飲食店で飲んだジュースのグラスに残った氷をついガリガリ噛んでしまう、お風呂上りに冷蔵庫の氷を食べるのが習慣…そういった方はいらっしゃるのではないでしょうか?
ガリガリッと響く音が心地よい、噛み応えがあるものが好き、冷たいものを口に含むと気持ち良い、などさまざまな理由があるかもしれません。
しかし、実はその何気ない習慣が歯やからだに少しずつダメージを与えているかもしれない可能性を考えたことはあるでしょうか?
「もともとは水からできているんだし、歯に悪いのは甘いものだけでしょ」と思われるかもしれませんが、実際のところはそうではありません。
この記事では、氷を噛む習慣が与える歯へのダメージと、その習慣の原因・改善方法についてご紹介していきます。
1.氷を噛むと歯にダメージが蓄積される
ただの水からできているからこそなんだか無害感のある氷。
糖分もないし、ちょっと冷たいミネラルウォーターを飲んでいるのとそんなに変わりはないだろう…と思って氷を噛む習慣がついている方は要注意です。
氷を噛むことの問題は、その硬さによってはに少しずつダメージが蓄積されてゆくことです。
そのダメージがいずれは歯の根が割れる原因になったり、金属などの詰め物・被せ物の異常なすり減りの早さや取れやすさ、アゴの異常(顎関節症)などにつながっていくことがあります。
歯の表面にある「エナメル質」といわれる部分は確かに全身の中で最も硬い組織ではありますが、氷の結晶の硬さもなかなかのものではあります。
氷ではありませんが、アイスの「あずきバー」を噛んで歯が折れた・被せ物が取れたという話を聞くことがありますね。
いくら硬さのある組織とはいえど、歯に一度に与えられる衝撃が大きかったり、少しずつダメージが蓄積されていくといつかは割れたり、ヒビが入ることもありえます。
たまに1個2個ガリガリと噛むくらいであれば、そう簡単に歯が悪くなることはないかもしれませんが、それが毎日の習慣となっていたり、噛む氷の量が多いとその分歯に蓄積されるダメージ量も比例して大きくなります。
もしエナメル質がダメージを受けてしまった場合は、その中にある「象牙質」という組織が虫歯菌の酸の影響をダイレクトに受けることになり、その歯が虫歯になるリスクもぐんと高まります。
歯の被せ物や詰め物が取れやすくなることに関しては、単純に氷が物理的に当たった衝撃によるものもありますが、そのほかに氷の冷たさが歯と被せ物(詰め物)のそれぞれに与える収縮率と膨張率が異なるため、歯と被せ物の接着面に隙間をつくってしまい、そのから虫歯が進行し、歯が弱って欠けたりなどして被せ物が適合しなくなるというケースも考えられます。
2.氷を噛むクセは「異食症」の一種かも
「異食症」というのは摂食障害の一種で、栄養がなく通常食べるものではないものを継続して1か月以上口にする症状のことをいいます。氷を過剰に食べるクセが長期に渡ってあるものを「氷食症(ひょうしょくしょう)」といいます。異食症は氷のほかに、髪の毛や紙、金属、ガラス、土などを食べるケースもあります。
暑さを感じない日でも無性に氷を食べたくなる、1日に氷を食べる量が冷蔵庫の製氷皿1皿以上…という方は一度「氷食症」を疑ってみるのがよいかもしれません。
氷食症の原因
氷食症の原因・メカニズムはすべてが解明されているわけではありませんが、原因のひとつとして「鉄欠乏性貧血」が考えられます。体内の鉄不足が原因で引き起こされる症状です。
鉄欠乏性貧血は自律神経にも影響を及ぼし、これにより体温調節がうまくいかずに口の中が熱いように感じられ、氷やアイスなどの冷たいものを口に含みたいと感じさせることがあります。
気温や体温に関係なく氷を含む習慣がある、1回に食べる氷の量が多いという方の中で、日常生活をとおして「めまいがするときがある」「持久力が低下した気がする、疲れやすい」「顔色がすぐれない日が多い」「寝つきが悪く、寝起きの体調もすぐれないことが多い」という方は、もしかしたら鉄欠乏性貧血の可能性があるかもしれません。
医療機関での内科的診断が必要になるため、一度内科もしくは婦人科を受診し、貧血の治療に向けて動き出すことをオススメします。
3.氷を食べる習慣の改善方法
しかし、氷を噛むのが毎日の習慣になってしまっている場合、またはストレス発散として硬いものをガリガリと噛むことをなかなかやめられないというケースの場合はまずは少しずつ歯へのダメージを減らす方法に切り替えていくことを意識しましょう。
たとえば、口の中に冷たいものを含みたいという欲求を満たすためには「氷は口に含んだ時舐めるだけ。決して噛まない」という風にルールを決めてみます。
アイスは冷たさもありながらやわらかくもありますので代替品になるのでは?と思われるかもしれませんが、糖分があるだけ虫歯菌のエサになるリスクもあるため、アイスを舐めたときは必ずそのあとの歯みがきをしっかりすることを心がけましょう。
噛み応えのある硬いものを食べたいときは、リンゴや生のキュウリ、生野菜スティックなどで代用することが歯にダメージを与えることも少なく、栄養面からみても健康的です。
また、鉄欠乏性貧血の方はレバーやカツオ、小松菜やひじきなど鉄分の豊富な食物を食べることを意識してください。
また、現在歯ののどこかに痛みや凍みる症状、被せ物・詰め物のズレ、アゴが痛い・大きく開けない・開いたとき変な音がするという症状をお持ちの方はできるだけ早めにかかりつけの歯医者さんを受診するようにしてくださいね。
4.まとめ
これから暑くなってくる季節、つい冷たい氷に心地よさを感じてしまいますが、歯の健康を守るためにも氷を口にする量や頻度にはよく気を付けてくださいね。