新型コロナウイルスが流行っている昨今、治療を中断したほうが良いのか継続したほうが良いのか、判断がつかない患者さんは多いのではないでしょうか?
患者さんごとに症状と状況が違うから、治療の中断をして良いかどうかは担当医にしか分からないというのが大前提なのですが、
今回はそういったことを踏まえつつ、歯医者に行くか行かぬべきか、そして行くのならどうコロナウイルス対策をすれば良いのか説明していきたいと思います
1.延期してよい4つの治療と症状
1-1.定期健診
歯周病の治療・虫歯チェック・クリーニング等で定期健診に行かれているかたは、痛い・しみる等のトラブルがなければ通院しなくても問題ありません。コロナが落ち着くまで自宅で丁寧に歯を磨いてください
歯石がたまると虫歯や歯周病のリスクがあがります。もし、舌や指で歯石のザラザラが触知できるようであるのなら、そこを徹底的に磨いてください。フロスや歯間ブラシといった歯と歯のあいだをキレイにする道具は必ず毎日使ってくださいね。
参考記事
「細菌が溜まりやすい奥歯からの使用がおススメ!!~正しいデンタルフロスの使い方教えます~」
「歯ブラシでは落とせない歯間のプラークをしっかり除去~歯間ブラシの選び方・使い方~」
ブリッジが入っている人は、ブリッジのまわりにかなり汚れがたまります。その対策として、歯間ブラシに加えブリッジ専用のフロスをの使用がおすすめです。効率よく清掃できるし虫歯のリスクが下がります。
参考記事「歯のブリッジ、お手入れ次第で長持ちさせることができます」
1-2.ホワイトニング
ホワイトニングは審美治療なので、どうしてもやらなければならないという事情がなければ治療を先延ばしにしても大丈夫です
1-3.我慢できる入れ歯のトラブル
入れ歯のトラブルは
- 痛い
- 金具が折れた
- カタカタする
- 話しにくい(滑舌が悪い)
- 入れ歯の歯がとれた
- 入れ歯が割れた
と、多岐に渡りますが、我慢できる・市販品などで対処できるときは通院しなくて大丈夫です
入れ歯の適合が悪いときはドラッグストアに売っている入れ歯安定剤を使用しましょう。
参考記事「あなたにあった入れ歯安定剤の選び方と使い方のコツとは?」
痛くてかたい食べ物が食べられないときは、食べ物を柔らかいものにする、細かく刻むといった方法でやり過ごしましょう。
入れ歯の歯(人工歯)がとれたけど前歯だったりするのなら、直さなくても大丈夫です。しかし、前歯がないから見た目が気になる、どうしても直したい!という人は来院してもらっても良いかと思います
例外
総入れ歯が真っ二つに割れた人はごはんが食べられなくなるので歯医者に来てもらったほうが良いのではないかと私は思います。しかし高齢者・持病がある人で、入れ歯が割れても柔らかい物や流動食でしのげるというのなら、無理に来院しなくても大丈夫です
1-4.何度も取れてる詰め物・被せ物
患者さんによっては、同じ場所の詰め物や被せもの(補綴物)がとれることが繰り返しおこり、虫歯が原因で取れたわけではないからとりあえず接着剤(セメント)でもどしておく、といった処置をしていることがあります
だから、とれた補綴物が何度も脱離している箇所であり、患者さん自身も口の中の状況を理解できているという状況ならば、無理に歯医者に行く必要はないかと思います
取れたところは丁寧に歯磨きをして、歯が欠けないように硬い物を食べないよう注意してください。
しかし、補綴物が入っていない状態が長く続くと、歯が動いてしまい補綴物を新しく作り直さなくてはならないことも起こりえます。そのことをどうかご了承ください
また、ブリッジなどかみ合わせに影響が大きいものが取れたときは、脱離した状態を放置することが得策ではないこともあります。病院に電話して支持を仰いでもらったほうが安心ですね
2.条件付きで延期してよい4つの治療
2-1.小さい虫歯
歯の表面、エナメル質にとどまっている虫歯はちゃんと歯ブラシをしていれば進行することはありません
担当医から虫歯が小さい、経過観察でも大丈夫などと説明されていたり、黒いところがあったとしても長期間、黒い部分が大きくなってないといった場合は、すぐに治療しなくても大丈夫なばあいがあります
この判断は患者さんがするには少し専門的なので、治療を先送りにしていいか電話で担当医に確認するのをおすすめします
↑COかC1の状態なら虫歯は進行しない
参考記事「虫歯を自力で治す~治せる虫歯と治せない虫歯の見分け方~」
2-2.子供のフッ素塗布
