最近のねこブーム。テレビでねこのかわいい姿を見ない日はありません。
気ままなイメージですが、甘えてくれたり、玄関でお迎えをしてくれたり、癒されますね。
散歩の必要がなく、トイレのしつけも数回で覚えてくれるなど比較的手間もかからなく、飼いやすさもねこの魅力です。
あまりのかわいさに「ねことキス」。ねこを飼っているとそんな場面はたくさんあることと思います。
また、ねこの方からキスをしてくることもあります。挨拶や愛情表現だったり、いずれも心を許していてくれるからこそなので、飼い主としてはうれしいことです。
しかし、ねことのキスは実は様々な病気の原因になるので、注意が必要です。大切なねこと楽しく生活するために「キス」からおこる病気について考えていきましょう。
目次
1.主な動物由来感染症
動物から人に感染する病気の総称を「動物由来感染症」または「ズーノーシス」と言います。
感染症がうつることを「伝播」と言い、動物から直接うつる「直接伝播」、動物と人の間に何らかの媒介物からうつる「間接伝播」がありますが、今回はキスがテーマなので直接伝播についてお話します。
1-1 パスツレラ症
ねこからうつる病気の代表です。パスツレラ菌は100%のねこが保菌しています。
室内飼いしているねこも関係なく持っている菌ですが、ほとんどが発病をしません。
「身体がだるい」「咳などのかぜに似た症状が出る」「首のリンパが痛む」「疲れやすい」などの症状が出たらこの病気かもしれません。
パスツレラ症自体は抗生物質を1週間ほど飲めばよくなりますが、元々、糖尿病や肝機能障害の病気を持った人は重症になったり、死亡につながることもあるので、十分な注意が必要です。
1-2 コリネバクテリウム・ウルセランス症
平成28年5月に福岡県の60代の女性がこの感染症で死亡しました。この女性は3匹の野良ねこに日常的に餌を与えていて、女性の血液とねこからこの病気の菌が確認されています。
ねこが咳やクシャミ、鼻水など風邪様症状、皮膚や粘膜潰瘍などが見られる場合は過度の接触は避け、触ったらよく手を洗いましょう。
野良ねことキス。あまりないと思いますが、クシャミが原因になることは考えられますね。
1-3 カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症
この病気の原因になる細菌もねこの口の中に常在しています。
噛まれたり引っ掻かれたりすることで感染、発症します。
症状は発熱、倦怠感、吐き気、頭痛などですが、極めて稀にしか発症しないと考えられています。
しかし致死率は高く、重症な敗血症になると約30%の方が亡くなるというデータがあります。怖いですね。
ねこに触れたら手洗いをする習慣が大切ですし、噛まれたり、引っ掻かれたら消毒をしましょう。
2.寄生虫・原虫由来によるもの
昔の飼いねこは、家の中から外に散歩に出かけては自由に行動していましたよね。
外でネズミや虫を捕まえたり、他のねことけんかをしたり。今よりずっとワイルドな環境でたくましく生きていました。
今は完全室内飼いが多く、歯磨き、お風呂、ブラッシングなどキレイにしているねこが多くなっています。
しかし毎年予防接種を受け、虫下しをおこなっていても、実は寄生虫の心配はあるのです。
ほら、毛づくろいをしながら一生懸命おしりをなめているでしょう…?
2-1 トキソプラズマ症
ねこと関りが深いのがトキソプラズマ症です。正式名は「トキソプラズマ原虫」。
多くの動物、鳥が持っている寄生虫の一種で、ねこ以外の動物に感染した場合筋肉の中でじっとしているのに、ねこの体の中でだけ増殖します。
ねこのウンチの中に排出されるのでねこのトイレの掃除の際は注意が必要です。
通常は感染しても無症状ですが、発熱、倦怠感、リンパ節の腫れなどが起こることがあり、目に発症することもあります。感染ルートは何らかの形で口から入る可能性が考えられます。
《妊婦さんは注意!》
妊婦がトキソプラズマ症に感染すると、流産や先天的な障害が生じることがあります。妊婦さんはねこのトイレ掃除は誰かにお任せしたほうが安心ですね。
2-2 トキソカラ症(回虫症) ・・・野良ねこに多い
白いミミズのような虫が原因です。
感染しているねこはほぼ無症状ですが、人に感染すると発熱、倦怠感、食欲不振などが見られ、目に入ると視力低下を起こし、脳に入るとてんかん発作を起こします。
感染ルートは感染したねこのウンチの中に排出された回虫卵が口に入ることで感染します。
野良ねこの感染率はかなり高いといわれていますので、保護したら動物病院で駆除薬を投与して駆除しましょう。
いずれの場合もねこの糞便が人の口に入ることが原因ですので、おしりをなめているねことのキスは、やっぱり危険なことと言えますね。
3.ねこと上手に暮らす方法
いろいろな病気を紹介しましたが、必要以上に怖がることはありません。
ねこと上手に暮らすには、飼う側の人間に守るべきルールがあります。それが互いに幸せに暮らしていく事につながります。
3-1 完全室内飼いで
「閉じ込めてしまうのはかわいそう」と思う方もいますが、外に出ることで起こる病気やけが、交通事故などの危険を防ぐことができます。
その点室内で飼うメリットは健康管理がしやすいですね。キャットタワーを置くなど上下に移動することで適度な運動になったり、おもちゃで遊んであげることで快適な環境を作ることができます。
ただし、室内には電気のコード、コンセント、誤飲など、ねこにとって危険なこともたくさんあります。ねこが安心して過ごせる部屋作りをしてあげましょう。
3-2 食べ物を自分のはしで食べさせない
人間の食べ物は塩分が多く、肝臓、腎臓に負担をかけ、尿路結石や脂肪肝の原因になります。
かわいい顔でおねだりされても食べさせてはいけません。ましてや自分のはしで食べさせると、唾液を介して先ほど説明した様々な病気の感染のリスクがあるのでやめましょう。
基本的には、ねこの年齢にあった固形のドライフードを正しい分量を食べさせます。
3-3 ねこのトイレはいつも清潔に
ねこはもともときれい好きなので、よごれたトイレは使ってくれません。
おしっこを我慢して病気になったり、トイレではないところで粗相をしたり。
おしっこから泌尿器に関わる病気の早期発見につながることもあり、ねこの健康チェックにもなります。
もちろん寄生虫の感染防止も。
3-4 かかりつけの動物病院で定期検診を受ける
病気の早期発見、早期治療が大切なのは人間も動物も同じです。大切な家族。定期検診はかかせません。
一般的な検査項目の健康診断は、問診、視診、触診、聴診、血液検査、尿検査、糞便検査があり、病院によって違いはありますが、5,000円~10,000円くらいかかります。
そのほかに必要に応じてレントゲンや、歯科検診などがあります。受ける頻度は5歳以降は年1回、10歳以降は半年に1回を目安にすると良いでしょう。
4.まとめ
どこでどんな形で感染するのかわからない病気。完全に防ぐことは難しいことですが、日ごろの小さな努力で回避できることはたくさんあります。
かわいいねことの生活、いつまでも続いてほしいですね。
今回は口からうつる病気についてお話しました。過度な接触は出来るだけ避けて、適度な距離感を保っていくことが大切です。
かけがえのない家族との毎日に少しでもお役に立てれば幸いです。