診療室でブラッシング指導をしている時に、「歯ブラシはどのくらいで交換するのが良いですか?」と質問される事があります。
「歯ブラシを後ろから見て毛先が見えたら交換ですよ」とお答えすると大抵の方は「ああ、そうなんですね」と納得されます。
続いて「毛先が見えなくても1か月くらいで交換したほうがいいですよ」とお伝えすると、驚く方は少なくありません。皆さんはどのくらいで歯ブラシを交換していますか?
今回は歯ブラシをふくむ、いろいろな歯科用品の使用期限・交換時期についてお話したいと思います。
目次
1.歯ブラシの正しい交換時期は…1か月
お口の中には300~400種類の「常在菌」という細菌が存在します。
良く歯を磨く人の口腔内細菌数は1000~2000億個、ほとんど磨かない人の口の中になると1兆個の細菌数になります。
ほとんどは健康なら何もしない菌ですが、悪さをするにはごく一部。
それが虫歯や歯周病の原因になる細菌です。
歯磨きで取り切れなかったプラーク(歯垢)1㎎中の細菌数は約10億個。その細菌が歯ブラシに残っていたら…。
1-1 毛先が広がっていなくても交換は必要
歯ブラシを後ろから見て毛先が見えないくらいの状態だと「まだ大丈夫かな」と思いがちです。
しかし、先ほど述べたように、プラークには目に見えない細菌がウヨウヨいて使用後に流水で洗ったくらいでは、完全に取り除くことは無理でしょう。(実際に顕微鏡で見るといろいろな形をした細菌が動いているのを見ることができます)
また、歯ブラシ自体も新品の物と比べると、汚れを落とす力が2割下がると言われています。
《他の人はどのくらいで取り換えているの?》
画像:ライオン
上の表からもわかる通り、約1か月で交換する人の割合が高いですが、平均では約2か月というところでしょうか。中には1年以上歯ブラシを取り換えない人がいることには、驚きですね。
1-2 後ろから見て毛先が見えたら交換のサイン
今使用している歯ブラシを後ろから見て、毛先が見えていたら新品の歯ブラシに交換しましょう。
プラークが付きやすい場所は、歯の噛み合わせにある溝、歯と歯の間、歯と歯肉の間ですが、広がった毛先ではこれらの場所にうまく当たりません。せっかく磨いても汚れが取れていなくては歯磨きをした事になりません。
《プラークのつきやすいところ》
画像:いずれもライオン公式HP
《歯ブラシを取り換えようと思う時って?》
画像:ライオン
約7割の方が「毛先が広がった時」を交換の理由と考えていることがわかりますが、歯並びや、磨き方のクセ、力の入れ方で歯ブラシの広がり方は変わってきます。時期を決めての交換をおすすめします。
2.歯間ブラシの交換時期は…2週間が目安
歯科医院でブラッシング指導を受けると、歯ブラシの他に歯間ブラシの使用を勧められると思います。
歯と歯の間には歯ブラシの毛先は届かなく、残ったプラークが虫歯や、歯周病の原因になるので歯間ブラシを使用することはとても大切です。
使用を続けていると、歯間ブラシのブラシ部分がすり減って細くなってきて、プラークが残ってしまいます。
ワイヤーも折れやすくなるので2週間で新しい歯間ブラシと交換しましょう。
3.タフトブラシの交換時期は…毛先が広がってきたら
歯並びがでこぼこしている部位や、高さの違う歯の間や、歯ブラシが当てにくい歯と歯肉の境目をピンポイントで磨いていくタフトブラシ。
毛先が短い分、ブラシ部分の消耗も大きいです。毛先が広がってきたら交換しましょう。
画像:ライオン
4.歯ブラシなどを清潔に清潔に使用するための毎日の管理方法3つ
食べかすや細菌の塊であるプラークが付いた歯を磨いた後の歯ブラシを、きれいにする方法はどうすればいいのでしょう。
管理方法は歯ブラシだけではなく、歯間ブラシやタフトブラシも同様です。
4-1 歯ブラシを良く洗う
水道の水を流しながら、毛先をしっかり洗います。
根元に汚れを残さないように毛先を広げるように丁寧に洗います。
線維性の食べかすや、付けすぎてしまった歯磨き粉はブラシの根元に入り込んでしまい、少しづつ固まってしまい、落としにくくなっていきます。
4-2 水分をしっかり切る
細菌は湿った環境で繁殖します。
歯ブラシに細菌が残ったままだと、その数は増える一方です。
よく水分を切った後、ティッシュペーパーなどで押さえて出来るだけ水分を拭き取ります。
携帯用の歯ブラシには、キャップが付いていることが多いですが、湿ったままキャップをすることになるので注意が必要です。
4-3 風通しの良い場所で立てて乾燥させる
水道の流水下で良く洗い流したら、ブラシの根元に水分が溜まるのを防ぐために、コップなどに立てた状態で毛先を乾燥させます。
細菌の繁殖を防ぐのには乾かすことが大切なので、歯ブラシを2,3本用意して乾いたものを使うのがおすすめです。
また、コップの中にたくさんの歯ブラシが入っている状態だと、家族間でも細菌が移行することがあるので気を付けましょう。
《歯ブラシの消毒にはこれがオススメ》
ブラシ類の毎日の管理方法は先ほど書きました。良く洗って乾燥させることで細菌の繁殖はある程度抑えられますが、相手は見えない「細菌」。
どうしても気持ち悪いと思う方には、歯ブラシの消毒方法を紹介します。
歯ブラシにスプレーすることで、抗菌作用が得られます。
《してはいけない消毒方法》
歯ブラシに熱湯をかけると、ブラシが変形してしまいます。「熱湯消毒」はやめましょう。また、身近なものとして、台所用品の漂白剤がありますが、そもそも口の中に入れると危険な薬品ですので使ってはいけません。
5.使用期限の「ある」「なし」に気をつける
歯ブラシなどの他にも使用期限はありますが、箱などに「使用期限」が書いてあるものと、使用期限ではなく「製造番号」が書かれているものがあります。
主なものを見てみましょう。
歯磨き粉
歯磨き粉、液体歯磨き、洗口剤は通常、使用期限は記載されていません。
記載がない物は未開封で通常の環境で保管した場合、製造から3年間は問題が無いように設計されています。
ただし、開封したものは半年を目安に使い切りましょう。
どうしても使用期限が知りたいときは、メーカーに製造番号を問い合わせると回答が得られるようです。
使用期限がある製品の一部を紹介します。
《MIペースト》
画像:GC
こちらの歯磨き粉は牛乳由来成分(CPP━ACP)が含まれている塗布用クリームです。
歯を磨いた後に塗ることで、豊富なミネラル(カルシウム、リン)が再石灰化を促してくれます。MIペーストには使用期限があり、箱に明記されています。
※牛乳、乳製品のアレルギーがある方は使用できませんので注意してください。
入れ歯安定剤
「新ファストン」は粉末タイプの総入れ歯安定剤ですが、使用期限があります。
画像:ライオン
口腔内スプレー
唾液の分泌が少ない方におすすめしている、「ウェットケア」。
数回スプレーすることで、口腔内が潤います。こちらも使用期限があります。
画像:キッセイヘルスケア
6.まとめ
見た目や残量などで「まだ使えるかな?」と思えるものはたくさんありますが、お口の中にいれるものばかり。
やはり使用期限は大切です。
歯やお口の中の安心、安全のためには使用期限を守ることをおすすめします。