「雨が降ると古傷が痛む」とはよく聞く言葉ですが、皆さんの中には「雨が降るとなんだか歯がシクシクと痛むなあ…」という経験をされたことがある方がいらっしゃるのではないでしょうか?
天気が良くなれば自然と痛みもなくなるから、あまり気にせずにそのままにしている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし!「雨の日に歯が痛む」というのは身体が出している歯の不調・トラブルのサインである可能性もあるのです。
すぐ治る痛みなら放っておいてもいいや…と放置したままにせずに、そのサインをしっかり受け取って自分の歯の健康について一度立ち止まって考えなおしてみてください。
この記事では、雨が降ると歯が痛くなるのはなぜなのか?ということについて紹介していきます。
1.雨の日だけじゃなかった!山の上、空の上で起こる歯の不調…
冒頭では雨の日に起こる歯痛について言及しましたが、この痛みを引き起こすメカニズムはたとえよく晴れた日であっても働いてしまう状況というのがあります。
それが、標高の高い山の上にいるときと、飛行機などに乗ってはるか上空にいるときなのです。
これらに共通するのは「気圧の変化」です。
雨の日などに歯が痛むのには「気圧性歯痛(きあつせいしつう)」という名前がついているのです。
ちなみに、飛行機などに乗っているときの気圧の変化によって引き起こされるものには「航空性歯痛」という名前がつけられており、航空会社のサイトでも注意喚起されている症状となっています。
では、この「気圧の変化」というのがいったいなぜお口の中にまで影響を与え、痛みとしてあらわれるのかをご説明しましょう。
1本の歯の内部には「歯髄」が集まっている歯髄腔という空間があります。
これを覆っているのが「象牙質」であり、さらにその外側を「エナメル質」で覆っているのが歯です。
基本的に歯髄腔の空間にある気圧は、体の外にある気圧と同じになるように保たれています。
しかし雨が降ったり、高い山の上に登ったり、上空を飛んでいるとき、つまり気圧が急激に低気圧(空気の圧力が弱くなった状態)の状況に身を置かれると、歯の内部の気圧はこれに合わせて調整をすることが間に合わず、歯の内部の空気は膨張し始め、それによって近くの血管や神経が圧迫されることによって「歯が痛い!」という状況を作りだしてしまうのです。
わかりやすいのは、山の上に袋のポテトチップスを持っていくと袋がパンパンに膨れてしまうというものです。
山の上では酸素が薄いということもありますが、こうしたメカニズムによって歯痛を起こしやすくなってしまうのです。
急な雨や爆弾低気圧、梅雨の時期や台風が来たときも歯の痛みを感じてしまいやすくなります。
飛行機に乗っているときには耳もなんだか変になりますよね?
あれも機内の気圧が急に変化したために耳の中(内耳)の空気が膨張・収縮しようとするために起こるものです。
以下は日本航空株式会社JALのサイトに載っているものです。
“歯が痛い”
航空機が上昇・下降する際に歯が痛くなることがあります。この原因は虫歯や処置中の歯の中に含まれている空気が膨張・収縮するためです。虫歯は旅行前にはやめに治療しておきましょう。
飛行中に歯が痛んだ場合は、そのまま放置せず、到着後すみやかに歯科医を受診してください。また、痛みがひどい場合は機内に鎮痛剤がございますので、客室乗務員までお申し出ください。
出典:日本航空株式会社JAL公式HP「機内で発生しやすい症状とその対処法」
2.実はまったく気圧の変化で歯痛を感じない人も
しかし、これらの気圧の変化が急激に起こる状況にいても、歯の痛みをまったく感じない人もいます。
それでは、どんな人が歯痛を感じやすくなるのかご紹介しましょう。
①虫歯がある人
自分では自覚がないけど虫歯ができてしまっている人、もしくは痛みや凍みることが日常生活の中であるけど放置してしまっているという人には気圧性歯痛が起こりやすくなります。
②虫歯治療中の人(とくに歯の神経を取る治療に通っている)
虫歯治療中の人は治療の際に歯の神経のそばをさわったりもしますので、気圧の変化による歯の痛みにも敏感になりやすくなります。
とくに神経の治療をしている人はとりわけ敏感になりやすくなります。
神経の治療をしている・これからすると歯医者さんにて決定した人の中で近々登山をする予定があるとか、旅行で飛行機に乗る予定がある…という方は一応担当医に相談しておきましょう。
治療開始のタイミングを考慮してくれたり、痛み止め薬を処方してくれるなどの必要な対処を取ってくれます。
③以前虫歯ができてしまい、そこに詰め物をして治した人
詰め物と歯の接着部分から気づかぬ間に虫歯になってしまっていたということがあります。
普段の生活であまり痛みを感じていなかったり、虫歯の進行がまだ初期段階だったりすると低気圧の状況にいて初めて痛みを感じるということもあるかもしれません。
長期旅行や海外出張などを予定している人は、事前に歯医者さんを受診して治すべき虫歯はないかチェックしてもらいましょう。
とりたてて現在何か歯に不調を覚えることがなくても、「虫歯ができてないか心配だから…」という理由だけで歯医者さんは受診していいのです!
