不安定な天候が続く中、もうそろそろ梅雨明けをむかえるという時期になりましたね。
梅雨が明けると夏本番ということで、外で遊んだりスポーツをする子どもたちにとっては水分補給のためにスポーツドリンクを飲む機会が多くなると思います。
失った水分を補うかわりに飲むスポーツドリンク。
一見健康によさそうですが、実は「歯」にとっては要注意な存在であることをご存じでしたか?
スポーツドリンクなどの甘くて酸性の強い飲み物は、歯が酸蝕症になるリスクを持っています。
酸蝕症というと聞きなれない言葉かもしれませんが、簡単にいうと歯が溶けてしまうことをいいます。
「コーラを飲むと歯が溶ける」なんていう話を聞いたことがあるかもしれませんが、あれは実は都市伝説などではなく本当のお話なんですね。
お子さんの健康な歯を守り続けるためにも、スポーツドリンクを飲むときの注意点や酸蝕症というものについて詳しく知っていきましょう。
目次
1.子どもの歯にとってスポーツドリンクは要注意!
体に良いと思って飲んでいたスポドリが実は歯にとっては危険性のある飲み物だったとは驚きですよね。
なぜ子どもの歯にとっては要注意の飲み物なのか、理由をご説明していきます。
1-1 スポーツドリンクは酸性が強い
歯の表面のエナメル質といわれる部分は人体で最も硬い組織であるといわれています。
そのエナメル質にも大変苦手なものがあります。
それが「酸」です。
強い酸にふれてしまうと、歯の表面のエナメル質は化学反応を起こして溶けていってしまうのです。
酸性の強さはpHという単位で測られていますが、歯にとってpH6.0以下の数値を出す食べ物・飲み物には注意が必要になります。
一般的なスポーツドリンクのpHは、なんと約pH3.5!
たしかに運動をして汗をかいたあとの体に必要な成分も多く含まれているかもしれませんが、一方で歯が溶けやすくなるリスクも含んでいるんですね。
画像:産経新聞
表面のエナメル質が溶けてしまうと、その下の「象牙質(ぞうげしつ)」という組織がむきだしになります。
この象牙質はエナメル質とは対照的に、とてもやわらかい組織となっています。
むきだしの象牙質が食事のたびに食べ物に当たったり、歯磨きのたびに強くこすられたりすると、だんだんと組織がすり減っていってしまうようになります。
そのまま放置しておくと、冷たいものや甘いもので歯がしみやすくなるような「知覚過敏(ちかくかびん)」を起こしたり、虫歯が進行しやすくなる危険性があります。
つまり、酸によって歯が溶けてしまうと見た目がよくないということだけではなく、歯そのものの健康にも悪影響を及ぼすということです。
1-2 スポーツドリンクは糖分が多い
一般的なスポーツドリンク500mlには約30gの糖分が含まれています。
普通サイズの角砂糖(3g)が10個分とイメージすると、知らぬ間にかなりの糖分を摂取しているのだなと驚きますね。
お口の中にいる虫歯菌にとっては砂糖などの糖質は絶好のエサになります。
歯の防御力を下げてしまう「酸」に、虫歯菌が活動的になってしまう「糖分」。
スポーツドリンクは歯の健康にとって、かなり要注意の存在であることがおわかりいただけると思います。
1-3 子どもの歯はやわらかくて弱い
生えたての乳歯は大人の歯に比べてまだやわらかく、酸などにも弱いものです。
スポーツドリンクや甘いジュースをあげる際にはとくに注意が必要になります。
親が仕上げ磨きをしてあげている時期であれば、しっかりとした歯磨きで自宅での虫歯対策をすることができます。
しかし、自分で歯磨きをするような年頃になると、チェックをしてくれる人がいないので適当な歯磨きのまま済ませてしまい、虫歯リスクも高くなってしまいます。
“大人も要注意の「酸蝕症」”
酸蝕症にかかるのは子どもだけではありません。
さまざまな嗜好品をたしなむ分、大人のほうが酸蝕症のリスクは高いと考えられるかもしれません。
とくに注意したいのが「健康のために」と飲んでいたものがかえって酸蝕症のリスクを高める可能性についてです。
以下に酸蝕症の原因となるものを外因性・内因性にわけてご紹介します。
