歯から分かる、虐待の兆候!歯科従事者がやれることとは

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

親から虐待を受けている子供は虫歯が多いという話、聞いたことがあるかたもいらっしゃるのではないでしょうか?
この話は事実であり、虐待された子供は明らかに口腔内に異常をきたしているという悲しい報告が各地であがっています

たとえば、新潟県の施設に一時的に保護された81%のお子さんに虫歯がありました。同年代の子供の虫歯の全国平均は54%であり、その差は歴然です
更に、このうち治療をされていた子供はたったの4%しかいなかったのです!
そして、一度も治療をうけていない子供が41%もいるのです。ちなみに治療をうけていない子供の全国平均は、約1/6の7%です

また、東京都歯科医師会の調査でも、虐待によって保護施設に隔離された子供は虫歯の罹患率が全国平均より明らかに高いと明言しています 

虫歯が多いイコール虐待という方程式がすぐさま成り立つわけではありません。しかし、不可逆的な疾患である虫歯が多いということは、虐待のSOSである可能性が高いということになります
歯科医療従事者はお子さんの口の中を診つつ、同時に虐待などの兆候を察知することが必要とされているのです

1.コロナ禍で虐待の報告数は増加している

終わりの見えないコロナ禍のせいで、まずヨーロッパでDV・虐待などの件数が上がっているという報道がされました。では、日本ではどうなのでしょう

厚生労働省の発表によりますと、全国の児童相談所が1~3月の児童虐待件数(速報値)を取りまとめた結果、前年度と比べて1~2割増加していたそうです
コロナの影響であると断定することは今のところできませんが、関係がまったくないと言い切ることもできません。なぜならストレスの矛先は弱者に向かうからです。
コロナ関連の各方面のストレスは、測りかねないレベルであることは想像に難くないと思います

 ですので、コロナと報告件数の因果関係が証明されてはいないですが、歯科医療従事者は普段の治療の際「虐待は増えているという」前提で患者さんと接したほうが得策と言えるでしょう

2.虐待は大きくわけて4つある

まず、虐待とは一体どういったことが当てはまるのか、説明していきます

2-1.身体的虐待

  1. 殴る・蹴る・つねる
  2. 食事を与えない
  3. 冬に戸外に閉め出す

身体的虐待は周囲に分かりやすく顕在化しやすいです。しかし服の下の部分を暴行するといったケースもありますので、見えないところにケガがないかチェックする必要があります

2-2.ネグレクト(保護の怠慢・拒否)

  1. 子育てをしない
  2. 子供も捨てる
  3. 学校に行かせない
  4. 不潔にする
  5. 病院につれていかない

子供の最低限の世話すらしない、病気になっても放置するというのがネグレクトになります
虫歯が多いお子さんは、ネグレクトに当たるといえます

2-3.性的虐待

  1. 子供に性的な接触をする
  2. 性的接触・暴力をする
  3. ポルノグラフィティーの被写体にする
  4. 性的な場面を子供に見せる

性的虐待は本人が告白するか家族が気が付かないとなかなか顕在化しません
発生時期が早いばあいは、本人が虐待と気が付かないこともあります。乳幼児期からもおこりうる虐待です
また、女親から男の子供に対してもおこることがあります

2-4.心理的虐待

  1. 暴言をあびせる
  2. 無視をする
  3. 兄弟間での明らかな差をつける
  4. 自尊心を傷つける
  5. 親のDVを子供に目撃させる

これは子供の心を死なせてしまう虐待と解釈すると分かりやすいかと思います
また、子供に直接危害を与えなくても、両親のDV(暴力)を子供に見せることを面前DVと言い心理的虐待にあたります。これは近年報告件数があがってきています

3.口腔所見での虐待の診断ポイント

虐待されている子供は、虐待による口腔の外傷がないと歯医者にかからせてもらない事がほとんどになります
もし、虐待の可能性がある子供が運よく歯科医院を受診したた、保護者が子供を連れてきたことを評価しつつ、虐待の兆候をすくいとってあげ、虐待予防につなげましょう

3-1.下の前歯が虫歯!

虫歯の数ではなく虫歯がどこにできているかが重要になります
カリエスリスクの低い下顎前歯が虫歯になっているのは、相当デンタルケアをされていないという証明になります

3-2.上顎前歯以外の外傷!

子供の外傷でダメージをおう歯は90%以上が上顎乳中切歯と上顎中切歯になります
もし、上顎前歯以外に外傷が複数見られる場合は、日常的に暴力を受けている可能性があります
顔面・頭部・腕・手足などもチェックし、可能ならば服の下にケガがないかチェックしましょう

3-3.多数歯う蝕・失活歯

たくさん虫歯があったり、神経が失活したまま放置してあるときはネグレクトの可能性があります

4.虐待は違和感で察知する

子供がだす虐待のSOSは「不自然さ」が最も重要なサインとなります
この「不自然さ」を察知した関東のある歯科医院では、思いもよらない虐待が発覚した例があります

その歯科医院に来院した10歳の女の子は、診察台に寝かされたときにパニックをおこしてしまったそうです。若い男性歯科医師はあばれる子供に慣れているということで、治療を決行しました
同僚の女性歯科医師は、女児が母親にべったりとくっついたり治療を拒否する姿から違和感を感じ、聞き取りをしました。そこで、「兄から寝ているきに暴力をふるわれている」と言われたのです。
女性歯科医師は性的虐待ではないかと勘づき帰宅してから通告。結果、潜在的におこなわれていた虐待が発覚したのです

4-1.子供のおかしい様子

  1. 服が汚れていて臭いがする
  2. 季節にそぐあわない服を着させられている
  3. 食事を与えられるお菓子ばかり食べているため太っている
  4. 無表情で爪を噛んだり指をしゃぶる
  5. 極端におびえる
  6. 親の顔色をうかがいすぎたり、親がいるのにスタッフに過剰に甘える
  7. 家に帰りたがらない

このような違和感が重要なSOSになります

4-2.親のおかしい様子

  1. 子供の病気に興味がない
  2. 子供を突き放す態度をする、ぐずった時にちゃんと対応できない
  3. 子供やスタッフに癇癪をおこす
  4. 子供のけがに不自然な説明をする

親の様子がおかしいときも注意が必要です

5.虐待が疑わしい子供がいたら189通告する

虐待の「疑い」があるときは虐待の事実の確認をする必要はないので、すぐに児童相談所に通告しましょう。

189(いち早く)に電話をすると管轄の児童相談所につながります

6.まとめ

虐待は密室で行われるので、分かりやすい身体的虐待でなければ発覚するのがむずかしいとされています

しかし、歯科医療従事者は虐待のSOSの表れやすい口腔内の管理を任されているので、上記で説明した不自然な感じや違和感を感じたらすぐに通告して、被虐待児を助けてあげましょう

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

SNSで最新情報をチェック

コメントはこちらからどうぞ

コメントを残す