最近テレビや雑誌で見かける、歯科ドック・デンタルドックという言葉、ご存知でしょうか?お医者さんの人間ドックは知っているけど「聞いたことない」という人もいれば、知っているけど「それ意味あるの?」という方もいるでしょう。この記事では歯科ドック・デンタルドックの効果や、手順について説明します。また、「歯科ドック・デンタルドックは保険外で高い」というイメージがありますが、一部行政と協力して費用が安く受けられる地域があります。歯科ドック・デンタルドックを正しく理解して、100歳まで自分の歯でいられるようにしましょう。
目次
1.歯科ドック・デンタルドックとは
2017年6月の公開された最新の厚生労働省平成28年歯科疾患実態調査の結果では8020達成者が、初めて50%を超えました。これは75歳以上の高齢者で20本以上の歯が残っている方が2人に1人いる、ということです。その反面、歯を失ったお年寄りのアンケートで若いころに戻るなら何をしますか?というアンケートでは「歯の手入れをもっとすればよかった」が1位になっています。虫歯や歯周病の症状がない方が「歯の手入れ」を始める一歩として歯科ドック・デンタルドックがあります。
1-1 歯科ドック・デンタルドックの目的
体の健康診断は職場や学校で定期的に受けている人も多いでしょう。その一方で、歯の健康診断を受けている人はまだまだ少ないのが現状です。
今現在むし歯・歯周病になっているかどうかに関わらず、将来むし歯や歯周病になりやすいかどうかを検査するのが歯科ドック・デンタルドックの目的です。
1-2 歯科ドック・デンタルドックと歯科検診の違い
定期的に歯科医院で検診を受けているかたもいらっしゃるでしょう。「歯科ドック・デンタルドック」と何が違うんだろう?と思うかもしれません。ここでは、歯科ドック・デンタルドックと歯科検診の違いについて解説します。
歯科ドック・デンタルドック
歯科ドック・デンタルドックは、病気であるかどうかに関わらず、病気の危険因子を早く見つけるために検査することです。健康診断、一次予防と同じ意味です。かかりつけの歯科医院での健康診断費用は健康保険適応外のため保険適応外のため自己負担となります。
歯科医院での検診
検診とは特定の病気を早期に発見して治療するために検査することです。病気になってしまった人を早期発見・早期治療する二次予防と同じ意味です。歯科での特定の病気とは、むし歯、歯周病、口腔がんなどです。検診で病気が見つかった場合には保険適応となる場合があります。かかりつけの担当医にご相談ください。
1-3 歯科ドック・デンタルドックを受ける利点
虫歯や、歯周病、口腔がん、その他の疾患などの早期発見や、将来的なリスクを予測することができ、お口の健康の維持・増進に役立ちます。とくに歯周病は患者さんの症状がないままに進行し、気づいた時には重度になっている怖い病気です。歯周病は歯を失う疾患の第一位になっています。唾液をもちいた各種検査により将来虫歯や歯周病になりやすい体質か、痛みなく調べることができます。歯を失うことでかかる費用負担を回避することができます。
1-4 歯科ドック・デンタルドックを受ける注意点
口の中は日々変化しているので、1回受けてもあまり効果がなく、人間ドックと同じように毎年継続的に受けないと効果が少ないかもしれません。なお、歯科ドック・デンタルドックを受ける前2時間は飲食・歯みがきは控えてください。
2.歯科ドック・デンタルドックの費用
住んでいる地域や、歯科医院によっては保険外治療になるため費用が30000円~50000円と高額になる場合があります。行政との共同事業をしている一部の地域では、3000円程度です歯科ドック・デンタルドックを受ける歯科医院に必ず事前に問い合わせて確認しておいた方がいいでしょう。
3.歯科ドック・デンタルドックはどこでできるの?