【外因性(外部からの影響によるもの)】
・飲むお酢、黒酢
・栄養ドリンク
・ワイン
・炭酸ジュース
・みかん、レモン、グレープフルーツ(を含むジュースも)
・梅干し
・ビタミンCやアスピリンなど酸性の強いものを含むサプリメントの過剰摂取
【内因性(体の内部からの影響によるもの)】
・アルコール依存
・胃食道逆流症
・摂食障害(拒食嘔吐、過食症)
↑ 酸蝕症になった永久歯。歯の噛む面がところどころ溶けて、茶色い組織が透けて見えている。
2.酸蝕症対策の5つのルール
酸蝕症を防ぐためには日々の生活で守りたい5つのルールがあります。
2-1 酸性の強いものを口にしたらすぐうがいor歯磨きを
スポーツドリンクや黒酢ドリンクを飲んだあとはそのままにしてしまうと、歯の表面に酸性の強い飲み物が滞留することになってしまいます。
できるだけ早くお水でうがいするか、歯磨きをして流しきるようにしましょう。
水道が近くにない外出先などでは、酸性の飲み物をとったあとはすぐに緑茶やミネラルウォーターを飲むなどの対策法をとりましょう。
また、「酸性の強いものを飲んだあとの歯は傷つきやすいから歯磨きは30分置いたほうがいい」という情報を新聞やテレビで目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
日本小児歯科学会の見識では、「食後はすぐに歯磨きをすることで、歯垢やお口の中の細菌を除去することのほうが重要である」ということになっています。
歯みがきをしっかりするようにしましょう。
ただし、ゴシゴシギュッギュ!と歯ブラシでこする音が聞こえるほどの力で磨くのはNGです。
これは食後30分だとか大人か子どもかということに関係なく、歯磨きをする際に音が鳴るということは「強く磨きすぎ」のサインなのです。
正しい歯磨きの方法は、1本1本をコショコショとくすぐったいくらいに優しく小刻みに動かすことです。
ぜひ今日から意識してみてくださいね。
2-2 「だらだら食べ・だらだら飲み」はやめましょう
これは長時間口の中に食べ物や飲み物をふくむことを言います。
テレビを観ながらゆっくりお菓子を食べていたり、何時間もかけてずっと甘い飲み物をこまめにとっていたり…。
こういった食生活は歯にとって虫歯のリスクが高まってしまいます。
お口の中が常に虫歯菌にとってエサだらけの環境になってしまうので大変危険なのです。
おやつの時間などは明確に決めて、食べたら歯磨き、飲んだらうがいという風にしっかりと区切りをつけた食生活をおこないましょう。
2-3 就寝前は酸性のものも甘いものも控えて
わたしたちが夜寝ているあいだ、口の中の唾液分泌量は減少します。
実は唾液というのは、虫歯菌と戦ってくれる大切な存在なのです。
その唾液が少なくなってしまう就寝中は虫歯菌も活動的になりやすいので、夜寝る前の歯磨きは1日の中で一番力を入れる必要があります。
寝る前に酸性の強いもの、甘いものを飲む場合は絶対に歯磨きをしてから寝るようにしましょう。
最も確実なのは、就寝前にはそれらを控えることです。
2-4 スポーツドリンクは運動して汗をかいたときだけ
スポーツドリンクの味に慣れてしまうと、普段の生活の中でも水分補給として飲んでしまうこともあるかもしれません。
「運動をして汗をかいたときだけ飲もう」とルールを決めて、お子さんの日中の水分補給には緑茶や麦茶、ミネラルウォーターを選ぶようにしましょう。
2-5 酸性の強いもの、甘いものを飲むときはストローで
それでもどうしても好きな炭酸ジュース、健康のために飲みたい黒酢ドリンクなどもあるかと思います。
そういうときは、コップにそのまま口をつけて飲むのではなく、ストローを使って飲むことでジュースと歯がふれる面積を少しでも減らすことができます。
もちろん飲んだあとには、うがいor歯磨きor緑茶・ミネラルウォーターを飲むことを忘れずに。
3.まとめ
暑くなるこれからの季節。
スポーツドリンクとのつきあい方を考えながら、ぜひ体の健康だけではなく歯の健康も大切にしていってくださいね。