毎回の健診で虫歯はない・問題ないといわれているお子さんで、自宅でしっかり歯が磨けているのならフッ素塗布は見送っても大丈夫でしょう。歯医者でフッ素塗布ができなかった分は、おうちでフッ素配合の歯磨き粉を使用してフッ素を補ってあげましょう
2歳になったら「2歳から始める虫歯予防!しまじろうの「キシリトールタブレット」」
6歳未満のお子さんには「乳幼児期に安心して使用できる歯磨剤『チェックアップこども500』」
2-3.詰め物・被せ物・根っこの治療
歯の治療は治療期間があいても大丈夫な時というものがあります。
- 虫歯をとって、削った部分をセメントで補った時(型どりはしていない)
- 根っこの中に最終的な薬が入って、仮の蓋を金属やプラスチックなどの硬い蓋にした時
- 根っこの病気が慢性期に入って骨の再生を待つ時
- 仮歯が入った時 など…
こういったタイミングだったら、次回の治療がのびてもそこまで問題が起こりません
しかし患者さん自身では治療を中断してよいのか判断がつかないと思うので、担当医に治療をストップしても良いかどうか聞きましょう
2-4.長期間、痛みのない歯の抜歯
抜く予定の歯でも、痛みがある歯とそうではない歯があります
- 歯がグラグラしているけど痛くない
- 根っこの先に膿ができてるけど痛くない
- 親しらずを抜く予定だが腫れてないし痛くない
- 歯の根っこしかない(残根)状態で痛くない
このように、痛みが出てない歯はすぐに抜かなくても大丈夫な時があります
しかし、抜歯を予定している歯は、抜歯をしなければならない何らかの理由があるので何らかのきっかけで痛みが出る可能性が高いことをご了承ください
対策として、抜く歯がある方で硬いものを食べないようにする、歯ブラシを丁寧にするといった工夫をして、痛みがでないように気を付けてください
抜歯の延期をしていいのかどうかは判断が難しいので、電話で担当医に聞いてみましょう
3.歯医者に行ったほうがよい3つの症状
3-1.歯がズキズキ痛い時
何をしていなくても歯がズキズキしている、頭痛もしてくる、痛くて眠れない、という人は歯医者に行ったほうが良いでしょう
痛みの原因は
- 虫歯が神経まで到達している
- 神経や根っこの先に炎症がおきてる
- 歯が割れている
- 親知らずが腫れている
といったことではないかと予想できます
これらは市販の痛み止めを飲めばどうにかなる状態ではないので、歯科医院に行ってしかるべき処置や抗生物質の処方をしてもらって、痛みの原因をなくしましょう
3-2.口内炎が2週間たっても治らないとき
口内炎は1週間もすれば治ってくるのですが、大きさが変わらない、むしろ大きくなってきたりただれてきたといったことが起きているのなら注意が必要です。
そして、2週間たっても全然治らない、ということであったら絶対に歯医者に行ってください。できれば口腔外科の先生がいる開業医のほうが良いです。
予約するときに
「口内炎が1週間治らないから口腔外科の先生に診てもらいたい」
と伝えると確実です
また、スマホなどで患部の写真を撮っておくと診断の助けになるので、可能なら撮影しておきましょう
関連記事「治らない口内炎や白・赤の変化は注意が必要?口腔がんについて」
3-3.根っこの治療が途中な時
根っこの治療はキリが付いた時なら治療を中断しても大丈夫なのですが、そうじゃないときに中断すると良くありません。
中断することよってキレイになっていた歯の内側が汚染されて症状がぶり返したり、ひどい時は虫歯が内側からできて歯が脆くなったり、抜歯の必要に迫られることもあります
もし、根っこの中の薬が最終的なものじゃない、仮の蓋をしなければならないときは治療を継続したほうが良いのではないかと考えられます
しかし、患者さんによって状況が違うので、治療期間があいてもも良いかは担当医に電話で聞いてみたほうが良いでしょう
↑一番右の状態になれば根っこの中に「最終的な薬」が入ったことになる。「仮の薬」が入っているときは治療の中断には担当医と相談したほうが安全
4.歯医者に行くときにできる12の自衛方法
コロナウイルスは飛沫・接触感染が主なので、それを踏まえて歯医者でできるうる対策を考えてみました。
4-1.予約制の歯医者に行く
3つの「密」を避けるためには、患者の来院時間を分散させたほうが良いです。
そのため、来院順に診断する病院より予約制の病院のほうが、患者が密集しないということになります
かかりつけの病院が予約制でないのなら、空いている時間を狙いましょう
4-2.待合室の外で待つ
待合室がよっぽど広くない限りどうしても人が密集しやすくなります。それを避けるために受付の人に待合室の外や自家用車で待ってて良いかを尋ねてみましょう。
