高齢者の口腔ケア~介護者に知ってほしいお口のケアの必要性~

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普段何気なく行っている歯磨き。
いざ向かい合った他の人の歯を磨くことは意外と難しいことです。

椅子に座った状態で口腔ケアを行うと上の歯の奥歯はほとんど見えないし、歯と歯の間の汚れは歯ブラシだけでは取れません。

胃ろうなどで口から食べ物を取っていないのになぜ歯磨きが必要なのだろう。
そもそも口腔ケアってなぜしないといけないの?なんて思ったことはありませんか?

そんな疑問にお答えしていきましょう。

1.なぜ口腔ケアを行うのか

口腔ケアとは「歯と口のケアを行うことで全身の健康を守っていく」ことですが、お口の中の細菌は、体力や抵抗力の弱まった高齢者にとっては様々な病気を起こす原因になっています。

口腔ケアを行うことは、ご本人にも周りでお世話をする人にも、良いことがたくさんあります。

1-1 誤嚥性肺炎の予防

飲み込む力が低下すると唾液や食べたもの、あるいは胃液などと一緒に細菌を誤って気道に吸入したことで起こる肺炎で高齢者に多く見られます。

プラークは細菌の塊ですから、歯磨きの後は良くうがいをします。
うがいができない場合はスポンジでぬぐい取ったり、ガーゼで拭き取ります。

いずれにしても水分は残さないように注意をすることが大切です。

また、胃ろうなどで直接口から食物をとっていなくても、口の中の細菌は繁殖します。

誤嚥性肺炎は生命の危険に関わる怖い病気です。
清潔を心掛けましょう。

1-2 味覚の改善

味、味覚は舌の表面や口腔内の粘膜にある味蕾(みらい)という部分で感知しますが、味蕾の数は高齢になると減少します。
舌や口腔内が汚れているとさらに味を感じられなくなります。

ほかにも様々な原因がありますが、お口の中を清潔にするよう心がけましょう。

1-3 唾液の分泌を促進させる

お口の中が不潔になると、唾液が出にくくなります。
唾液の減少はドライマウスを引き起こし、乾燥することで虫歯や口臭の原因になります。

口腔ケアで清潔にすると唾液の分泌が促進することができます。
「唾液腺マッサージ」も有効ですので定期的に行うと良いでしょう。

唾液腺マッサージのやり方
画像:財団法人8020推進財団『はじめよう口腔ケア』

★補足★
 唾液が持っている様々な恐るべきパワーを紹介します!

①    自浄作用・・・唾液の流れがあることでお口の中の汚れや細菌がが、自然に洗い流されます。
②    抗菌作用・・・傷の治りを促進させる物質を含んでいます。
③    消化作用・・・唾液に含まれるアミラーゼという消化酵素がでんぷんを分解します。
④    再石灰化、中和作用・・・唾液の中のミネラルが初期虫歯を修復し、酸を中和して歯を守ります。
⑤    免疫作用・・・感染症から身体を守ります。
⑥    円滑作用・・・口の中が潤うことで食べ物を円滑に飲み込むことが出来ます。

お口の中でこれらのことが自然に行われています。唾液の力ってすごいですね。

1-4 口腔の機能維持と回復をはかる

「噛む」「飲み込む」「呼吸する」「会話をする」「表情を作る」などの口腔機能が低下すると、十分な食事が取れなくなり、免疫力が低下して摂食障害につながります。

身体全体の健康に関わりますので、口腔ケアを通して維持、回復をはかりましょう。

1-5 コミュニケーションを取り生活のリズムを整える

「歯を磨きますよ」「きれいにしてさっぱりしましょうね」などとたくさん話しかけることで口腔ケアが気持ちの良いものとして認識してもらえます。

何よりも介護者が笑顔で接することで安心してケアを行うことが出来ますね。

1-6 QOL(生活の質)の向上をはかる

実はQOLを高めることが口腔ケアを行う最大の目的です。

人が人らしく「好きなものを食べる」「話す」「思い切り笑う」などは人が生きていくうえで最も大切なことです。

自分の口でおいしく食べることで健康を維持していくのです。
毎日充実した生活を送ることが出来たらこの上ない幸せですね。

1-7 口臭の予防

お口の中の汚れが日々増えていくと、残っているプラークや食べかすが口臭の原因になり、部屋の中まで匂うことがあります。

歯と歯の間や、かぶせ物の周りを丁寧に磨き汚れを取り除きます。
殺菌作用のある洗口剤をブラシに付けて磨くのもおすすめです。

入れ歯は取り外して良く洗います。
見落としがちなのは「舌の汚れ」です。

舌苔(ぜったい)と言いますが、専用のブラシや柔らかい歯ブラシでやさしく奥から手前に数回動かして清掃をします。

1-8 虫歯・歯周病の予防

歯磨きで汚れ(プラーク)をきれいに取り除くことで、虫歯になることを防ぎ、歯周病の予防をします。

どちらも進行すると痛みや、不快感が強まり食事を取ることが困難になり、体力が低下してしまいます。

また、通院や治療が難しかったりするとご本人にも介護者にも大きな負担となります。
食後必ず磨かないといけない!と、気負わず一日に1回でも丁寧に磨ければ、予防としては問題ないでしょう。

