はえたばかりの歯が茶色い?エナメル質形成不全とは

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歯が虫歯になると茶色くなったりするのはご存知かと思います
しかし、歯がはえたばかりなのに歯の色が変だったり、形がおかしいときがあります

ちゃんと歯磨きをしているのに、なんで虫歯になっているの?

そう不思議におもわれるかたもいらっしゃるのではないでしょうか
もしかしたら、その歯は虫歯ではなくてエナメル質形成不全といった症状によるものかもしれません

今回は、この病気の特徴やケアの仕方について説明していきたいと思います

1.エナメル質形成不全とはエナメル質がうまく作られなかった歯のこと

歯の表面にはエナメル質というとても固い組織があります。エナメル質が固くなる(石灰化する)時期は、乳歯なら母体の中にいるときに、そして永久歯なら出生時から3歳までの間となります。

歯の石灰化

石灰化する時期に、エナメル質のもとであるエナメル芽細胞が障害されるとエナメル質の量が少なくなり、また、エナメル質の石灰化がうまくいかないとエナメル質の質が悪くなってしまいます。

エナメル質形成不全

2.エナメル質形成不全の歯の特徴

では、エナメル質形成不全をおこしている歯にはどういった特徴があるのでしょうか。

2-1.歯の色がおかしい

歯の色が白、黄色、褐色など、正常な歯の色と少し違います。変色の範囲は一部から大部分まで、パターンは多岐に渡ります

2-2.歯が欠けている

はえてきた当初から歯が欠けていることがあります。一部だけ欠けているときや、歯が崩壊しているかのような場合もあります

2-3.虫歯になりにくい部分に不自然な変色がある

歯には虫歯になりやすい部分となりにくい部分があります。エナメル質形成不全の歯は、虫歯になりにくい部分に変色をきたします。

たとえば前歯だったら虫歯になりやすい歯頚部ではなく表面の歯面だったり、臼歯だったら歯の溝ではなくツルツルした部分に虫歯のような変色が起こります

2-4.虫歯が進行しやすく、虫歯になりやすい

エナメル質が弱いので虫歯の進行が速いです。また、歯の表面がザラザラしているので汚れが溜まりやすく、虫歯になりやすいです

2-5.歯が削れたりわれたりすることがある

歯がもろいので、歯ぎしりで歯が徐々に削れてしまったり、ある日いきなり折れてしまうことがあります

2-6.きめ細やかなケアが長期的に必要

虫歯にならないように、家庭での歯磨きがとても重要になります。また、定期健診でフッ素塗布をしたり年齢ごとのブラッシング指導を受けることも大切です。検診の感覚は2~3ヵ月に1回くらいのペースが良いでしょう

2-7.虫歯の染めだし液に染まらない

これは歯科医サイドではないと分からない特徴なのですが、エナメル質形成不全は虫歯のような見た目をしていますが、虫歯を染める薬液に染まらないことがあります

3.考えられる原因は多岐に渡る

この病気の原因は色々あり、大別すると遺伝性ではない局所的な要因によるもの・全身状態に起因するもの、そして遺伝性のものの3つに分けられます

3-1.局所的原因

局所的原因でおこったエナメル質減形成は、左右非対称に発生します

アイコン 乳歯の外傷

乳歯を思いきりぶつけてしまうと永久歯の歯の一部が茶色くなってしまうことがあります。これを別名ターナー歯と言います

Turner歯 Turner歯 Turner歯

アイコン 乳児のひどい虫歯

虫歯が酷くなると歯の神経が虫歯菌に汚染されてしまい、根っこの先に膿の袋ができます。乳歯の虫歯が酷くなって根っこの先に膿の袋が溜まると、下にある永久歯が感染してしまうことがあります。エックス線写真を撮ってみて、膿の袋が永久歯の歯のまわりにあるはずの白い線を消してしまうくらい大きくなっていたら、すぐに抜歯をしないと永久歯に悪影響を及ぼします。

