何かに集中しているとつい口がポカンとあいてしまう…。
鼻炎や花粉症持ちで鼻がつまって口呼吸になってしまう…。
そんなクセをお持ちのあなたは要注意です。
普段口呼吸をしていると唇が乾燥して切れたり、口の中がカラカラに乾いたりして不快な思いをしたことがあるでしょう。
しかし、口呼吸によって引きおこされるデメリットはこれだけではないのです。
何気なく行っている口呼吸はお口の中だけではなく、顔や体全体にまで悪い影響を与えることがあります。
ここでは、百害あって一利なしの口呼吸が持つおそろしいデメリットと、鼻でおこなう正常な呼吸へ戻すための方法についてご紹介しています。
今日から気をつけられるものもあるので、ぜひ参考にしてくださいね。
1.口呼吸のおそろしいデメリットとは
口呼吸がもつデメリットには、
①口呼吸による唾液量の減少でお口の異常を引きおこす
②風邪や花粉症、「睡眠時無呼吸症候群」などの体の異常を引きおこす
③口呼吸による歯並びの悪化、口周りの筋肉が衰え・たるみなどの見た目の問題を生む
といったことがあります。これらについてくわしくご紹介していきましょう。
《口呼吸セルフチェック》
該当する項目が多いほど口呼吸をしている可能性が高くなります。
●口がいつも開いている
●口を閉じると呼吸が苦しい
●口を閉じるとアゴのところに梅干し状のシワができる
●口臭が強い
●鼻がつまりやすい
●唇が乾燥しやすい
●起床時のどがヒリヒリする
2.唾液量減少によって起こるお口の異常
唾液にはどのようなパワーがそなわっているかご存知ですか?実は、唾液は様々な菌からお口の中を守ってくれているのです。口呼吸によってお口の中が乾燥してしまうと唾液が十分にそのパワーを発揮することができなくなり、いろいろなお口のトラブルを引きおこしてしまうのです。
2-1 虫歯になりやすくなる
虫歯とは、お口の中の食べカスをエサにして活動している虫歯菌が酸を生みだし、この酸によって歯の表面が溶けだすことで発生してしまいます(「脱灰(だっかい)」といいます)。この虫歯菌の活動を抑制するのが、唾液のもつ「再石灰化(さいせっかいか)」という力です。唾液は食べカスを洗い流し、お口の中を虫歯菌の活動しにくい環境に整え、さらには酸によって溶けてしまった歯の表面をコーティングして修復する役目を持っています。
くわしくは、『知っていますか?唾液が虫歯予防にパワーを発揮する理由』をご覧ください。
《脱灰のしくみ》
《再石灰化のしくみ》
口呼吸ばかりしているとお口の中の唾液が乾いてしまい、これらの作用がうまく働かなくなり虫歯になりやすくなってしまいます。とくに、唾液にふれにくく乾燥しやすい前歯は虫歯のできやすい場所です。
2-2 歯周病になりやすくなる
歯だけではなく歯茎もまた、唾液のパワーによって歯周病菌から守られています。唾液の効果が十分に受けられていないと、歯茎が赤く腫れた状態が続き、いずれは歯周病になってしまうこともあります。
くわしくは、『歯周病になってしまう原因とは?/歯を失う原因の第1位は歯周病』をご覧ください。
2-3 口臭が発生する
口臭はお口の中の細菌が原因で発生します。唾液にはこれらの細菌を殺菌して口臭を起こしにくくするパワーも持っています。そのため、口呼吸によって唾液量が減ってしまうと、口臭をおさえることができなくなってしまうのです。
2-4 歯に着色しやすくなる
口呼吸をくりかえしていると歯の表面が乾燥しやすくなります。乾燥している歯は、唾液で濡れているときの状態よりも汚れがつきやすく、歯磨きでは簡単に落とすことができません。歯医者さんで専門器具を使用した歯のお掃除をする必要があります。また、コーヒーやワインの飲む習慣がある、喫煙している方はとくに着色しやすくなります。
2-5 味覚が鈍くなる
