残念ながら歯医者を好きなお子さんは少ないと思います。むしろ大人の方がそうかもしれませんね。
お子さんが歯医者が何かわからないうちは大丈夫でも、大きくなるにつれて口を開けなくなったり泣いてどうしようもなくなったり。お母さんも泣き叫ぶ我が子にどうしたらよいか分からず、自分もあまり好きではない歯医者だから、お子さんの通院もますます遠のいてしまったり・・・そうこうしている間にむし歯ならどんどん進行していってしまいます。ここではお子さんを歯医者嫌いにさせないために、親御さんへのお願いや注意点、歯医者へ通い始める時期等について説明していきます。
目次
1.子供は泣くのが当たり前。だから心配しないで大丈夫です
歯医者に連れて行ったとき、お子さんが泣いて散々な思いをした親御さん。
次の予約日に気が重くなっていませんか?
けれどそんなに不安にならないでください。はじめての歯医者で大概のお子さんは泣くものです。
来院のたびに毎回泣いているお子さんもいます。お子さんが泣いても歯医者は当たり前だと思っています。
だから安心して歯医者に連れてきていただきたいのです。
1-1 はじめては不安でいっぱい
歯医者って何か分からないけれど、予防接種で行った小児科や他の病院とおんなじ服装の人たちがいる・・・嗅いだことのない薬品のニオイがしたり、聞いたことがない音が診療室から聞こえてきたり・・・と、経験したことがない環境でお子さんは不安でいっぱいなっているはず。何をされるか分からなければ、大人だって不安になりますよね。だから泣いても当たり前。泣いててもきちんとお口を開けていたらたくさんほめてあげてください。
はじめからできなくても大丈夫
まずはその不安を取り除きたいので、どんなものを使ってどんなことをするのか説明していきます。お口の中に入れて使用する前に、実際に器具を見せたり、触らせたり。
それどころではないくらい泣き叫んで嫌々を続けるお子さんんも勿論います。
問診票で受診理由は把握していますので、痛みがある等の緊急性がなければ、無理強いをしてトラウマになってしまうことは行わないようにします。むし歯がある場合でも、その進行状況、むし歯の状態によっては、ゆっくり時間をかけて、お子さんが納得してお口を開けてくれる、協力して治療させてくれるようになるまで経過観察しながら、根気よく練習を繰り返していきます。保護者の方はあきらめずにきちんと予約を取ってください。
まずは歯医者に来る練習から
診療室にも入れない、または歯医者の入り口までで足をつっぱって入ろうとしない、などの場合は、まずは歯医者に来る、という練習からはじめましょう。保護者の方にとって、時間も労力も割く根気がいる作業になりますが、受付までくる練習、待合室に座る練習等からはじめましょう。歯医者の入り口を入れるようになったら、次に待合室に座ってしばらく待つ練習、次に待合室でお口の中を見せてくれる練習へと移行していきます。ひとつひとつクリアしていく毎にたくさん褒めてあげましょう。
1-2 痛みで泣いている場合は痛みを取ってあげるのが先決
むし歯などが進行して痛みが出てしまっている場合、その痛みを取り除いてあげることが先決になります。
緊急性がある場合、流暢に練習を繰り返している時間はありませんので、口を開ける補助具や動いて暴れる場合には抑制下で処置を行う必要があります。
保護者だけでなくお子さんにも理由を説明します
抑制する必要がある場合には、保護者の了承を得て行います。この場合、押さえつけるのは動いて危ないからであって「罰」ではないことをお子さんにも説明します。興奮して耳に入らないかもしれませんが、黙って抑えられたらますます怖さが増しますよね。
そして治療はお薬でむし歯を眠らせてから行うので痛くないこと(麻酔をすること)も説明していきます。
“抑制も困難な場合は治療設備のととのった専門病院を紹介します”
ある程度大きくなって、抑制も困難なお子さんは、全身麻酔等の設備の整った専門病院を紹介することがあります。抑制が困難、お子さんの協力が得られない、複数のむし歯がある等の場合、全身麻酔治療の方が、本人は勿論、保護者の方の精神的負担も軽減できます。
2.来院前に保護者がすべき3つのこと
お子さんに頑張っていただく以前に、保護者の方に行ってほしいことがいくつかあります。そのなかで大切なことを3つほどあげていきます。
2-1 保護者の不安をお子さんに伝染させない
お子さんは大変敏感に大人の心境を察知します。一緒に来院するお母さんが歯医者嫌いだったり、治療で痛い思いをしたなど歯医者に不安をもっていたりすると、それをお子さんは敏感に察知します。保護者の方の不安はお子さんに容易に伝染します。ぜひ保護者の方はお子さんを不安にさせないようにしてあげてください。
2-2 来院前に言い聞かせをする
物事を理解できる年齢のお子さんであれば、歯医者に連れてくる前に、お子さんとお話ししてください。
