歯科医院の定期検査で歯石を取るなどのメンテナンスを受けると、歯周病検査の検査表を渡されると思います。
皆さんはこの検査表にどんな事が書いてあるのかおわかりでしょうか。
渡す側の私たち歯科衛生士にはとても見慣れた表です。
しかし、一通りの説明を聞いただけで患者さまがこの検査表を理解するのは、たぶん難しいのではないでしょうか。
この検査表は患者さまのその時のお口の中の状況を表す情報がたくさん詰まっているものです。
この検査表が理解できれば、毎日の歯磨きのモチベーションの向上につながり、歯周病の改善に役立つコンテンツになるはずです。
今回は実際にお渡ししている検査表を基に詳しく解説したいと思います。
目次
1.歯周病の検査表を見て歯磨きを見直しましょう
歯の定期検診がなぜ必要なのか。そして検査表をなぜお渡しするのか。
それは虫歯のチェック、歯周病の進行のチェック、歯石の除去、ブラッシング指導などを定期的に行う事で、健康な歯と歯肉を保っていくためです。
歯周病の進行のチェックは歯の周りの歯肉の深さ(ポケット)が深くなっていないかを検査しますが、この記録が検査表です。
ポケットの深さの変化、出血、排膿の有無の持つ意味が理解できると、「歯を正しく丁寧に磨く」ことの意味と重要性がわかってきます。
お口の中の健康は絶対的に歯磨きにかかっているのです。
2.検査表を「読んで」みよう
検査表はポケットや出血、動揺の変化を前回と比較しての現在の状態を「見る」ではなく「読む」ものです。
当医院で実際にお渡ししている検査表を基に詳しくお話していきます。なお検査表には色分けした番号が記入してあります。番号順に解説していきます。
2-1 検査表1-①・・・縦線は正中(顔の真ん中)
太い縦線を中心にして歯の位置が決まります。
真ん中を境に右側、左側に分かれます。十字の上が上の歯、下が下の歯を表しています。
画像:ニッシンカタログより
2-2 検査表1-②・・・歯には番号がついています
お口の中には永久歯なら28本(親知らずが全部あると32本)の歯があり、それぞれに名前があり、番号があります。
中心から奥に向かって右上1番、2番・・・8番。左下1番、2番・・・8番というように歯科では、番号でのやり取り表記が基本になっています。
ちなみに乳歯はA,B,C,D,Eのアルファベットで表記します。
画像:ニッシンカタログより
2-3 検査表2-①・・・EPPとはポケットの深さ
ポケットの深さの変化は歯周病の進行の一番の指標になります。
ポケットは誰にでもどの歯にも元々あります。
健康な歯肉のポケットは1mm~2mmですが、歯周病が進むと歯と歯肉の間の隙間が深くなって、支えている歯の周りの骨が次第に退縮していきます。
深さにより、軽度(2mm以下)、中等度(3~6mm)、重度(7mm以上)に分けられます。
歯肉が腫れている場合は歯を丁寧に磨くことで腫れが治まり、ポケットの数値が良くなってきます。
重度の場合の骨が下がっていますが、下がった骨は元に戻らないのでそれ以上歯周病が進行しないために、歯間清掃(歯間ブラシやデンタルフロス)を加えた丁寧な歯磨きが重要です。
画像:モリタトリニティコア
2-4 検査表2-②・・・動揺度とは歯の揺れの度合い
歯周病が進行して支えている骨が溶かされ下がってくる事で次第に歯が揺れるようになります(動揺)。
その揺れは0、1、2、3の4段階に分けられます。数字が大きいほど歯周病が進行している状態で、骨が無いことが原因です。ピンセットで歯を揺らしその揺れ方で判断します。
0・・・揺れがない 生理的動揺(歯はもともとわずかに動きます)
1・・・軽度 前後に揺れる
2・・・中等度 前後左右に揺れる
3・・・重度 前後左右の揺れに加え上下にも動く
2-5 検査表3-①・・・出血率とは出血した割合
検査した日に全体の歯の本数から何本出血したかによって出血の割合(%)がわかります。
出血の原因は歯肉の腫れによるところが大きいですが、プラーク(歯垢)が残っていることで炎症が起こっていることが主な腫れの原因です。
ポケットの深さで出血するとは限らず、プラークの有無が鍵になりますので、丁寧なブラッシングと歯間ブラシやデンタルフロスを使用することで、出血は減っていきます。
当医院では20%以下を目標にしています。
2-6 検査表3-②・・・排膿率とは歯肉から膿が出ている割合
歯周病が重度になると歯の根の周りに膿が溜まって歯肉が腫れる事があります。
その場合歯と歯肉の境に膿が滲み出ていたり、検査の際に使用する器具(プローブ)に付いてきたりします。出血を伴う事も多くあります。
☝プローブを歯肉に挿入してポケットの深さを測っています。出血が見られます。
2-7 検査表4-①②③・・・表記の色の違いは何?
①の赤く塗られているのは出血があった歯です。
②は出血と排膿があった歯で③は排膿のみがあった歯です。
色分けすることでお口の中の変化がわかってきます。
この検査表からわかるのは12月は主にポケットの深い部位からの出血がほとんどでしたが、1月は左下1~3番のようにポケットに問題のない部位から出血がありました。
この場合は歯間清掃の見直しをご提案するなど、アドバイスのヒントが多くあります。
☝重度の歯周病:歯肉の炎症、プラーク歯石の沈着が多く見られます
2-8 検査表5・・・表記は左右逆になっています
検査表を手にしたとき患者さまが一番混乱するのは左右の表記が、見た目と逆になっていることだと思います。
レントゲンも左右逆に表示されます。
これは歯科に限らず医科の胸部レントゲンなどでも、表示されている左が患者さまの右となっています。診断する側から患者さまを見ている状態ですね。
どうしても見ずらい時は左右反転して表示することも可能な場合があるので確認してみましょう。
⇚㊨の歯 ㊧の歯⇛
《補足》
歯周病検査には1点法(基本検査)、4点法(精密検査)、6点法(精密検査)があり、測る場所が決まっています。
精密検査は6か所測定し記録しますが、当医院では1本の歯に対して6か所測定し、一番深い数値を表記しています(1点法)。
表は6点法で検査した精密検査です。
一本の歯に対して6か所の深さを測定する事で、より正確なポケットの状態を把握することができますが、検査に時間がかかる場合があります。
3.まとめ
検査表をお渡しすると、「ファイルに入れて取ってあります」という患者さまがいます。
自分のお口の中に関心を持っていただいてるのがこちらに伝わってきてうれしくなります。
検査表から得られる情報は非常に多く、とても大切な資料になります。
お口の健康は「歯磨き」にかかっています。
検査表と共にお伝えする歯磨きのアドバイスを取り入れて歯周病の予防、改善を目指してください。
検査表が皆様のお口の健康にお役に立ちましたら幸いです。