することがあります。
2-2.抜歯直後の痛みを軽減する8つの方法
麻酔が切れる前に痛み止めを飲む
麻酔は1~2時間効いているので、麻酔が切れる前に処方された痛み止めを飲んでおくのが効果的です。空腹で痛み止めを飲むのは胃に負担があるので、抜歯前に軽い食事をしておくと良いでしょう。
ガーゼを噛んで止血する
抜歯が終わるとガーゼを噛むように言われます。10分~20分しっかり噛むことで、傷口を圧迫して血を止めるためです。早く止血ができると痛みを抑えられます。ガーゼは血が完全に止まるまで噛む必要はありません。ガーゼを外したときに、唾液に血が若干滲む程度なら自然に止まります。まだ出血していたらティッシュペーパーを折りたたんで噛んで様子をみます。
うがいをしすぎない
なかなか血が止まらないと、気になってうがいをしてしまいます。でも、だからといってうがいのし過ぎは厳禁です。抜歯してできた穴を血液からできたかさぶた(血餅)が、口の中の細菌から、むき出しになっている骨を守ってくれる大切な働きをします。強いブクブクうがいをするとかさぶたが出来にくくなります。
6時間経ったら痛み止めを追加して飲む
最初に飲んだ痛み止めがそろそろ効果が切れる頃です。胃の負担がないよう軽く食事を取り痛みどめを追加して飲みましょう。薬の用量と飲む時間を守ることで効果的に効き、痛みや腫れが少なく出来るのです。
外から冷やす
抜歯から24時間までは冷やすのが効果的です。外から濡らしたタオルを当てるくらいで良いでしょう。ただし氷を口に含んだり、頬に直接氷を当てたりして冷やすのはやめましょう。冷やしすぎは血液の流れを悪くしてしまい、しこりができたり、回復が遅れます。また、24時間後は温めたほうが早く痛みが減ってきます。
頭を高くして安静に休む
抜歯してできた穴の中に血液が流れ込むとズキズキと痛みが強くなります。頭を高くすることで痛みを緩和することができます。安静にすることで炎症を抑えられ熱が出るのを防ぎます。
ストローは使わない
飲み物をストローで吸い込むと、口の中に圧力がかかり、かさぶたが取れてしまう危険があります。かさぶたはとても大切です。ストローの先端が傷口に不意に触ってしまうと、治りかけた傷口が刺激してしまうことがあり、炎症の長期化、悪化につながります。
お酒、たばこは控える
お酒などアルコールは血液の循環を良くすることはご存じですよね。血液が固まりにくくなるので、当然ながら痛みが増して、長く続いてしまいます。たばこの喫煙は毛細血管を収縮させるので、傷の治りが悪くなります。
1週間くらいは我慢しましょうね。
3.3日から1週間後の状態と痛みを止める方法
傷口の状態は白く見えることがあります。食べかすが入っていることがありますが、大抵は歯肉やかさぶたが白くなってきているもので、少し傷が小さくなってきます。
3-1.抜歯直後より強い痛みが起こる場合ドライソケットが考えられます。
ドライソケットは歯槽骨炎と言われます。
傷が治っていくときは、徐々に痛みが弱くなっていくのが普通ですが、逆に強い痛みが起こりますドライソケットの多くは特に、下の親知らずを抜歯した場合に多くみられます。抜歯した人の2~4%に起こると言われ、耐えがたい痛みを起こしますが適切な治療で2週間~1か月で良くなってきます。正しい知識を知ることで、ドライソケットになることを防ぎましょう
ドライソケットの3つの原因
うがいのしすぎが最大の原因
かさぶたが取れてしまうと骨が露出した状態になります。そこに食べかすが入り腐ると細菌が増殖して骨が炎症を起こし激しい痛みが起こります。炎症がさらに進むと顎のリンパ節や首のリンパ節が腫れてきます。口が開けにくくなったり、物を飲み込みにくくなったり顔の形が変わるほど腫れます。38℃以上の熱が出ることもあります。
口の中の圧力でかさぶたがとれる
ストローで飲む、出血を気にして唾を吐く、傷口を下で触る、咳をする。抜歯後に行いやすい事ですが、いずれも口の中に圧力をかけます。かさぶたが出来るまでは慎重に過ごします。
抜歯後の出血量が少ない
ドライソケットが下の歯の抜歯後に起こることが多いのには、下顎の骨が硬く、緻密であるため出血が少ないことが考えられます。出血量が多いのも心配ですが、かさぶたが出来るには出血の量が大切です。喫煙が悪いのは血行を悪くするためです。
ドライソケットの予防法はお口の中をきれいにしておくこと
- 抜歯後の痛み、腫れが直後より増している場合は、炎症が広がる前に、早めに歯科医院に受診します。抗生物質を飲んで炎症を抑えたり、傷を消毒、洗浄することで良くなる可能性があります
- 口の中をきれいに保つようにします。口がうまく開かなかったり、痛みがあると歯磨きがうまくできなくなりますが、傷口を触らないようにできるだけきれいにしておきましょう。
3-2.ドライソケットになってしまった場合の治療方法は?
