虫歯はどうしてできるのでしょうか?
甘いものを食べるから・・・?
確かにそれも虫歯の原因の一つではありますが、それだけでは虫歯にはなりません。虫歯はいくつかの要因が重なることにより発生するのです。ここでは、虫歯になる原因とその原因毎の予防法についてお話していきます。今まで虫歯の治療を受けたことがある方は勿論のこと、虫歯経験のない方も、今後虫歯を作らないために、ぜひとも参考にして下さい。
目次
1. 虫歯は「宿主(歯、唾液)・細菌・基質(食事)の3大要因と「時間」が関係
① 歯の質・唾液の分泌量
歯の表面を覆っているエナメル質のフッ素濃度が低く歯質が弱い、唾液の分泌量が少ない
② 細菌
口腔内に虫歯の原因菌が存在し、それが増殖する環境になっている
③ 食事の糖質
ショ糖(砂糖)含有食品の摂取頻度や嗜好性酸性飲料の摂取など
④ 食事間隔や摂取時間
1日の食事回数が多い、頻繁な間食など
上記の要因が重なることにより虫歯が発生します。要因一つ一つが大きく輪が重なる部分が大きくなるほど虫歯リスクは高まります。それぞれの要因を出来るだけ小さくし、輪の重なりを小さくすることで虫歯リスクを軽減できます。
次の章から要因別の予防法を紹介していきます。自分に当てはまる要因項目をチェックして実践してください。すべて実践するのがベストですが、まずは4つの要因の中で自分が気になっている部分から始めていきましょう。
2.要因別虫歯の予防法
虫歯の出来る因子を知っていただいた次は、虫歯がどうやってできるのかを知り、その対処法を習得しましょう。
食事をするたびにお口の中では下記のような脱灰(図1)と再石灰化(図2)が繰り返されています。
(図1 脱灰)
(図2 再石灰化)
取り込まれた糖を歯垢(プラーク)内の細菌が分解して酸を作り出し、歯の表面のエナメル質を溶かす、これを脱灰と言います。エナメル質はpH5.5以下になると脱灰がはじまります。
ここで重要な役割をするのがお口の中の唾液です。唾液は酸を中和して、溶けだしてしまったカルシウムやリンなどのミネラルを歯質の中に取り込みます。これを再石灰化といいます。エナメル質が溶けだすpH5.5から通常のpH7前後に戻るまで60分ほどかかります。
よって虫歯を予防するためには下記が重要となります。
① 歯質強化・唾液分泌量を増やす
② 細菌(プラーク)を取り除く
③ 食事の糖質コントロール
④ 食事間隔や摂取時間
2-1歯質強化や唾液分泌を促して虫歯を防ぐ
虫歯になりにくい強い歯質をつくりましょう。唾液には再石灰化以外にも自浄作用や粘膜保護作用などさまざまな効果があります。唾液の分泌量を増やすことは虫歯予防にとても大切です。
フッ素で歯質強化!! 虫歯になりにくい歯をつくる
フッ素は①歯質を強化、②虫歯の原因菌の活動を抑制、③再石灰化の促進をしてくれます。毎日のホームケアで上手に取り入れましょう。今使用している歯磨剤を確認してみて下さい。「フッ化ナトリウム」や「モノフルオロリン酸」と成分表に表記されているものがフッ素です。
ただし商品によって成分の配合量が違います。日本の薬事法では最近、販売される商品のフッ素濃度が1000ppm以下から1500ppmに引き上げられました。
歯磨剤を選ぶ際には、このフッ素濃度に注目してください。
サンスター エフペーストα
サンスター株式会社HP
また歯磨剤以外にもフッ素を取り込むことができるものはあります。
チェックアップジェル
ライオン歯科材株式会社HP
歯磨き後に使用するジェルタイプのフッ素剤です。
年齢に応じてフッ素濃度が選択できます。また5種類のフレーバーがあり楽しくフッ素を取り込むことができます。
サンスター エフコート洗口液
サンスター株式会社HP
こちらは洗口液タイプ。薬液でうがいをすることによりフッ素をお口の中にとどめます。
唾液の働きに注目 自浄作用と再石灰化
唾液が虫歯予防に大切な働きをすることはお話ししましたが、唾液は年齢や薬の副作用などで減少してしまいます。もともと唾液の分泌量が少ない方もいます。ではどうすれば唾液分泌量を増やすことができるのか?
