歯に金属のかぶせ物が入っている場合、その部分の歯肉が黒くなることがあります。
特に前歯に起こると笑った時に見えることもあり気になりますね。
治療後数年経って起こることが多いのですが、一度黒くなってしまうと改善は容易ではないようです。
かぶせ物によって歯肉が黒くなることを金属の入れ墨「メタルタトゥー」と言います。
今回はメタルタトゥーについて考えてみたいと思います。
目次
1.歯肉の着色の種類と原因
健康な歯肉というのは本来、きれいなピンク色で、腫れのない引き締まった状態をしていますが、変色することがあります。
原因によって色の違いがあります。
1-1 金属が溶出して歯肉や歯に沈着したもの
かぶせ物が原因で歯肉が変色するのは、金属イオン(主に銀イオン)が溶けだし歯肉に浸透して起こります。
保険で治療を行うと、かぶせ物やかぶせ物の中の土台(コア)は決められた金属を使って作成されます。
土台は約7割の銀を含む銀合金が使用され、かぶせ物は約5割の銀を含む歯科用パラジウム合金が用いられます。
必ずしも金属イオンが溶けだすとは限りませんが、治療後の歯肉に変色の起こる可能性は十分考えられます。
また、口の中で銀合金を削った際の細かな金属片が歯肉に入り込むことも原因の一つとされています。
以下のイラストは、一般的に使用される保険診療のかぶせ物です。
↓ FMC(フルメタルクラウン)
↓ 硬質レジン前装冠
1-2 喫煙などによるメラニン色素の沈着
たばこや力を入れすぎたブラッシングを続けていることで、歯肉にメラニン色素が沈着して黒ずんでくることがあります。
この場合は着色が歯肉の表層に留まっていることが多く、専用の薬剤を塗布して、かさぶたを作り、それがはがれることで表面の色を改善します。
色の濃さによっては何回か繰り返します。
また、レーザーを用いることもあります。この治療は「ガムピーリング」と呼ばれます。
出典:モリタデンタルマガジン170号より
1-3 歯周病による歯肉の炎症
歯みがきが上手に出来ていないと、プラーク(歯垢)が蓄積され、やがて硬くなり歯石に移行します。
歯石は時間とともにさらに増えていき、歯周ポケットの中にも付着していきます。
その歯石が原因で歯周病が進行しますが、歯肉は赤く腫れる炎症が見られ、出血しやすくなります。
この場合は歯石を除去して適切なブラッシングを続けることで歯肉の赤みは改善することができます。
下の写真では、歯石がかなり付着していて歯周病が進行した状態です。
歯肉が赤くなり炎症がみられます。
2.メタルタトゥーの治療法とは?
メタルタトゥーの除去の方法は症状に合わせて、3つの治療法があります。
いずれも自費治療になるので歯科医師に確認が必要です。
2-1 手術用顕微鏡を用いてメラニンを除去する
レーザーや薬品を用いてのガムピーリングは、欠点として除去範囲は表層に現局されるため、何回かに分けて除去する必要があり、回数と時間がかかります。
また、レーザーの種類によっては熱が発生して歯肉にやけどを生じます。
本格的に改善を希望する場合は手術用顕微鏡下で直接色素や金属片を除去する方法がおすすめです。
出典:モリタデンタルマガジン170号
2-2 レーザーによるメラニン除去
メラニン色素は歯肉表面より比較的浅い部分に存在するため、レーザーを用いた除去が行われます。
用途によって種類の異なるレーザーが使用されますが、この場合は炭酸ガス(CO2 )レーザーよりも、水が出て冷却しながらメラニン除去ができるEr-YAGレーザーの使用がおすすめです。
歯科医院で相談してみましょう。
出典:モリタデンタルマガジン170号
2-3 薬品を塗布したメラニン除去
色素沈着が広範囲にわたって見られる場合、薬品によるメラニン除去が行われます。
フェノールとアルコールの専用の薬剤を塗布することで、数日後表層の歯肉がはがれ、きれいな歯肉になります。
色の濃さや範囲によって回数が変わってきます。
ただし、禁煙が原因の場合、喫煙を続けると再発することがあります。
出典:ストローマンHP
3.メタルタトゥーの発生を防ぐために
これから差し歯やかぶせ物、ブリッジを入れる場合、治療の選択を考えることで、メタルタトゥーを防ぐことが出来ます。
また、今現在入れているかぶせ物の周りの歯肉に変色が見られないなら、これからメタルタトゥーにならないために出来る事があります。
3-1 土台(コア)の素材を選ぶ
銀合金ではなくファイバーコアで作製してもらうと良いでしょう。
ファイバーコアは歯と同じくらいの硬さなので、強い力が加わっても歯が割れにくいという最大の利点があります。
2016年から保険が適応になりましたが、かぶせ物に自費の物を選択した場合は、ファイバーコアも自費扱いになります。
下のイラストは、金属の土台をファイバーコアの土台に入れ替えたケースです。
3-2 かぶせ物をメタルフリーにする
保険でかぶせ物を入れる場合、前歯は「前装冠」という内側がパラジウム合金で唇側が白い硬質レジンというプラスチックを張り付けたかぶせ物、奥歯はパラジウム合金で作製したかぶせ物(FMCやブリッジ)を入れる事になります。
このかぶせ物に金属を使用しないオールセラミックなどで作製することでメタルタトゥーや、金属アレルギーの防止が出来ます。
ただし保険がきかないので高額になります。
下のイラストでは、金属の土台に金属のかぶせ物を入れた状態からファイバーコアの土台に金属を使用していないかぶせ物を入れました。
《かぶせ物 種類別の特徴》
《土台(コア) 種類別の特徴》
3-3 禁煙する
歯肉の着色の中で喫煙によるメラニン色素沈着の防止は「禁煙」することです。
レーザーや薬品での除去を繰り返しても喫煙を続ければまた再発してしまいます。
以下の関連記事もご覧ください
https://happysma.sakura.ne.jp/wp2024/stain-cause-approach/
https://happysma.sakura.ne.jp/wp2024/the-effect-of-tobacco-on-the-body/
https://happysma.sakura.ne.jp/wp2024/the-effect-of-tobacco-on-the-body/
4.まとめ
保険では制限が細かく定められており、残念ながら治療の質は最低限の物と、考えるのが無難です。
メタルタトゥーは審美的なものなのでその治療も自費になることがほとんどです。
一度かぶせてしまうとやり替えるには、また削り直したり歯の負担も増えます。
歯科医師とよく相談して、出来るならば最初からメタルフリーを選択することをおすすめします。
健康的なきれいな歯肉は明るい笑顔につながります。