唾液には口に入れた食べ物の味の成分を分解して、味蕾(みらい)といわれる部分に届ける役目を持っています。唾液の分泌量が少ないと味蕾に味が届きにくいだけではなく、唾液の潤滑作用がなくなることで味蕾自体が傷ついたり炎症を起こしたりすることで機能しなくなり、味覚障害を引きおこすことがあります。
3.口呼吸が体に与える悪影響
口呼吸はお口の中だけの問題ではありません。「呼吸」が正常におこなわれないことで、様々な体のトラブルを呼んでしまいます。
3-1 細菌が体に入りこみ病気を引きおこす
鼻呼吸をしていると、鼻の中にある毛や粘膜がホコリや花粉、細菌や空気中の化学物質を50~80%ほどキャッチし、体内に入りこまないようにしてくれます。しかし、口呼吸では口に入った空気がそのままダイレクトに喉や気管に入りこむため、細菌等を処理することができません。これが原因で、風邪・インフルエンザ・花粉症・ぜんそく・肺炎や腎炎などの病気を引きおこすことがあります。
また、鼻呼吸であれば冷たい外気は鼻腔で暖められ、加湿されて体内に届くため体に害を与えません。しかし、口呼吸は冷たいままの空気が体内に届くためリンパ組織にダメージを与える危険性があります。
画像:特定非営利活動法人 日本病巣疾患研究会
3-2 睡眠時無呼吸症候群を引きおこす
「睡眠時無呼吸症候群」とは、眠っている間に一時的に呼吸がとまってしまう疾患をいいます。いびきをかいたり夜中に目を覚ましやすくなったりするだけでなく、酸素不足により脳や体へ大きなダメージを与える可能性のある疾患です。この睡眠時無呼吸症候群の主な原因としてあげられるのが口呼吸です。
寝ている間、口呼吸は喉がふさがれてしまい、下顎につけている舌の力が抜けて喉のほうに落ちこんでしまうため、呼吸がしづらくなり無呼吸状態を引きおこすのです。
4.口呼吸が外見に与える悪影響
口呼吸を長期にわたって続けていると少しずつ顔立ちが変化してきます。「たかが呼吸」…と思っていてはいけません。
4-1 歯並びが悪くなる
普段日常生活を送っている中で、舌の正しい位置について考えたことはありますか?実は、舌を置く位置というのは上の前歯のすぐ後ろ、上顎の歯茎に軽くくっついているのが正常なのです。ここに舌があることで上顎は幼少期から12歳くらいまでのあいだにゆっくりと自然な形で広げられます。広げられた上顎に生えてきた大人の歯は、じゅうぶんな場所が確保されているためまっすぐ生えてくることができるのです。
しかし、口呼吸の場合は空気の通る道をつくるために、舌は下顎の内側についた状態になっています。そうすると、上顎がじゅうぶんなサイズに押し広げられることがありません。とくに横幅がせまくなり、前歯の並ぶスペースが足りなくなってしまいます。さらに、ものを噛むたびに前歯が空気に押されて前へ前へと出てくるため、結果的に出っ歯になってしまうのです。
歯並びの悪さは、外見の問題だけではなく発音が不明瞭になったり顔がゆがんだりする問題もあわせもっています。そのため、歯医者さんで矯正治療を受ける必要があるのです。
4-2 唇が乾燥して切れたり厚ぼったくなる
口呼吸による呼気で唇が乾燥し、ヒビが入ったり切れてたりすることがあります。口呼吸が習慣化していると、リップやワセリンを塗っても保湿が追いつかないくらいにすぐ乾燥してしまいます。また、空気の通り道を確保するために無意識のうちに唇の内側を外へとめくるクセがつき、これが原因で唇が厚ぼったくなってしまうことがあります。
《口呼吸による唇の乾燥》
画像:特定非営利活動法人 日本病巣疾患研究会
4-3 顔がたるむ・ボーっとした顔になる
口呼吸をしていると鼻呼吸をしているときに比べ、口周りの筋肉が使われなくなるため顔にしまりがなくなります。頬がたるんでほうれい線が目立つようになったり、弛緩したボーっとした顔になりやすいのです。
5.口呼吸を治す方法はコレ!
