毎日の食事で何を食べ、何を食べないようにするべきか、健康維持やダイエットの目的からしっかり考えながら食事を摂っている方は多いと思います。
しかし、体調や体重の増減だけではなく、歯やお口の健康について考えながら食事を摂っている方はあまり多くないのではないかと思います。
80歳まで1日3食食べるとすると、生涯で食事する回数は実に87,600回!
体に栄養のあるものを取りこむための食事には歯がとても大切ですが、「歯の健康のための食事」というものもこの機会に意識してみると良いと思います。
目次
1.歯の健康を守るための3つのポイント
1-1歯にダメージを与えやすい食べ物は控えめに
歯にダメージを与えやすい食べ物・飲み物として酸味の強いものが挙げられます。
健康に良いと謳われている食品の中にも酸性を多くふくむものがあります。体の健康を考えて口にしていたものが歯の健康を損なっていたということもあります。普段の食生活を見直してみて、酸性の強い食べ物を多く口にしていないかどうかチェックしてみましょう。
酸性の強い食品かどうかは、食品別の水素イオン指数…pH(ペーハー)値で判断することができます。pH7を中性とし、これより少ない値は酸性、多い値はアルカリ性になります。つまり、pH値が低いほど酸性が強く、歯を溶かしやすい食品であるといえます。
気をつけるべき酸性食品
[食べ物] 酢の物、梅干し、レモン、グレープフルーツ、みかん
[飲み物] コーラ、栄養ドリンク、チューハイ、スポーツドリンク、黒酢、野菜ジュース、赤ワイン、柑橘類ジュース
[その他] 醤油、ドレッシング(和風・フレンチ)、クエン酸サプリ、ビタミン剤
これらを一切口にしないということは大変難しいかと思います。大切なのは、酸性の強い食べ物であることを意識し、口にする量を控えめにしたり回数を減らしたりすることです。
酸味の強い食べ物・飲み物を摂る生活が日常化していると、「酸蝕症(さんしょくしょう)」という歯の疾患につながってしまう恐れがあります。
▲「酸蝕症」で歯の噛む面がところどころ溶けている(オレンジ色の部分)
画像:一般社団法人 豊橋市歯科医師会
1-2 歯やお口の不調を歯科医院で治療する
食事中に噛んでいると痛む歯がある、温かいスープを飲んだ時だけキーンと凍みる歯がある、口を開けたり噛んだりするとアゴがゴリッと音がする、もしくは口を大きめに開けると痛みがある、口内炎がもう何週間も治らないままだ…。
こういったお口のトラブルがある方は、まずかかりつけの歯医者さんに行って診てもらうのがよいでしょう。
不調を抱えた状態で食事をしているとかえって症状が悪化することがありますし、できるだけ早く受診することでもしかしたら虫歯の早期発見ができるかもしれません。
「知覚過敏はずっと前からだから…」「口内炎のできやすい体質だから…」と諦めずに、まずは歯医者さんに気になる症状を相談してみましょう。
1-3 よく噛むことを意識して食べる
「よく噛んで食べる」ということはよくダイエットのテクニックの一つとして紹介されることがありますね。
よく噛むことで満腹感を得ることができるという話は聞いたことがあるかと思いますが、実は「よく噛む」ということは歯の健康にも良いんです。
あまり使わない筋肉はどんどん衰えていくように、歯や口も使わなければどんどん衰えていってしまいます。
よく噛む習慣をつけておくことで噛む力を維持することができ、そうすることでさまざまな種類の食事を口にすることができます。
「たくさん噛む食事は苦手/好きじゃないから…」と柔らかい食べ物やスナック菓子のようなものを食べることが習慣化してしまうと、野菜や肉、魚など大切な栄養素の入っている食べ物を摂るのも億劫になってしまいます。
じゅうぶんな栄養素を摂れるだけではなく、よく噛むことは唾液量の分泌も促してくれます。
実は、唾液は虫歯予防やお口の中の健康を守るためにとても大切だということをご存じでしたか?
くわしくは、『知っていますか?唾液が虫歯予防にパワーを発揮する理由』をご覧ください。
栄養素と唾液のパワーで健康に保たれた歯は虫歯にもなりにくく、そうやって歯が大切に維持されることによってその後も食事の中で「しっかり噛む」ということができるという良いサイクルが完成します。
2.バランスの良い食事で食べる楽しみを
2-1 食事中の歯の役割はいろいろ
実は「噛んで食べる」といっても、生えている場所によって食事中の歯の役割は違うと知っていましたか?
画像:テーマパーク8020
好き嫌いで偏った食事ばかり選んでしまうと、「よく使う歯」と「あまり使わない歯」がでてきてしまいます。
例えば、よく噛むことが大切とは言ってもアーモンドのような硬いお菓子を食べることが大好きでそれが日常化している(しかも右側でばかり噛むクセがある)方の場合、もしかしたらかえってそれが噛みあわせの不調やアゴの痛みなどのトラブルを生み出してしまうこともあります。
何かそればっかりを食べる・飲むというよりも、バランス良くまんべんなく食べるというのがよいかもしれませんね。
2-2 よく噛むためのひと工夫
よく噛んで食べるための食事には、調理法や選ぶ食材に気を配り、食事のルールを決めてみるのもよいでしょう。
[調理法・食材]
・具材を大きめに切る
・煮込むときやお米を炊くときは水分量を少なめにする
・野菜は加熱時間を短くして歯ごたえを残す
・噛みごたえのある食材を選ぶ(玄米、ゴボウ、レンコン、たけのこ、キノコ、こんにゃく等)
[食事ルール]
・飲み物で咀嚼物を流しこみクセをやめる(飲み物は食後のみ、と決めるなど)
・時間にゆとりをもって食事をする
・足を組んだり、床に体育座りになって食べたりせず、姿勢よく食べる
・食事中にテレビやyoutubeなどを観ず、食事に集中し味や歯ごたえを楽しむ
2-3 よく噛んで食べるためのレシピ
インターネット上ではよく噛んで食べるためのレシピが多く公開されています。
「食育」や「オーラルフレイル(加齢にともなうお口の健康の低下)」などのキーワードとあわせて検索することで、これらのレシピが見つかりやすくなります。
3.まとめ
食事を「おいしい」と感じるための要素の一つに歯の健康はあります。
単に体に良い栄養のある食事を摂ればOKということではなく、「おいしい!」を食事の楽しみ、喜びを持ちながら毎日過ごせることが心身の健康にダイレクトに繋がってくるのではないでしょうか?
食べる物だけではなく、「食べること」自体にもぜひ気を配ってみてくださいね!
画像:テーマパーク8020