医院によっては携帯で呼び出してくれたりポケットベルを渡すといった措置をとっていることがあります
4-3.問診表を前もって書いておく
初めて行く病院のときは問診票を記入してもらいます。病院によってはホームページで問診票をダウンロードすることができます。
前もって問診票を書いておくと医院での滞在時間を短くすることができ「満」を避けられます
4-4.症状の経過を紙に書いておく
飛沫感染を避けるためは、向かい合って人と話さないことが重要となります。それは歯科医師に対してもそうであり、問診(会話する)時間を短くしたほうが良いということになります
経過が一言、二言で済むならいちいち紙に書き起こす必要はありませんが、経過が長くて伝えたいことが多い時は紙にまとめたほうが治療の効率が良くなります
記入例を記しときますので、よかったら参考にしてみてください↓
記入例1
困っていること:
歯が痛い、かめない
場所:
右下 奥から2番目の歯だと思う
いつから:
3日前から
何をすると痛みがでるか:
何もしてなくても痛い。歯に食べ物や舌があたると痛い
経過:
3日前 少し違和感があったが我慢できた
2日前 ズキズキした痛みが出てきた
1日前 痛みのピークで何もかめない、ごはんを食べるのもつらかった
現在 昨日に比べれば痛みがおさまったがズキズキする
投薬状況:
2時間前に市販の痛み止め(バファリン)を飲んだ。
記入例2
困っていること:
歯に穴があいた
場所:
左上
いつから:
1週間前に穴があいた
何をすると痛みがでるか:
おとといから冷たいものにしみるようになった
経過:
1週間前 夕飯食べてたら歯がかけた。痛くなかった
2日前 冷たいものにしみるようになった
現在 何もしてなければ痛くない
投薬状況:
血圧の薬
4-5.治療する時以外はマスクをする
マスクしている時間を長くするために、口をあけなければならないとき以外はマスクをしていましょう
4-6.フェイルシールドやメガネをする
コロナウイルスは目から感染するので、フェイスシールドやゴーグルで目を守ったほうが良いです。しかし治療するときはフェイスシールドをとらないといけないので、待合室ではフェイスシールドをして、治療中はメガネをするのが現実的な対処法になります
コンタクトの人はメガネで行ったほうが良いと思います。メガネのすき間から飛沫が入ってくるということは十分に考えられるのですが、無いよりはましですね
また、レンズが小さいものより大きい物、普通のメガネより花粉症用のメガネのほうが飛沫対策には適していますね。
フェイスシールドの自作方法
用意する物
- OHPシート
- カッター
- マスク
- マジック
- A4用紙1枚
4-7.治療中は目をつぶる
目からの感染を避けるために、治療するとき目をあけないほうが良いでしょう
4-8.治療の合間にうがいをする
ウイルスは粘膜に付着して15~20分で体内に侵入するので、治療中はうがいをこまめにしましょう。ぐちゅぐちゅうがいに加え、顔を上に向けたガラガラうがいが有効です
4-9.治療の合間に水を飲む
これはテレビに出ていた専門家が言っていたのですが、ウイルスが体内に侵入する前に水を飲んでウイルスを飲んでしまうと良いそうです。飲んでしまったウイルスは胃酸で死んでしまうとのこと。
治療するとき水を持っていき、治療の合間に水分補給をしましょう。砂糖の入っている飲み物を避けるのは当然とし、できればお茶やコーヒー、紅茶などではなく「水」が良いですね。
4-10.口を拭くときは持参したハンカチを使用する
歯科医院によっては治療用ユニットごとにティッシュが置いてあることがありますが、それで口を拭かず、持参した厚手のハンカチやタオルなどを使用したほうが安全でしょう。ウイルスは手や鞄などにくっついているので、ハンカチがそういったところに触れていない、折りたたんだ内側の部分で口を拭きましょう。
4-11.予約は空いている曜日と時間帯にしてもらう
病院によっては、混んでいる時間帯や曜日があることがあります
だから、予約をとるときは受付の人に
「あまり混まなそうな時間帯にできないか?」
と聞いてみると空いている予約枠に入れてもらうことができるかもしれません
聞くだけ聞いてみましょう
5.まとめ
コロナ蔓延につき不要不急の外出は控えろと言われますが、判断が本当に難しいですよね…
歯医者に関しては、この記事で説明させていただいた内容が絶対!ではないので、あくまで目安として参考にしていただけでば幸いです
判断に困ったら、病院に電話して確認するのが確実なので、お手数ですがそのようにお願いいたします