① よく噛んで食べる
咀嚼することで唾液分泌が促されます。よってあまり噛まずに飲み込める加工食品などを好んで食べると唾液は分泌しづらくなります。食事は噛み応えのある食材を選び、しっかりよく噛んで唾液を分泌させるようにしましょう。厚生労働省では「噛みんぐ30(カミングサンマル)」という一口30回以上を噛むことを目標にしたキャッチフレーズが作成されています。よく噛むことは、唾液分泌を促す以外にも、肥満予防や脳の働きを活発にする、口の周りの筋肉を鍛えるなどの効果があります。
② 唾液腺のマッサージをする
唾液が分泌される唾液腺を刺激するマッサージをすることで唾液分泌を促すことができます。
③ ガムを噛む
ガム噛むことで唾液分泌が促進できます。この場合のガムは唾液分泌に加えて同時に虫歯を抑制する効果のあるキシリトールガムがおススメです。砂糖が入っているガムですと、せっかく唾液が分泌されても糖質を取り込んでいることになるので虫歯のリスクを高めてしまうことになります。
キシリトール100%含有のものを選んで唾液分泌促進とキシリトール効果のダブルで虫歯を予防できます。
キシリトールガム
オーラルケアHP
④ 唾液分泌を誘発する人口唾液グッズを使う
どうしても唾液分泌が少ない方は、ジェルやスプレータイプの唾液誘発商品を使用するのもいいでしょう。
ウエットケアレモン
Amazon
食後のキシリトールガムで虫歯は約6割抑制できる
唾液分泌のところでもご案内しましたが、食後のキシリトールガムを習慣化することで虫歯は約6割抑制することができます。キシリトールは虫歯を誘発しない糖質で抗う蝕作用があります。キシリトールガムを噛むことで唾液の分泌を促しながら虫歯を防ぐことができます。ただし、たまに噛む程度では効果はありません。最低でも2週間以上の継続が必要ですので、ぜひこの機会に習慣化してみて下さい。
虫歯になりやすい歯の溝(裂溝)はシーラントで埋める
歯の3大不潔域のひとつに、咬み合わせ部分の歯の溝(裂溝)があります。この部分をシーラントと言うレジン(プラスチック)であらかじめ埋めてしまうことによって、汚れがたまるのを防ぐことができます。お子さんの乳歯や6歳頃を目安にでてくる第一大臼歯(6歳臼歯)に行うことが多く、その他先天的な歯の異常でできる結節などの溝部分にも行うことがあります。
2-2 プラークを取り除いて原因菌の増殖を抑制
虫歯の原因菌のエサとなるプラークを取り除いて原因菌の増殖を防ぎましょう。CMなどでもよく見たり聞いたりするいわゆるプラークコントロールです。基本は食事をする毎に歯磨きですが、仕事先や外出先などで日中時間が取れない場合には、就寝前の歯磨きに時間をかけるように心がけましょう。眠っている間は唾液分泌が減少するため虫歯リスクが高まります。就寝前の歯磨きを念入りにすることで虫歯リスクを軽減することができます。
自分に合った歯ブラシを選ぶ
歯ブラシが自分にあっていなければ上手にプラークを取り除くことはできません。
歯ブラシ選びのポイントは5つ
① ヘッド(ブラシ部分)の大きさ
口の中で操作しやすいようにヘッドは小さめのものを選びましょう。
② ブラシの硬さ
口の中の状態に合わせて選びます。歯磨きはプラーク除去のみではなく歯肉マッサージも兼ねているのでおススメはやわらかめ。硬いものはブラッシング圧が強すぎると歯肉を傷つけたり歯肉を退縮させたりする原因になることがあります。
③ 毛の材質
衛生面を考えると水切れの良い人工毛がおすすめ。自然毛をお好みの場合には使用後にペーパーなどでよく拭取って良く乾燥させて保管しましょう。
④ 持ち手
色々な角度から歯ブラシを当て、細かな動きを可能にするには持ちやすさは重要です。小さなお子さんや手が不自由で力が入りづらい方には太めの持ち手の方が安定してしっかり握ることができます。色々試してしっくりくるものを見つけてください。
⑤ 価格帯
交換目安として1カ月くらいを考えて、継続できる価格帯のもの選ぶようにしましょう。市販品、歯科専用共に200円~400円くらいのものが主流です。
虫歯になったところは磨くのが苦手なところ