「今日は歯医者に行って、先生にお口の中を診てもらおうね」とか、「痛くてご飯が食べられないから、先生に、むし歯のムシさんを退治してもらおうね」とか。むし歯を治すことによって、おいしくご飯が食べられるようになる等、歯医者でも説明を行いますが、保護者の方も何故歯医者に行く必要があるかを、お子さんに説明してあげてください。
2-3 「今日はここまでやろう」と約束をする
処置に至らなかった場合は、「次は○○するのお約束して終わりにしよう」と先生がお子さんに説明します。
保護者の方は、次の来院時に「今日は○○まで頑張るお約束だよ」と事前に約束事を思い出させてあげてください。保護者の方とお子さんでお約束事を決めてきていただくのも良いでしょう。お子さんも目標をもって治療に挑ませてあげてください。その際は、「今日は○○を頑張る約束をしてきました」と、そのお約束事を治療前に先生に伝えてくださいね。
3.保護者がお子さんにしてはいけない3つのこと
歯医者に通院するにあたり、保護者の方のご協力がないと治療は成り立ちません。お子さんが一人で来院できる年齢になるまでの間は、保護者の方に守っていただきたいことがあります。
3-1 歯医者を怖いところだと思わせない
兄弟の治療で、まだ歯医者デビューをしていないお子さんを一緒に連れてくる保護者の発言で、気になる言葉があります。例えばお兄ちゃんが治療しているのをそばで見ている弟君に対してお母さんが、「○○君も言うこと聞かないと歯医者さんにチックンしてもらうよ!!」←これは絶対にやめてください( ノД`)…
まだ何も行ってない時期から、歯医者は怖いところ、痛いことをするところだと植え付けないでいただきたい。兄弟で来院されている場合、私たちは治療していないお子さんにも話しかけるようにしています。そこでお兄ちゃんの治療を見てもらい、お兄ちゃんが今何をしているのかをお話ししたり、お兄ちゃんのがんばりを褒めてあげたりしてコミュニケーションをとっています。弟君の前で褒められているお兄ちゃんは更に上手にできるようになり、褒められてるお兄ちゃんを見て弟君は自分の時もお兄ちゃんのように褒められたい!!と思ってもらえるのが理想です。
3-2 嘘をついてつれてこない
「何にもしないよ」とか「見せるだけだよ」とか、むし歯などで痛みがあるお子さんにそう言い聞かせて連れてきた場合、治療されたらお子さんはお母さんも歯医者の先生も「嘘つき」だと思ってしまいます。
検診で連れてくるなら「先生にお口の中を診てもらおうね」とかで良いと思いますが、お母さんから見て明らかにむし歯があるお子さんに、「何もしないよ」と言って連れてこられたら、実際に処置をする際に抵抗したり泣いたりしても無理もありません。聞いていた話しと違うのですから。
「診てもらおう」とか「ムシさんを退治してもらおう」「おいしくご飯が食べられるようにしてもらおう」とか事実をお子さんに伝えて連れてきてください。
3-3 虫歯の原因をお子さんのせいにしない
泣いて治療が出来ないお子さんに対してよく聞く言葉で、「歯を磨かないからいけないんでしょ!!」や、「○○ばっかり食べてるから痛くなるんだよ」とか。むし歯がお子さんのせいでできたかのように怒る保護者がいます。しかし、小さなお子さんにお口の中や食事の管理は到底できません。歯磨きを自分でするようになっても、保護者の方の仕上げ磨き、お口の中のチェックは必要です。口にする食べ物も、自分でおやつを買い食いするような年齢になる以前は保護者の管理が必要です。
4.歯医者デビューは0歳からがおススメ
歯医者に初めて受診するのは大概、市町村の検診である1歳6ヵ月頃が多いと思います。その頃には、乳歯のほとんどがはえそろっている時期です。母親教室等でも歯磨き指導は受けるかと思いますが、むし歯予防は授乳が始まった時点から必要です。歯がない時期から母乳やミルクを与えたお口の中は清掃する必要があります。この時期はガーゼや清潔な指で粘膜の清掃をします。はじめてのお子さんであればなおさらですが、わからないことがあればどんどん聞いていただきたいですし、歯医者での検診を習慣化していただきたいです。まだわけがわからない小さいうちからの受診により、歯医者という空間に慣れてもらうことがとても大切です。はじめにもお話ししましたが、歯医者では大概のお子さんが泣きます。定期的な通院を行い、知らない人に口の中を見せる練習をしていきます。
5.まとめ
泣いて治療ができないお子さんの歯医者への通院は保護者の方も根気がいる作業になります。ぜひあきらめないで通っていただきたいです。連れてきてさえいただければ私たちは最善の努力をして対応させていただきます。保護者の方は子供だからといって嘘やごまかしの説明をしないようにしてください。そして普段から、歯医者を怖いところ、悪い子が治療されるところのように「負」のイメージを与えないようにしてください。