1.歯式とは歯の記録
初めて歯科の受診した時や、メンテナンスなどで久しぶりに診察を受けた時に歯科医師がお口の中を見て、記録を残すことを「歯式を取る」と言います。
歯式を取ることは患者さまのお口の中の現状の様子を把握するのに大変重要です。
現在歯が何本あって、虫歯があるか、欠損(歯のないところ)があるか、歯にはどんな治療がしてあって、どんな補綴物(ほてつぶつ/金属の詰め物、かぶせ物)がしてあるかなどを記録し、その後の治療計画の参考にします。
最近はこの歯式を印刷して患者さまにお渡しする歯科医院が多いですが、いろいろな記号が暗号のように書いてあってさっぱりわからない…という方も多いと思います。
今回は歯式に記載されている代表的なものについてお話したいと思います。
2.実際のお口の中の画像と歯式
口腔内の記録の一つに「5枚法」というカメラによる記録があります。
歯並びの状態、噛み合わせの様子、歯肉の色や腫れの様子、歯の色調や形態など、様々な観察を目的としています。正面の噛んだところ、上の歯、下の歯、噛んだ奥歯を左右の状態を5枚の写真に撮影します。
その中から実際に撮影された上下の歯の画像とその時記録された歯式を見比べてみましょう。
レントゲンもそうですが、歯科では患者さまの歯並びを表す表記が左右反転しています。
歯は番号が決められています。
今回はわかりやすいように画像と歯式は同じように並べてあります。
(実際の写真は反転しています)
慣れないと混乱してしまうかと思いますが見ていきましょう。
上の歯は左から7番6番IN(インレー)、5番FMC、4番HR(前装冠)、3番CR(シーアール)、2番HR、1番右上1番HR(ここは「連結」と言って繋げてあります)2番3番CR、4番ON(アンレー)5番FMC、6番IN、7番欠損。
下の歯は右から、6番欠損の7番5番FMCでBr(ブリッジ)、4番CAD(キャド)3番2番1番CR、左下1番2番CR、3番HR5番7番FMCのBr、4番6番欠損。
このように歯科医師が口腔内を見ながら読み上げ、アシスタントがカルテに記載していきます。
歯科医院によって記載方法が多少し違うこともありますが、おおむねこのように行っています。
患者さまにはわかりやすく書いたものをお渡しする場合があります。
3.歯式に記載される代表的な記号
歯科では様々な専門的な歯科用語があり、なじみがない人が聞くと暗号のようですね。
多くは略さてれていますがそれぞれに正式名称があります。
状態を表していたり、形態で違ったり、金属の種類で違っていたりします。
3-1 虫歯の進行度による記載
虫歯の状態を記載して、その後の治療をどのように進めるか計画します。
①C(シー、カリエス)…虫歯
②CO(シーオー)…初期う蝕、要観察歯
③C1(シーワン、シーいち)…エナメル質のみ虫歯
④C2(シーツー、シーに)…象牙質に進んでいる虫歯
⑤C3(シースリー、シーさん)…歯髄まで進んでいる虫歯
⑥C4(シーフォー、シーよん)…歯冠部がなく根っこだけの状態の歯
《補足》
歯そのものにも各部分で名称があります。
3-2 補綴物の記載
虫歯の進行によって治療が決まり、最終的な補綴物(詰め物やかぶせ物)の種類が違ってきます。
①CR(シーアール)…レジン充填(プラスチック樹脂の詰め物)がされている
②IN(インレー)…メタル(金属)の詰め物をしている。型取りが必要。
③ON(アンレー)…インレーより大きく歯を削って入れるメタルの詰め物をしている
④FMCまたはFCK(エフエムシー、エフシーケー)…金属のかぶせ物
⑤Br(ブリッジ)…歯が無いところの両側の歯を削って繋げたかぶせ物
⑥MB(メタルボンド)…金属にセラミックを焼き付けた自費のかぶせ物
⑦HR(エイチアール)…前装冠(ぜんそうかん)保険適応のプラスチック樹脂で出来たかぶせ物
⑧CAD/CAM (キャドキャムまたはキャド)…保険適応の白いかぶせ物、ただし適応部位が決まっている
⑨AF(アマルガム)…1,990年頃まで使われていた歯に詰める銀色の軟らかい金属、2016年以降は保険適応から外れており現在は歯科の現場ではほぼ使われなくなっている
⑩TEK(テック)…プラスチックの仮歯がかぶせてある
⑪C“(二次カリ、二次カリエス)…一度治療が終わった歯が再度虫歯になった状態
3-3 口の中の状態の記載
①〇(まる、健全歯)…虫歯が無くきれいな歯
②✖(けっそん、欠損)…歯を抜いた、または自然に抜けて歯が無い状態
③PD(ピーディー、パーシャルデンチャー)…部分義歯
④FD(エフディー、フルデンチャー)…総義歯、保険と自費で素材が違います
⑤////(はんまい、半埋伏)…親知らずが少し出ている
⑥完埋(かんまい、完全埋伏)…完全に親知らずが埋まっている
4.まとめ
実際のカルテの歯式には、このほかにも歯周病の進行度や歯石の有無を記載したり、かぶせ物の種類や金属で名称が変わってきたり、細かく詳しく記載します。患者さまにお渡しする歯式は簡単なものが多いですが、疑問に思うところは気軽にどんどん質問してください。歯科医院のスタッフは丁寧に答えてくれると思います。
自分のお口の中はどんな状態ですか? 鏡を見てみましょう!