染め出し液(※)を使用すると磨き残しは一目瞭然ですが、虫歯になったことがある方は、その部分は磨けていなかったところ、磨くのが苦手なところと言うことになります。その部分は特に重点的に意識をして磨くように心がけましょう。できればながら磨きより、鏡を見ながら歯ブラシを当てると効率よくブラシ操作ができるのでおススメです。
※染め出し液とは
磨き残しをチェックする薬液の事です。磨けていない部分やプラークが溜まりやすい部分が染め出されるので、ブラッシングをする目安になります。
デンタルフロスや歯間ブラシなどの補助的清掃用具を使う
歯ブラシだけでは歯の間や歯肉の境目などの清掃が不十分になりがちです。歯間ブラシやデンタルフロス、ワンタフトブラシなどの補助的清掃用具をプラスして磨き残しをなくしましょう。
“補足”
きれいな歯並びで磨き残しを軽減
歯並びが悪いことで清掃率が落ちてしまう方は歯科矯正を検討するのも虫歯予防の一つです。歯科矯正は審美的目的だけではなく健康な歯を保つためにも必要な場合があります。
2-3 摂取する食品に注意して虫歯を防ぐ
食材によっても虫歯リスクは軽減できます。咀嚼回数が少なくすぐ飲み込めてしまうものばかりの食事だと唾液分泌が少なく唾液に自浄作用も見込めません。
虫歯になりにくい歯を作る食材を積極的に取り入れる
しっかり噛むことを心がけミネラルの多い食材を積極的に取り入れましょう。ミネラルが多い食材として、納豆、うるめいわし、カットわかめ、ほうれん草、ひじき、切干大根、ピーナッツなどがあげられます。毎日の食事で取り入れやすいものから始めていきましょう。
虫歯になりやすい食材を控える
歯にくっつきやすい食べ物は口腔内に停滞する時間が長いため虫歯リスクが高まります。例としてはキャラメルやトフィーなど。同じ甘いものでもアイスクリームはすぐに溶けて流動性が良いため口腔内の停滞時間は短くなります。
嗜好性酸性飲料の摂り方に注意する
炭酸飲料やスポーツドリンクなどを好んで飲む方は摂取回数を控えましょう。それらの嗜好性飲料に含まれる甘味料は、直接歯垢(プラーク)に作用して酸を作り出して歯垢を増殖させます。水分補給としての摂取は糖分のないお茶やお水がおススメです。
2-4 摂取する間隔や時間帯に注意して虫歯を予防
糖分を摂る時間帯や取り方によっても虫歯リスクは軽減することができます。食べたいものを我慢してストレスをためるのではなく、摂取の仕方を変えるだけで虫歯になりにくくすることができるのです。
食事は3食きちんと時間を決めて摂る
歯は食事の度に脱灰と再石灰化を繰り返しているお話しをしましたが、食事回数(間食)が多いとその分脱灰が頻繁に起こることになります。食事は
3食きちんと時間を決めて、間食の回数も出来るだけ少なくするよう心がけましょう。
公益財団法人ライオン歯科衛生研究所より引用
就寝前の飲食は避ける
就寝中は唾液の分泌が減少するため虫歯リスクが高まります。唾液による自浄作用が見込めないため、いつまでもお口の中に食べたり飲んだりしたものが停滞することになります。お休み前の飲食は避けましょう。
間食はなるべく控える
食事回数でもお話ししましたが、食事をした分だけ脱灰が起こるため、間食を頻繁にすればそれだけ虫歯リスクは高まります。ただし、3食だけでは栄養を補えないお子さんには食事合間の間食も大切なことです。その場合には糖質の少ないおやつを選んで与えるようにしてください。
3. ホームケアと歯科医院でのプロフェッショナルケアの二人三脚が大切
毎日行うホームケアにプラスして、定期的に行うプロフェッショナルケアが必須です。虫歯はなりかけの段階(初期齲蝕)であればものと状態に治すことができる場合があります。ぜひ定期的に歯科医院を受診して、普段のホームケアのチェックや治療する段階に進む前に虫歯を早期発見できるようにしましょう。
4. まとめ
虫歯は①歯の質・唾液 ②細菌 ③糖 ④時間 が関係して発生します。それぞれの原因を出来るだけ小さくすることで虫歯リスクを軽減することができます。自分の生活の中で虫歯の原因となる要素の強いものを重点的に意識して、虫歯のない健康な歯を保つようにしてください。