根尖性歯周炎
↑これは永久歯の根尖病巣だが、乳歯にも同じように根っこの先に膿の袋ができる

軽傷なら心配する必要はありませんが、症状の程度は病院で診察しないと分からないので、乳歯の虫歯がひどくなって歯ぐきから膿が出てきたらすぐに歯科医院に行きましょう。

アイコン 出産直後の挿管

赤ちゃんが生まれてすぐに気管挿管をしなければならないときがあります。そのとき、チューブをテープで貼るのですが、チューブに位置によって圧迫された顎の下にある歯に悪影響を及ぼすことがあります

3-2.全身状態に起因するもの 

全身状態が原因としておこるエナメル質形成不全は、左右対称におこることが多いです

永久歯の発育年代表
↑歯に異常がおきた場所に該当するラインを左に辿っていくと、何歳ごろに異常がおきたのかわかる

エナメル質減形成
↑上の図と合わせてみると、1~2歳のときの病気が原因だったと分かる

アイコン 母体の栄養障害や病気

母体の栄養障害や妊娠初期の感染。また、特定薬物の長期継続投与などがあげられます

※妊娠時におこる偏食による食事の影響と、この病気の関連性はみられません

アイコン 子供の栄養失調

カルシウム,リン,ビタミンACD欠乏があげられます。とくにビタミンDの欠乏は歯に悪影響を及ぼします

昔は栄養状態が悪かったので栄養失調のお子さんがくる病にかかりました。現代は栄養状態は良くなりましたが、食物アレルギーで食べるものが制限されてしまったお子さんがくる病にかかってしまうことがあります。
くる病だと歯の神経が大きいといった特徴があり、歯に外部刺激の抵抗力がないといったことから虫歯が一気に進行してしまい、突然歯がいたくなることがあります。

アイコン 生後1年以内の高熱を伴う病気

高熱を伴う病気の影響で、エナメル芽細胞が障害されてしまうことがあります

特にウイルス性感染症(麻疹、水痘、耳下腺炎、突発性発疹、風疹)が圧倒的に多い傾向があります

エナメル質減形成

3-3.遺伝によるもの

遺伝によるエナメル質形成不全は大きく分けて4タイプに分かれています

  • 1つめはナメル質が薄く、冷たい物にしみます
  • 2つめはエナメル質の質が悪く、表面がザラザラして着色しやすくなります
  • 3つめはエナメル質の質が悪く、歯がチーズのようにめくれて冷温刺激に反応します
  • 4つめはエナメル質がほどんとなくて神経が多く、歯がすり減りやすいです

遺伝によるエナメル質形成不全のばあいの治療法は、成長してかみ合わせが完成するまでの間に、なつべくかみ合わせが低くならないように保持していくことが重要になります。臼歯はすり減りにくい金属の被せものをかぶせてあげたり、前歯は白いプラスチックの被せもので見た目と形態を修正していきます

知覚過敏などの症状がでたときはCRといった白いプラスチックで補ったり、セメントで埋めて対応します

4.自分でできる予防方法

エナメル質形成不全の歯は、もろく、ザラザラしているので、毎日のケアで予防をしなければなりません

その方法を説明していきます

4-1.フッ素配合の歯磨き粉を使用する

虫歯予防のために、歯磨き粉に含まれているフッ素をエナメル質形成不全の歯にたくさん塗布するようにしましょう

4-2.研磨剤が入っていない歯磨き粉を使用する

歯が柔らかい傾向があるので、研磨剤が無配合のものを使用しましょう

4-3.歯ブラシのヘッドは小さい物にする

歯の表面がザラザラしていたり歯が欠けていることがあるので、歯ブラシのヘッドは小さめにして小刻みに動かして磨きましょう

4-4.保護者が仕上げ磨きをする

お子さんは嫌がるかもしれませんが、小学生のうちは保護者の仕上げ磨きをしてあげたほうが安心です。最低でも、小学校2-3年生までは必ず親御さんもケアをしてあげてください

5.まとめ

エナメル質形成不全は色々な要素によっておこります

一番大切なのは、本人がそれに罹患しているかどうか早めに気が付くことです

もし、そういった歯があったときは、きめ細かなケアをして歯を守ってあげましょう

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