ここで言う「自費のもの」は、大体はセラミックのことを言います
セラミックの良さについてはおそらく歯科医師の説明や検索サイトで聞かれることが多いかと思います
しかし、今回はあえてセラミックのデメリットについて紹介していきたいと思います。セラミックの良いところも悪いところも踏まえて、歯をきれいに治していきましょう
目次
1.セラミックで治す4つのデメリット
セラミックには悪いところが4つほどあります。順に説明していきます
1-1.治療費が高額
セラミックを使った治療法は、自費診療になります。自費診療は治療費が全額負担になるので値段が高くなります。
当医院のセラミックを使用した被せ物の治療法だと、1本あたり95,000円~135,000円になります。ちなみに保険のだと6,000円前後となります。
歯の被せ物に10万円かけるかどうかは、個人の価値観によります。筆者は患者さんのお口を見ていて色々思うところがあるので(くわしくは3-2.で後述)
「セラミック高いんだよね…でも高いだけのことはあるから、自分がやるなら自費診療だな」
と思ってしまいますが、患者さんが値段が高いと思う気持ちはよーく分かります
※参考記事
「保険と自費でどう違うの?差し歯の値段と材料の違い」
「美しい前歯を手に入れるために~前歯に最適な差し歯教えます~」
1-2.われることがある
セラミックは身近なもので言うとお茶碗やお皿などがあてはまります。硬くて丈夫ですが、落としてしまうとパリンと割れてしまいますよね。
歯で使用しているセラミックも同じで、強い衝撃でわれてしまうことがあります。われたときは、最悪、型どりからやり直さなければならなくなります
ちゃんと診断して適切に作ればわれることはないのですが、かみ合わせが良くない人や歯ぎしりが強い人はわれるリスクが有意にあがります。
※参考記事「歯だけじゃない!体にも悪影響を与える「歯ぎしり」の正体とは」
一方、保険診療の材料は、大体が金属やCR(歯科用プラスチック)になります。
金属は衝撃に強いのでわれることはありません(すり減って穴が開くことはありますが)
CRはわれたり欠けたりしますが修復が簡単なので、セラミックのように治療を1からやり直さなくてすむことがあります。CRは白い粘土みたいなものを盛り上げて青い光で固めるので、やり直しが簡単なのです
1-3.歯をたくさん削らないといけない
上で説明したように、セラミックは衝撃に弱いといった特徴があります。そのため、金属で治すときよりも歯をたくさん削って“セラミックの厚み”を持たせないといけません。
100均で売っている、飲み口が厚くてずっしりと重いマグカップは落としても意外にわれません。しかし、物が良い湯飲みは薄くて軽いので、ちょっとぶつけただけで縁が欠けたり割れてしまいませんか?
このように、セラミックは厚くすることでわれないようにするしかないので、歯科においても歯をたくさん削って強度を保たないといけません。
歯をたくさん削ると、仮歯のときに歯がしみやすくなったり、歯並びによっては歯の神経を抜くことがあります。特に、若い人は神経が入っている管が太くて神経が露出しやすいので、20歳以下にはセラミック治療を行わないほうが良いという意見もあります
1-4.反対側の歯に負担がかかる
セラミックは硬いので、反対側の歯に負担がかかります。ガッチリ接着する前に仮着をしたり、かみ合わせの調整に最新の注意をはかるなど慎重に治療をするのですが、かむと歯が痛くなったり、反対側の歯がすりへってしまうことがあります
2.セラミックをおすすめしない人
セラミックの欠点の1つに、衝撃強さがないということがあげられます。
そのため、歯に力がかかりすぎる人やかみ合わせが悪い人はセラミック治療をしないほうが良いばあいがあります
こんな人は注意!