歯科ドック・デンタルドックは、歯科医院や、歯科のある総合病院・大学病院などで行われています。また、自治体によっては、保健センターや指定歯科医療機関で受けられるところもあります(埼玉県川口市の例を紹介します)。歯科ドック・デンタルドックは、30分程度時間がかかりますので、あらかじめ連絡して予約しておいたほうが良いでしょう。
4.歯科ドック・デンタルドックの流れ(例)
問診:歯に関する悩みや日ごろの生活習慣を、問診します。
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むし歯・歯周病の健診:むし歯や歯周病の状況をチェックし、治療・予防の適切な指導の基準にします。
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粘膜、舌の健診:歯肉や舌、頬の異常を調べます。口腔がんや腫瘍などの異常が発見される場合もあります。
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唾液検査
5.唾液検査と唾液の働き
ここでは、歯科ドック・デンタルドック特有の検査、唾液検査について詳しく解説します。
5-1 唾液検査とは
「歯磨きをしないから」、「甘いものばかり食べているから」などの理由がすぐでてきますが、これだけではありません。このような歯磨きや食生活に加えて唾液の量や力、細菌の量や質、フッ素を使っているかなど様々な要因が重なって起きているのです。
ですが唾液の量や性質、細菌の量などの情報は普通目に見えません。その見えない情報をあきらかにして歯と口の健康維持に活かそうという検査が、「唾液検査」です。
5-2 唾液の働き
唾液には主に以下のような働きがあります
消化作用
食べ物の分解を促進し栄養素を吸収しやすくすることで胃の負担を減らす 働きがあります。
抗菌作用
風邪などの細菌を抗菌・殺菌する潤滑作用…お口の中に潤いをもたせることで食べ物の咀しゃく・飲みこみを容易にし、発声もしやすくなります
排出作用
体に害のある異物を唾液でつつみこむことでスムーズに体外に排出しやすくします
再石灰化作用
唾液は酸によって溶けてしまった歯の表面をコーティングしなおして修復する力も持っています。これを再石灰化(さいせっかいか)といいます。
中和作用
食べカスを食べた虫歯菌は酸をだし、その酸によって歯の表面が溶かされることで虫歯ができやすくなってしまいます。これを脱灰(だっかい)といいます。脱灰がおきて酸性にかたむいている状態は歯にとって大変危険です。これを助けてくれるのが唾液の中和作用です。
自浄作用
食事のたびにお口の中や歯の表面には食べた物のカスが残ります。これを唾液が洗い流すことでお口の中を清潔にし、虫歯菌が活動しにくい状態をつくります。
唾液の働きをもっと知りたい方は「知っていますか?唾液が虫歯予防にパワーを発揮する理由」
5-3 唾液検査でわかること
う蝕活動性検査
唾液の中の細菌を採取・培養して、口腔内の衛生状態や、むし歯の進みやすさ、かかりやすさなどを調べます。
唾液緩衝能検査
酸を中和する力(緩衝能)が高ければ、口の中の酸を早く中和して、歯の再石灰化を促進させます。
唾液量検査
唾液には、口の中を清潔にする働きがあります。唾液量が減少すると、むし歯や歯周病にかかりやすくなります。
もっと唾液検査を詳しく知りたい方は「唾液検査で分かる~あなたのお口の虫歯予防の仕方」
さらにライオン社のSMT 唾液検査では以下の項目もわかることができます。
歯周病に関する項目
歯と歯茎の境目(歯周ポケット)で細菌や異物が増加すると、生体の防御作用により唾液中の白血球が増加することが知られています。また、口腔内の細菌や、歯と歯茎の間にある歯垢(プラーク)の影響で唾液中のタンパク質が多くなることが知られています。
口臭に関する項
口腔内の細菌数が多いと、唾液中のアンモニアが多くなることが知られており、口臭等の原因になるといわれています。
「Lidea「 唾液検査で何がわかるの?」」より引用
6.まとめ
たくさんの歯を残すことが健康で元気な老後につながります。お口の中の健康は、老後の医療費の軽減につながるデータも報告されています。なるべく若いときから虫歯や歯周病で困る前に歯科ドック・デンタルドックを受けて、100歳まで自分の歯でいられるように頑張りましょう。