2.実際に行う口腔ケア

口腔ケアの必要性はおわかりいただけましたか?次は口腔ケアを行うためにどんなことをするのか、詳しく見ていきましょう。

2-1 口腔清掃

口腔清掃とは「お口の中をきれいにすること」歯磨きですね。

歯磨き・うがい

歯磨きは歯ブラシ、歯間ブラシ、タフトブラシ、スポンジなど、その人の口腔内の状態によって様々な道具を使用して、プラークや食べかすなどの汚れを取り除いていきます。

歯ブラシ
●「タフト24」歯ブラシ…歯ブラシはヘッドの小さな柔らかいものが使いやすい 
画像:オーラルケアHP
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歯間ブラシ
●「DENT.EX 歯間ブラシ」…歯間ブラシは細いもので良く動かすのがポイント
画像:ライオンHP
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タフト
●「プラウト ワンタフトブラシ」…ワンタフトブラシはピンポイントで汚れを取る必需品 
画像:オーラルケアHP
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スポンジ
●「ハミングッド 口腔清掃用スポンジブラシ」…スポンジは柄が長物が使いやすく、使い捨てのものが衛生的です
画像:モルテンHP
amazon

スポンジブラシの使い方
画像:カワモトHP

これらの清掃用具の具体的な使い方については、
・『介護で使う歯ブラシならズバリ!これがおすすめ~必ずお役にたちます
・『介護の歯磨きが劇的に変わる!訪問歯科の衛生士が教える上手な磨き方
をご覧ください。          

義歯のお掃除

義歯(入れ歯)は放っておくと汚れがついてしまいます。

義歯 入れ歯 汚れ

義歯はその大きさに関わらず、食事の後には取り外して流水の下で歯ブラシか専用のブラシで良く洗います。
その際、歯磨き粉は表面に傷がついて細菌が繁殖するので付けないで磨きます。

義歯ブラシの使い方 義歯ブラシの使い方
画像:ライオンHP

★補足★
 義歯洗浄剤は使うべき?

お口の中には常在菌と言われる細菌がたくさんいて、目に見えない細菌が入れ歯の表面にも繁殖します。
水で洗っただけでは落とせないので、定期的に洗浄剤に付け置きして殺菌することをおすすめします。

舌・粘膜の清掃

舌や粘膜にこびりつくように付いている硬い汚れは、専用のジェルをスポンジに塗って、汚れを柔らかくしてからやさしく取り除きます。

無理にはがすと粘膜の表面に傷がつき、出血することがあるので慎重に行います。

舌ブラシ 
●「マウスピュア 舌ブラシ」
amazon

舌ブラシの使い方
画像:いずれもカワモトHP
●舌ブラシは舌の奥側から手前へ、一方方向に優しい力で動かします。
詳しい使い方については下の動画を見てみてくださいね!

2-2 口腔機能の回復

口腔ケアは直接お口の中を清掃するとともに、外から働きかける口腔機能の回復もじゅうような役割を持っています。

ご本人と介護者と一緒に楽しく行うことが大切です。

口腔周囲筋ストレッチ

口腔周囲筋とは名前の通り、唇や頬、舌、顎などお口の周りの筋肉のことです。

高齢になると、筋力が低下しますが、虫歯や歯周病で歯がなくなり柔らかい物ばかりたべたりすると、さらに動きが悪くなります。
病気やまひなどがあれば、なおさらです。

人との交流が減って話すことや笑うことが少なくなってしまうと筋肉が弱って飲み込みの悪さにつながります。
ストレッチで改善しましょう。

マッサージ
画像:カワモトHP

パタカラ体操

「パ」「タ」「カ」「ラ」と発音することで食べるために必要な「飲み込み」の訓練になります。

食べ物を上手に喉の奥に運ぶにはお口の周りの筋肉や、舌の動きが悪いとスムーズに出来なくなります。
お食事の前に行い、出来るだけ大きく、はっきりと楽しく行いましょう。

パタカラ体操
画像:埼玉県歯科医師会HP

嚥下体操

嚥下(えんげ)とは「飲み込み」のことです。

お口の中だけでなく飲み込むために必要な喉や、さらに飲み込む食道の筋肉まで、食べ物の通過に関わる筋肉を鍛えるための運動です。
無理のない範囲で続けましょう。

嚥下体操
画像:熊本県歯科医師会HP

3.まとめ 

口腔ケアがお口の中だけに留まらず、全身の健康に深くかかわっていることがおわかりいただけましたか?

口腔内の細菌が原因になる病気はたくさんあります。

ケアを続けることでそれらの病気が予防できるとしたら…。
ご本人も介護者にもたくさんのメリットがあります。

介護のお世話は大変ですね。
訪問歯科を行っている歯科医師、歯科衛生士に相談することもおすすめいたします。

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