- 歯ぎしりがひどい人(奥歯が明らかにすり減っている人)
- 奥歯が無くて前歯しかないが、入れ歯やインプラントを入れない人
- かみ合わせの関係で、絶対にセラミックがかけるかみ合わせの人(切端咬合など)
それでも、セラミックで治したいという人は、
- 歯ぎしりがひどいのなら、マウスピースをしたり普段から噛みしめないように気をつける
- 奥歯がないのなら、奥歯を補う治療をする
- 矯正をしてかみ合わせを治す
などといった対処をしてからセラミック治療をしたほうが良いでしょう。
3.セラミックで治す4つのメリット
さて、セラミックのデメリットを紹介しましたが、このままでは
「じゃあセラミックって良いところあるの!?」
と疑問に思われるかたがいらっしゃるかもしれませんので、良いところも紹介させていただきますね
3-1.審美的にきれい
セラミックの被せ物や詰め物は、見た目がきれいというメリットがあります
時間をかけて患者さんの肌の色や唇の色に合わせた歯を作ることができます。お望みならば、新庄剛志さんのような真っ白な歯にもすることもできます。
また、お茶碗の色合いは何年たっても変わらないように、セラミックの歯は色がかわりません。歯のメンテナンスを怠らなければ永続的に美しい歯を維持することができます
一方、保険は奥歯なら金属、前歯ならCRを使用して治します。
金属は審美的に劣っていることは明らかですね。
CRは白いですが、樹脂でできているので、時間がたつと色が黄ばんできます。また、保険内だと、使えるCRの色が決まっているので(大体3色)唇や肌や隣の歯に調和した色を再現することができません
3-2.汚れ(プラーク)が付きにくい
セラミックの最大のメリットはこれではないかと思います
セラミックは、つるつるしてていて汚れ(プラーク)が付きにくいので、金属やCRで治すよりも歯周病や虫歯になりにくくなります。歯科は、治療したところのすき間から虫歯になって、再治療をすることがとても多いのです。だから歯を失わないためには、いかに二次的な虫歯にならないかが重要となるのです
金属の下に虫歯ができている
時間がたって金属と歯がピッタリしていない
実際の臨床で高齢者の口を見てみると、保険で治したところはすきまから虫歯が広がっているのに、セラミックや金(ゴールド)で治したところは虫歯になっていないということが結構あります。つまりセラミックなどの自費診療で治したほうが、予後が良く歯を失うリスクが減るのです
こういったことから、1-1.でも言いましたが筆者はなるべく歯を再治療したくないので、自費診療は高いけれど「自分がやるなら自費!」という考えに至ったのでした…
↑歯の治療をすると5~10年ごとに虫歯が再発することがわかる。再発して再治療をすれば自分の歯がなくなっていくので長い目で見ると抜歯につながる
3-3.アレルギー対策ができる
金属を使った治療法だと金属アレルギーのかたは皮膚症状などがでることがあります。しかし、セラミックの治療だとそういったアレルギーのかたにも使用することができます
金属アレルギー
上唇にアレルギーがでてしまっている
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
虫歯などの病巣感染、歯科金属アレルギーが原因の1つとして考えられる病気
筆者は金属のつめものをやり直して掌蹠膿疱症が完治した患者さんを2人知っています。なかなか治らない手の水泡やカサカサがある人は、もしかして歯のつめもののせいかも!?
3-4.歯ぐきが黒ずまない
金属を使った治療法だと、歯ぐきが黒ずんでしまうことがあります。これをメタルタトゥーと言い、金属のイオンが歯ぐきに溶けだしたり、金属の粉末が歯ぐきに入り込んでしまうことからおこります
セラミックの治療(オールセラミック・ジルコニア)だとこういったことを防止することができます
↑歯ぐきが黒くなっている
※参考記事「差し歯のところの歯茎が黒いあなたへ ~原因と治療法 教えます~」
4.まとめ
歯医者でおすすめされるセラミックの治療法。実は悪いところもありました。
しかし、良いところももちろんあります。
自分の年齢やお口の状況で、セラミックは吉と出るか凶とでるか変わるので、担当医とよく話し合って歯を治していってくださいね
- 第2版 歯科のための皮膚科学 山﨑雙次 他 医歯薬出版
- 森田学 他 歯科修復物の使用年数に関する疫学調査(岡山大学予防歯科) 日本口腔衛生学会雑誌45(5):1995より