④歯茎や歯の根に膿みが溜まっている人
虫歯はなくとも、歯茎が腫れていたり、歯茎のところにポチッとした小さなできものがある人は要注意です。
気圧の変化の影響を受ける可能性があります。
⑤歯周病になっている人
梅雨の時期など、天気が不安定な時期には気象変化によって免疫力が低下してしまい、歯周病が悪化してしまう人などもいます。
3.低気圧歯痛で苦しまないために
①定期的に歯医者さんを受診する
少しでも不調があったら「気のせいかも?」という症状でもいいので、お近くの歯医者さん、かかりつけの歯医者さんを受診してみましょう。
もしかしたら「気になっていたところは問題なかったけど別の歯の虫歯が見つかった」とか「親知らずがけっこう生えてきていて、このままだと他の歯に悪影響なので抜歯したほうがよいと教えてもらえた」なんてこともあり得ます。
また、思い立ったときに歯医者さんを受診するのはなんだか気が乗らない、面倒くさいという方はいっそ歯医者さんの定期検診(スケーリング)に通う習慣を作るのもアリです。
歯科衛生士さんに歯のお掃除や歯磨き指導をしてもらえる定期検診は、その人のお口の中の環境によって「〇ヵ月ごとに通ってもらうのが目安です」と教えてもらうことができ、会計の際に〇ヵ月後の日付で次回予約を取っておけばラクチンです。
定期検診では虫歯の早期発見をすることもできます。
虫歯は早めに見つけておけば早期治療に乗りだすことができます。
虫歯の進行レベルが低ければ簡単に1回で終わる治療で済ませられることがあります。
しかし、そのまま放置してしまいどんどん進行してしまうと「歯の神経を取らなきゃいけなくなったがそのためには何回か通いつめないと治療完了しない」とか「抜歯しなくてはならなくなったので麻酔を打たなきゃいけない」などのより面倒な事態になってしまうこともあります。
脅すわけではありませんが、歯の健康のためという意味でも歯医者さんに定期的に通うことはとっても大切です。
②鎮痛剤を家に常備しておく
歯医者さんでは(必要がある場合は)市販では売っていない強い効き目の痛み止めを処方してもらえます。
が、ひとまず痛みが出てすぐに対処したい場合はやはり常に家だったりバッグの中に鎮痛剤を常備しておくことでしょう。
③日々の歯磨きをしっかりと
痛みが出たときの対処法も大切ですが、一番は何気ない日常の中でも常に歯の健康を気にかけた行動をすることです。
歯磨きせずに寝てしまったり、甘いジュースやお菓子をダラダラ食いしてしまったり、歯磨きはしてもほんの数秒で終わるテキトーなものだったりすると、歯医者さんで虫歯を治してもまたすぐに新しい虫歯ができてしまいます。
歯は1本ずつ丁寧に歯ブラシを小刻みに動かしながら当てることが大切です。
正しい歯磨きのしかたについては、『その磨き方で大丈夫?正しい虫歯の歯磨き方法教えましょう』の記事をご覧ください。
4.まとめ
雨のたびに歯が痛くなってしまってウンザリしてしまっている方も多いかもしれません。
しかし、それは体が出している「ここに不調があるよ!」というサインなのです。
ぜひその声を聞いて、歯のトラブルを解決するために歯医者さんを頼ってくださいね。