口呼吸をしてしまう原因は人によって異なります。自分で治せないものである場合には、歯医者さんや専門機関での治療が必要になります。一方、口呼吸をする頻度が少なく症状も軽度の場合は、自分で意識的に気をつけたり口周りの筋肉を鍛えるストレッチをすることで口を閉じやすくし、正常な鼻呼吸へ移行することも可能です。
5-1 風邪や鼻炎による鼻づまりは耳鼻科へ
鼻づまりによって鼻呼吸ができないために口呼吸をしていることがあります。その場合は、口呼吸をやめることを意識するよりも、まず耳鼻科等の専門機関で鼻づまりを治すことが先決です。治療を受け、鼻づまりが治ることで自然と鼻呼吸に変わることがあります。
5-2 歯並びが悪い場合は矯正治療を
口呼吸が原因で歯並びが悪くなってしまうことは先ほどご紹介しましたが、悪くなった歯並びが原因で唇をしっかり閉じることができなくなる場合もあります。口が自然と開いてしまうことで、さらに口呼吸が習慣化してしまうことがあります。歯並びは歯科医院での矯正治療を受けることで治すことができます。くわしくは、『歯並びが悪いあなたへ~治し方から原因まで教えます~』をご覧ください。
5-3 口の周辺筋肉の衰えには「あいうべ体操」
口呼吸を長期にわたって続けていると口周りの筋肉の力が弱くなり、さらに口が閉じにくくなってしまいます。口周りを鍛える体操を毎日習慣づけることでこれを改善していきましょう。
「あいうべ体操」というお医者さん考案の口呼吸を鼻呼吸へと治すためのお口の体操がオススメです。「あ」「い」「う」の状態のときに口を閉じるのに必要な口輪筋とよばれる部分を鍛えられ、「べ~」の状態で舌筋を鍛えられます。まずは毎日10セットをやることから目標にしていきましょう。
※声は出す必要はありません
※アゴを大きく開くと痛みの出る方、顎関節症の方は「い」と「う」の体操だけをおこないましょう。この二つはアゴの関節に負担を与えることなくおこなうことができます。
《あいうべ体操のやり方》
① 口を大きく「あ」の状態に開く
② 横に大きく「い」の状態に広げる
③ 口をすぼめて前の方に「う」とつきだす
④ 舌をだして下に「べ」と伸ばす
画像:あいうべ体操とゆびのば体操で病気にならない体つくり「みらいクリニック」
5-4 よく噛んで食事することを意識する
口周りの筋肉をよく使うには、毎日の食事の中でよく噛むことを意識するのも大切です。一口一口よく噛んで食べるようにしましょう。片方の歯だけではなく、左右均等に噛むように心がけます。よく噛むことで口周りの筋肉が鍛えられるだけではなく、唾液の分泌量もうながされるメリットがあります。食後にキシリトールガムを噛めば虫歯予防も同時におこなうことができます。
5-5 睡眠時無呼吸症候群にはマウスピース
マウスピースを睡眠時につけることで睡眠時無呼吸症候群を改善できることがあります。口呼吸を治すという根本的な解決にはなりませんが、睡眠時無呼吸症候群は場合によっては命にかかわる疾患です。早急に改善する必要があります。
まずは、耳鼻咽喉科・呼吸器科等を受診しましょう。睡眠時無呼吸症候群と診断され、マウスピースが必要であると判断された場合は歯医者さんにその旨を伝え、マウスピースを製作してもらうようにしましょう。このマウスピースは歯ぎしり防止用やスポーツ用のマウスピースとは異なるものです。
料金は3割負担の場合15,000円ほどで、一度の型採りと歯医者さんへの受け取りで済むため手間と時間はあまりかかりません。ただし、歯医者さんによっては睡眠時無呼吸症候群用のマウスピースの作製をおこなっていない場合もありますので、あらかじめホームページや電話で確認しておきましょう。
6.まとめ
実はいくつものおそろしいデメリットを持った口呼吸。悪影響を与えるのはお口の中だけではなく、命にかかわる疾患につながることもあります。今日からでも鼻呼吸をおこなうことを意識していきましょう。