歯科で麻酔をしたときに気持ち悪くなってしまう人がいます
アナフィラキシーなど重篤な症状でなければ、安静にしたり、ときには酸素などを吸っている内に症状がおさまったのではないでしょうか?
今回は、麻酔で気持ち悪くなった時に、何が体の中でおこっていたのか説明していきたいと思います
目次
1.血管迷走神経反射
麻酔をしたときに意識が遠のいたり、汗をかいて気持ち悪くなる原因の1つに、血管迷走神経反射があげられます。歯科麻酔後におこる偶発症の9割がこの症状と言われています。
これは、長時間立ちっぱなしだったり、炎天下での激しい運動、恐怖感や情緒的不安定、激しい痛みなどによっておきます
歯科治療に置き換えてみると、睡眠不足や体調不良、また治療に対して恐怖心が強い人が、麻酔をするときの痛みを契機におこすということになります
この反射がおこると、自律神経のバランスがくずれて血圧が低下し、脳血流が少なることで意識がなくなります。このとき徐脈、冷や汗などを伴います
1-1.注意をしたほうが良い人
- 若年者
- 女性
- 循環器障害を有する人
- 貧血
- 低栄養・低体重
- 歯科治療に強い恐怖を感じている人
1-2.予防法
恐怖心や痛みからおこる反射なので、それを感じないようにして治療をすれば大丈夫です。その予防法の1つに「鎮静法」というものがあります
笑気という気体を吸う吸入鎮静法と、点滴で薬液を注入する静脈内鎮静法があります。どちらも意識をなくして寝たような状態にしてから治療することになります
この治療法は設備がないとできないので、大きい病院や、開業医なら事前に電話して鎮静法ができるか確認しましょう
参考記事「麻酔がききにくい事ってあるの?親知らず抜歯の麻酔について」
2.過換気症候群
過換気症候群は、不安感により呼吸数が多くなり、血管中の炭酸ガスが少なくなることから血液がアルカリ性にかたむき、その結果、呼吸困難や四肢の硬直やしびれ、意識混濁がおこります。
2-1.注意をしたほうが良い人
若い女性
歯科治療に強い恐怖を感じている人
3.アドレナリン過敏症
歯科麻酔には麻酔の効果を高めるためにアドレナリンが入っています。このアドレナリンに過剰に反応すると全身症状がおこることがあります
症状としては、頻脈、不整脈、血圧上昇、頭痛、めまいなどになります
アドレナリンが体内で分解されるのは早いので、15~20分で血中濃度が半減し、症状は一過性になります。
3-1.注意をしたほうが良い人
以下の薬を飲んでいる人
- 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン、イミプラミン、クロミプラミン、トリミプラミン、アモキサピン、ドスレピン、ロフェプラミン、ノルトリプチリン)
- MAO阻害薬(抗うつ薬)(フェネルジン、トラニルシプロミン、イソカルボキサジド)
- 血圧や心拍数をおさえるβ遮断薬(インデラル、テノーミン、ハイパジール)
以下の既往がある人
- 高血圧症
- 甲状腺機能亢進症
- 褐色細胞腫
3-2.予防法
高血圧の人は、血圧をコントロールしましょう。可能なら上の血圧は140mmHgにおさええください
4.アナフィラキシーショック
アナフィラキシーショックとは、麻酔薬に含まれる安定剤や保存剤にアレルギー症状をおこすことを言います。(麻酔薬自体にアナフィラキシーをおこすことは稀と言われています)
かゆみ、発疹、水疱といった皮膚症状、呼吸器、循環器障害を起因物質投与後数分以内にひきおこします
アナフィラキシーは重篤なショック症状を起こすので、早期の対応が必要となります。
歯科麻酔をしてショックをおこした経験がある人は、必ず高次医療機関で歯科治療をするようにしてください
4-1.予防法
アナフィラキシーの予防は難しいです。
あえていうのなら、アレルギーは体調不良のときにおこしやすいので、歯科麻酔をするときに睡眠不足だったり体調不良であったら、歯科医師にその旨を伝え、治療を延期してもらったほうが安全でしょう。
5.まとめ
歯科麻酔によっておこる気分の不調は、大体が恐怖心による血管迷走神経反射です。歯科治療に恐怖心が強い人は、最初から鎮静法を選択するのも良いでしょう。
持病があったり服薬している人は、健康な人よりリスクが高いので、病状が安定してから治療したほうが安全で