毎日しっかり歯磨きしているつもりでもすぐに小さな虫歯ができてしまう…。
そのたびに歯医者さんで治してもらっているけど、友人の中には生まれて1回も虫歯になったことがないって子もいる。
聞いてみるとそこまで歯磨きに力を入れてるわけでもないみたい。
しっかり歯磨きしているのに虫歯になってしまう人と、あまり丁寧に歯磨きする習慣がないのにまったく虫歯にならない人がいるのはなんで?
もしかして元々の体質や遺伝のせい?
実は、歯になる原因には「遺伝が原因といえるもの」と「それ以外のもの」があります。
でも「親も自分も虫歯になりやすいタイプだし、こんなんじゃしっかり歯磨きするのも時間と手間の無駄かも…」なんて決して諦めないでくださいね。
虫歯になりやすいタイプだからこそ、しっかり丁寧な予防をとることが大切であり、また「それ以外のもの」のほうの原因に関してはその日のうちからアプローチして改善していくことが可能です。
この記事では、虫歯に遺伝がどれくらい影響しているかと、その上でどういった予防をとったほうがよいかをご紹介していきます。
目次
1.虫歯になる原因は3つの要素から
まず最初に虫歯の原因について説明します。
虫歯は、「糖質」「細菌(ミュータンス菌)」「歯の質」の3つの要素が重なりあい、その重なり合った状態のお口の中が長時間続くことにあります。
画像:クリニカ
「糖質」はチョコやジュースなど、とくに砂糖に多くふくまれるものです。こういった甘いものをよく摂る人、食事をしたあとに歯磨きをせずにそのままにしていると、歯の表面が酸にさらされる時間が長くなり、虫歯になりやすくなります。
「細菌(ミュータンス菌)」は歯垢となって、歯の表面に付着して糖質をエサに「酸」を作り出します。この酸が、歯を溶かし、脆くしてしまいます。
「歯の質」は歯がつくられるときの環境で人によって異なります。歯の表面のエナメル質やその中の象牙質の歯質によって、虫歯に弱い・強いという差が出ます。
2.遺伝が影響を与える「虫歯のなりやすさ」って?
それら虫歯の原因3要素の中で、遺伝が影響を与えるのはどれかというと3つめの「歯の質」のみです。
親からの遺伝によって、歯の形、歯の発育経過、歯並び、アゴの形、歯質がある程度の影響を受けます。
例えばアゴが細いと歯がきれいに並びきるためのスペースが確保されにくく、歯が重なりあって生えてくることがあります。
そうすると歯が重なり合っている部分は、他の歯に比べても歯磨き時に磨きにくく、そこには食べカスなどが残りやすくなります。
残った食べカスは虫歯菌のエサとなり、さらに活発に活動させてしまうことになります。
3.虫歯は「似る」というより「うつる」
また、遺伝とはいえませんが、「細菌」と「糖質」に関しても赤ちゃんから成長していくまでのあいだに親からの影響を受けることはあります。
細菌の場合、実は生まれたての赤ちゃんのお口の中には細菌(ミュータンス菌)はいません。細菌がないので虫歯になることもありません。
しかし、歯周病・虫歯になっている家族がキスをする、食事中に同じスプーンや箸を使って食べる、赤ちゃんの口についた食べカスを家族が自分の口に入れ、その手でまた赤ちゃんの口元を触る…といったことから大人の口の中の細菌が赤ちゃんにうつることがあります。
また、「糖質」の場合、同居している家族同士は食生活が似ることや赤ちゃんの頃から哺乳瓶にリンゴジュースや乳飲料、スポーツドリンクなどの甘いものを入れて与えること、チョコやアメなど口の中に長い時間残りやすいお菓子を頻繁に与えてしまうことなども虫歯になりやすくなる原因です。
4.唾液の量や質によっても虫歯になりやすさは左右される
実は唾液には虫歯を予防する効果があることをご存じでしたか?
唾液は3つのパワーによって歯を虫歯から守っています。それらをくわしく見ていきましょう。
1-1 自浄作用で食べカスを洗い流す
食事のたびにお口の中や歯の表面には食べた物のカスが残ります。これを唾液が洗い流すことでお口の中を清潔にし、虫歯菌が活動しにくい状態をつくります。すっぱいものを食べたときにしか出ないイメージのある「唾液」ですが、実はお口の中で常に分泌されており、こうしてお口の中をお掃除してくれているのです。
1-2 酸性になったお口を中性に戻す
食べカスを食べた虫歯菌は酸をだし、その酸によって歯の表面が溶かされることで虫歯ができやすくなってしまいます。これを脱灰(だっかい)といいます。
《脱灰のしくみ》
脱灰がおきて酸性にかたむいている状態は歯にとって大変危険です。これを助けてくれるのが唾液の中和作用です。唾液はお口の中を酸性から通常の中性の状態へと戻してくれます。だいたい食後40分ほどかけてゆっくりと本来あるべき状態に戻っていきます。
1-3 再石灰化で歯の質を強化する
唾液は酸によって溶けてしまった歯の表面をコーティングしなおして修復する力も持っています。これを再石灰化(さいせっかいか)といいます。食事のたびに危険にさらされる歯が虫歯にならずに済むのは、この自然治癒力のおかげなのです。この再石灰化というしくみは虫歯の予防だけではなく、できてしまった初期虫歯を治すパワーも持っているのです。初期虫歯とは歯の表面のエナメル質といわれる組織が溶けはじめて白く濁っている状態のものをいいます。
《再石灰化のしくみ》
唾液には、人によっては唾液の分泌量(多い・少ない)や、唾液の質(サラサラ・ネバネバ)といった違いがあり、これが虫歯になりやすい・なりにくいというところにも影響を与えることがあります。
5.虫歯のなりやすさは子どもの頃だけが原因じゃない
しかし、成人してからの虫歯のなりやすさは親からの遺伝や育ってきた中での食生活などだけが原因ではありません。
喫煙やストレス、成人してからの食生活、歯磨き習慣、老化、噛み合わせ、噛みグセ、薬の長期使用、口呼吸、糖尿病や白血病といった病気も歯周病・虫歯に影響を与えます。
すべてを一気に改善することはとても大変なことです。
まずは、毎日の歯磨きから丁寧におこなうことと、歯医者さんへ行って専門家の歯磨き指導やクリーニング(歯のおそうじ)を受けること、この2つがとても大切です。
毎日の歯磨きについてはぜひ『毎日の歯磨きを見直してみよう!正しい歯磨き粉の使用量やうがいの仕方』を参考にしてみてくださいね。
6.まとめ
虫歯になりやすいタイプであることでたびたび悩まされることがあるかもしれません。
しかし、実際に虫歯ができるかどうかは日々の生活習慣や心がけで変えていくことができます。
弱いからと諦めず、弱いからこそ大切に守ることを意識していれば、少しずつ歯周病や虫歯の状況は改善されていきます。
ぜひ毎日の歯磨き習慣や歯医者さんへの定期的な通院で大切な歯を守ってあげてくださいね。