普段、食事や喋るときに当然のように使っている歯たち。
まじまじと見るのは歯磨きのときくらいで、それも「ちゃんと汚れ落ちてるかな?」というくらいのものかもしれません。
よく見てみると、歯によって形状が異なっていますがそれが普段の食事などにどのように影響しているか考えてみたことはありますか?
「(食べ物を)噛む」という動作は、ただ上と下の歯を噛みわせるだけのシンプルな動作のように感じられるかもしれませんが、実は歯によって担っている役割が違うんです。
ここでは、大まかに前歯(犬歯含む)・奥歯にわけてそれぞれの役割についてご紹介していきます。
よろしければ大人の歯が生え始めているお子さんと一緒に、鏡などを見ながら歯のそれぞれの役割について知っていきましょう。
どの歯も大人になってからも失うことがないようにしたい、大切な歯です。
鏡を見て、自分の歯や歯並びをじっくり観察することは普段の歯磨きをするときに歯ブラシの当て方やデンタルフロスなどを活用するための良いヒントになります。
ぜひ、大人の方もいま一度じっくりと自分の歯についてよく観察してみてくださいね。
1.食べ物を最適サイズに噛み切ってくれる「前歯」
前歯は、中心に生えている大きくてよく目立つ歯です。
歯の中心から左右に3本ずつ、それが上下にあるため計12本です。
画像:朝日新聞「おしごとはくぶつかん」
ウサギがニンジンをかじったり、リスが木の実をかじるときに使うイメージがあるため、上の大きくて面の広い2本の歯が「前歯」としての印象が強いかもしれませんね。
上下に6本ずつあるこの前歯の役割は、主に食べ物をちょうどよいサイズに噛み切ることにあります。
大きなもの・硬いもの(肉など)・長いもの(ラーメンや蕎麦など)など一口では食べきれないものを、前歯で噛みちぎります。
横から見たときに先端が細く尖っているのがわかるでしょう。
上の前歯の裏面を試しにベロでなぞってみると、スプーンやシャベルのように少しくぼんでいることがおわかりいただけます。
この形状のおかげで、噛み切った食べ物が歯の表面にまとわりつくことがありません。
前歯は歯ぐきの中に埋まっている根っこの部分も、しっかりと長いため硬いものを噛んでも容易にぐらつくことはありません。
また、前歯があることでそこから息が漏れることがないため、綺麗な発音をすることができます。
そして、口を開けて笑ったときにもっとも目に入りやすい歯であるため、見た目にも大きな影響力を持つ歯です。
前歯と奥歯をつなぐサポート役「犬歯」(八重歯)(糸切り歯)
前歯グループの中でもそれぞれの端っこにくる歯、前から数えて3番めのとくに先端の尖っている歯は犬歯とよばれます。
八重歯とも呼び、チャームポイントに見られたり、糸を切ることができるほど鋭い形状から糸切り歯という名称もついています。
犬のように尖っていかにも強そうに見える犬歯ですが、まさにその通りで歯の中で最も強い構造をした歯なのです。
役割は前歯と奥歯をつなぐサポート役ではありますが、根っこも歯の中で最も長くてしっかりしているため、歯としての寿命も長く、比較的最後まで残りやすい歯でもあります。
肉食の哺乳類にとっては、獲物の肉に食いついて引き裂くために使われている歯です。
2.噛んですりつぶす「奥歯」
画像:同上
奥歯は上下の噛み合う面が最も広い面で、歯自体もどっしりとした四角い形をしていますね。
奥歯の主な役割は、前歯で噛み切った食べ物をさらに細かく噛み切る・すりつぶす・噛み合わせを安定させることにあります。
食べ物をさらに小さく砕いたり、臼のようにすってつぶすことで飲み込みがしやすくなり、さらには胃の中でも消化が早まります。
ちなみに、シマウマなどの草食動物は、草をたくさん噛む必要があるため、すべての歯が臼のような形状をしています。
噛み合わせを安定させる役割を担っていることで、奥歯でしっかり噛むことができ、それにより力んだり踏ん張ること、重い荷物を持ったりすることもしやすくなります。
奥歯は大変重要な役割を担っているため、もし1本でもなくなってしまうともともと奥歯にかかっていた噛み合わせの負担が他の奥歯や前歯に行くことになり、それらの歯に異常をきたすこともあります。
歯ブラシの毛先が届きにくく、鏡で見ていても暗くて見えづらい場所に生えているのでつい歯磨きもおろそかになりがちなのですが、とくにしっかりと丁寧に磨いてあげて、大切に保ちつづけたい歯です。
3.番外編:「親知らず」の役割ってなあに?
人によっては生えてくることなく生涯を終えることもある「親知らず」。
奥歯の一番奥のほう(喉側)に生えてくる、前歯から数えて8番目の歯のことです。
歯医者さんでレントゲンを撮って、初めて自分に親知らずが生えていることに気づかれる方も多いでしょう。
または、親知らずが悪さしてしまい、歯医者さんから「抜いてしまいましょう」と勧められたことのある方もいらっしゃるかもしれません。
「歯はとっても大切なものなのに、親知らずはそんな簡単に抜いちゃっても大丈夫なの?」と気になりますよね。
実際に上下の親知らずで噛み合わせが成立していたり、のちのち別の不調の歯を抜いたときの移植するための保険として残しておく場合など何か理由があるケースを除いては、歯医者さんの判断と患者さんご本人の「抜いてもいいです」という要望があれば、抜歯することはよくあります。
噛み合わせに影響していない、もしくは虫歯になってしまっていて痛みが出ている、手前の歯に悪影響を及ぼしそうな生え方をしている…という場合は積極的な抜歯を勧められることがあります。
「じゃあなぜなくても問題がない歯なのにわざわざ生えてくるんだろう…?」というと、大昔では親知らずの歯も必要になるような食生活を送っていたから、という理由になります。
原始時代などは、硬い木の実や生肉を食べる習慣があったため、アゴの筋肉は現代人よりも発達しており、しっかりとしていました、
発達した広いアゴには、親知らずの歯(8番目の歯)も真っすぐ生えてくるスペースが確保されていたため、普通の歯として噛み合わせられるようになっていたのです。
現代人は調理に火を使い始め、噛みやすい柔らかい食材を多く食べるようになったため、アゴが成長しきれずに親知らずがもし生えたとしてもナナメになっていたり、そもそも歯ぐきの中に眠ったまま出てこないということが当たり前になりました。
人類の長い歴史の中で、こうして歯の役割も少し変わっていったのですね。
4.まとめ
普段意識することのない歯ごとの役割ですが、ぜひこの記事を読んだあとのお食事ではどのように自分が食材を噛んでいるか意識してみると面白いかと思います。
1本ずつ歯の形状について観察してみて、普段の歯磨きのクオリティも高められるように磨き方を工夫してみてくださいね。