インプラントをするにあたって、残念ながらインプラントをするには注意が必要な病気があります。
絶対にインプラントをやってはならない人・インプラントはなるべくさけたほうが良い人、それぞれの病状と理由について説明していきたいと思います
目次
1.インプラントができない人
まずインプラントをするのは絶対に避けたほうがよい人について説明します
1-1.血液疾患がある人
血液疾患の影響で出血のコントロールができない患者さんや、治療に際し免疫力が抑制されている患者さんは、インプラントをすることができません
インプラントを行えない血液疾患には以下の病気等があげられます
- 血友病
- 血小板減少性紫斑病
- 急性白血病
- 慢性白血病
1-2.透析をしている人
透析をしている人は、唾液の量が健常な人の1/4まで減少すると言われています。そのため口の中が乾燥しやすくなり、歯周病やインプラント周囲炎になりやすくなります。
また、透析の影響で腎性骨異栄養症という骨代謝障害がおこります。骨の代謝がうまくいかないと、インプラントと骨がちゃんとくっつかないと言われています
1-3.精神疾患を有する人
精神疾患には神経症、統合失調症、人格障害、うつ病などがあります。これらの病気があると不定愁訴を訴えることが多いので、感情面で長期的な安定がはかれない人はインプラントをすることができません
1-4.骨の高さや量が足りない人
インプラントをするには、骨にインプラントを埋め込まなければなりません。そのため、埋め込みたいところの骨の高さや量がない人は、その時点でインプラントはすることができません。
(骨量が少ない人がインプラントをおこなうには、インプラントのオペとは別に骨の移植や軟組織のオペをして、インプラント周囲組織の環境を改善する必要があります)
1-5.歯ぎしりが酷い人
世に言われる歯ぎしりは歯科ではブラキシズムと言い、歯を横にぎりぎり動かすグライディング(歯ぎしり)、カチカチ歯を噛むタッピング、上下の歯をくっつけて食いしばるクレンチングの3つに分類されます。特に問題になるのはグライディングやクレンチングになります。
ブラキシズムが酷い人はインプラントを埋め込んだまわりの骨に過度の負荷がかかり、骨吸収をおこします。歯ぎしりが改善しない人はインプラントは適応となりません
2.インプラントをするのに注意が必要な人
次は、内科主治医や専門医へ問い合わせを行い、状態がコントロールされている場合においてインプラントの治療をすることができる人について説明します
2-1.高血圧症
人は不安、緊張、疼痛などによって血圧が容易に上昇します。高血圧の患者さんでコントロール不良の人は、オペ中に血圧があがると各臓器の重要血管に障害が起こる可能性が高いです。そのため、高血圧の人はコントロールがされていることが重要となります
2-2.虚血性心疾患
虚血性心疾患には、心筋の壊死がおこった心筋梗塞と、おこっていない狭心症に分けられます
心筋梗塞のある人は、後遺症の程度でオペの可否が決まり、内科主治医との密接な連携が必要となります
狭心症は投薬によってコントロールがされているときはインプラント手術が可能となります。しかし、術前に発作が起こった時の対応(ニトログリセリン投与)などを確認する必要があります
2-3.糖尿病
糖尿病もコントロールがされているのならオペが可能となります。基準は以下のとおりで
- HbA1c6.9%以下
- 空腹時血糖140mg/dL以下
- ケトン体(-)
以上が守られていると問題は少ないとされています。しかし、糖尿病の人は健常な人より感染しやすかったり、傷が治りにくいといった傾向が強いので、オペをおこなったあともコントロール不良にならないように経過観察をする必要があります
2-4.骨粗しょう症
骨粗しょう症は骨の代謝障害がおこって骨がスカスカになってしまう病気です。オペ中のリスクには関係ない病気なのですが、インプラントは骨とくっついてくれるかどうかが成功のカギであり、骨粗しょう症があると骨とくっつかないことがあります
しかし、どの程度の骨粗しょう症だとインプラントをしないほうがよいのか、分かっていないのが現状です
2-5.慢性閉塞性肺疾患(COPD)
COPDは慢性気管支炎、肺気腫、またはその両者の併発による閉塞性換気障害のことです。COPDの人がインプラント治療に際し、ほとんどの人に呼吸困難が認められます。そのため手術や治療に長時間かかる症例だと、インプラントをおこなうことができません
2-6.肝機能障害
- 肝機能障害の原因は
- ウイルス性肝炎
- 肝硬変
- 肝がん
- アルコール性肝障害
- 薬物性肝障害
- 自己免疫性肝疾患
などがあります。いずれもコントロールされていないときにはオペはすることはできません
肝機能障害の程度を把握するにはスクリーニング検査だけでは不十分なので、主治医と緊密な連絡をとりオペの可否を決める必要があります
一般的にASTという値が三桁を超えているときなオペは延期します
3.まとめ
インプラントは骨にインプラントを埋め込むので、全身症状に問題がある人がおこなうとトラブルに見舞われることがあります。希望する人は全身疾患の管理を徹底し、安全にインプラント治療を行いましょう