炎症が軽度の場合
抜歯窩の消毒、洗浄を繰り返しながら、抗生剤、痛み止めを飲みます。傷口にレーザーを照射することで炎症を抑えます。
炎症が重度の場合
麻酔をして抜歯窩を掻爬(そうは)します。掻爬とは専用の器具で穴の中の感染した部分を掻き出し取り除くことですが、そうしてわざと出血させることで新しく血餅が形成されるのを促します。傷口にレーザー照射を行う場合もあります。
局所麻酔を染み込ませたスポンジや軟膏を抜歯窩に入れて数日ごとに取り換えながら、傷口を保護することもあります。
順調に回復すれば数日から1週間以内に症状が治まってきます。
4.知っておきたい痛み止めの豆知識
処方される痛みどめは、症状や普段飲んでいるほかの薬の飲み合わせなどを考慮して数種類の中から、その方に合った薬が出されます。歯科で処方される主な痛みどめの種類と特徴を見てみると共に、薬が無くなってしまった時にどうしたら良いか考えていきましょう。
4-1.痛み止めが無くなったら市販薬で代用できる
抜歯後は一般的にきちんと飲みきる抗生剤と痛いときに飲む痛み止めが処方されます。 抜歯後3日もすると、痛みの強さの個人差はありますが、処方された痛み止めがそろそろなくなる。という方もいると思います。時間の都合、仕事や学校の事情によって歯科医院に行けないこともあります。
そんな時はどうしたらいいのでしょうか。
処方薬の特徴と市販薬の選び方
処方薬の特徴を知って正しく服用することで痛みのコントロールができます。歯科で処方されることが多い痛み止めを、効力の強い順に並べ副作用についても見ていきましょうまた、できる限り歯科医師に相談することが大切ですが、処方薬と同等の効果が得られる市販薬も紹介します。ただし普段飲んでいる薬との飲み合わせや用量など自己判断は禁物です。
歯科医院で処方される主な処方薬
ボルタレン (非ステロイド系)
一番作用の強い抗炎症薬のため胃に負担も大きい。最短30分ほどで効果があらわれ、平均6~8時間持続する。
ロキソニン (非ステロイド系)
ボルタレンの次に強い。胃に負担が大きいが副作用は少ない。ただし容量を守らず大量に服用すると強烈な腹痛を起こすことがある
カロナール (非ピリン系)
効果は普通で安全。小児でも使える。
処方薬と同等な効果の得られるおすすめの市販薬
薬剤師のいる薬局か通販で購入可能な第一類医薬品で、価格は650円程度です。第一類医薬品のため他の市販の鎮痛薬と比べて効き目が強く、歯科医院で処方される鎮痛薬と同じ薬用成分を含んでいます
5.1か月後の傷口の状態と痛み
抜歯部分に開いていた穴の中の歯槽骨(顎の骨)は、ほぼ再生し平らになる。骨の周りは歯肉に覆われ穴もだいぶ塞がっています。不快な感じも少なくなり、歯を普通にみがけるようになります。
1か月経過しても痛みが続いている方がいらっしゃいますが、抜歯後の治りが悪いことから起こる感染や、ドライソケットが考えられます。早めに抜歯をした歯科医院に受診しましょう。
6.3か月から6ヶ月の状態と痛み
痛みも無くなり、歯肉が平らな状態に戻る、完全に回復する。というのが一般的です。中には3か月経っても穴が塞がらず痛みや腫れがある場合があります。親知らずの抜歯時に骨を削って抜歯した場合、神経を傷つけてしまったことが原因とするしびれが残ってしまうこともあります。6ヶ月経過しても痛みがある場合は口腔外科や大学病院の受診をおすすめします。
7.これから親知らずを抜歯する方へ~できるだけ痛みを軽減する方法
ここまでは抜歯が終了して痛みがある方に向けてお話してきましたが、親知らずの抜歯をこれから行う予定があり、痛みが出るのを少しでも抑えたいとお考えの方に、抜歯前にしておくと痛みを軽くするために自分でできることをお話しします。
7-1.口の中を清潔に保つ
虫歯や歯周病になっていると、口の中には細菌がたくさんいます。その状態で抜歯をした場合傷口から細菌が入り感染を起こし痛みや腫れがひどくなります。抜歯する予定の親知らずの周りを良く磨き細菌の数を減らしておきましょう。
7-2.腫れのない状態にしておく
歯肉炎を起こして歯の周りの歯肉が腫れていると、麻酔が効きにくいので痛みも強く、腫れも大きくなります。良く磨き殺菌作用のある洗口液でうがいを行い腫れをなくしておきましょう。
アルコールの入ってない刺激の少ない洗口液がおすすめです。
7-3.抜歯に慣れた腕の良い歯科医院をさがす
口腔外科での経歴をもつ歯科医がいる歯科医院や、大学の口腔外科は抜歯の経験が
豊富なので安心です。日ごろから評判や口コミを参考にしましょう。
7-4.寝不足、疲れに気を付ける
抵抗力が落ちていると、傷口が細菌に負けてしまい感染を起こしやすくなります。
抜歯後の痛みや腫れの原因になります。
7-5.若いうちに抜く
年齢が若いときは骨が軟らかく、傷の回復もはやいものです。年齢を重ねるにつれ、骨がもろくなるので抜きにくくなります。また、高血圧、糖尿病などの生活習慣病がある場合が多く、抜歯そのものが出来なかったり、傷の治りが悪くなります。
8.まとめ
歯を抜くと決まった時から無事に抜歯が終わった時まで、痛みや腫れについて不安や心配がたくさんあったと思います。でも痛みを出来るだけ少なくするためにできることが、実はたくさんあることがお解りいただけたでしょうか。『抜歯』はあくまで『手術』です。大切なのは事前に知識を持ち、しっかり準備をすることです。
必要以上に怖がらず抜歯に臨みましょう。歯肉の下で見えなかった親知らずは真っ白でかわいい形をしています。親知らずを悪者とせず、注意事項を守ることが痛みを軽減させるのです。